中国資本による新しいコンテナ・ターミナルの本格稼動で、既存のターミナルに影響が出ています。コロンボ港を舞台にした公営・民営・中国系の三つ巴の争いは、一方でコロンボ港全体のコンテナ取扱量を増加させ、「インド洋のハブ」化に向けたスリランカの戦略を後押しする側面もありそうです。

最大級の巨大コンテナ船も入れる「深度」が武器

中国資本が運営する「コロンボ国際コンテナ・ターミナル(CICT)」が成功している主な要因は、このターミナルが新設されたコロンボ南港の中にあることだろう。コロンボ南港の水深は18メートルあり、2006年以降から普及し始めた巨大コンテナ船を受け入れることができる。

 

一方で「ジャヤ・コンテナ・ターミナル(JCT)」と「東南アジア・ゲートウェイ・ターミナル(SAGT)」がある以前からのコロンボ港の水深は15メートルだ。この深さでは巨大コンテナ船を受け入れることができない。2015年にCICTが取り扱った160万TEUのうち、67%は巨大コンテナ船によって運ばれてきたものである。そして残りの33%はJCTとSAGTからCICTにターミナル変更をした分だった。

スリランカ公営のJCT、あるいはスリランカ資本のSAGTが利用可能な船体は最長300メートルで、コンテナの最大積載数は8,000個だ。一方、CICTに入ってくる船体は長さ400メートルにも及ぶことがあり、コンテナの最大積載数も16,000個以上だ。コンテナ船の最大積載量という観点におけるCICTの優位性は、SAGTに大きなインパクトを与え、SAGTの2015年の取引量が17%も落ちた。JCTも11%減ったが、SAGTとは異なりJCTはもともとキャパシティを下回る取り扱い量であったため、相対的な影響はSAGTよりも少なかった。

 

年間の取扱量では最大であるJCTが抱える問題は、効率の悪さである。JCTは岸壁に20のクレーンを設けている。これはSAGTの11台、CICTの12台の約2倍だ。しかしJCTのクレーンはもっと古く、1台が1時間に移動できるコンテナは23個しかない。一方で、SAGTのクレーンは1時間に34個、CICTのクレーンは1時間に約30個移動できる。また、民営のSAGTとCICTの従業員はそれぞれ500人程度なのに対し、公営のJCTはその約4倍もの従業員を雇っており、人員過剰である。

全体でみれば、コロンボ港の発展に寄与

JCTやSAGTなどのライバルにとってみれば、CICTは厳しい競合相手ではあるが、コロンボの港湾全体にとってはありがたい存在だ。CICTが本格稼動し、その分、取引量が増加したことに助けられて、コロンボ港全体の取扱量は2015年に6%も伸びた。この数字は、他のライバル港と比較すれば目覚ましい結果だと言える。ドバイの増加率は2.4%、香港はマイナス9.5%、シンガポールもマイナス8.7%だった。インドでも主要な12の港で取扱量が増えたが、増加率は2%以下に留まっている。もしCICTが取り扱ったコンテナ分を差し引くと、2015年のコロンボ港の増加率は6%のプラスではなく、14%のマイナスに陥るところだった。

 

コロンボ港のコンテナ量のおよそ70%が、主にインドからの積み替え分だ。海運業界によれば、バングラデシュ、ミャンマー、そして東アフリカからの積み替え分も伸びているそうだ。通常、東アフリカからのコンテナは、フィーダー(大型船から小型船に積み替え、別便で運ぶ支線)船に載せられ、シンガポールまでの航路の途中でスリランカを経由し、シンガポールからヨーロッパへの積替輸送の航路で再びスリランカを経由する。

 

最終回は、JCTおよびSLPAを管理するスリランカ政府が直面する課題をご紹介します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年3月に掲載した記事「COLOMBO’S NEW DEEP- WATER CONTAINER TERMINAL WORSENS PRODUCTIVITY AT GOVERNMENT-OWNED JCT」を、翻訳・編集したものです。

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