これからの医師に必要なこととは
――先生は不動産投資をされていますが、それはどのような理由からですか?
アルバイトの収入分に大きな税金がかかることもあり、家計の収支が圧迫されていて、ずっと悩んでいました。資産形成を始めるきっかけになったのは、先ほどの勤務医がバイトをしなければいけない構造になっていることを知ったとき、純粋に腹が立ったからです。それまでは家族を養うために、しょうがないという気持ちでがむしゃらに働いていましたが、もっとうまくできないかと思ったんです。そこでインターネットでいろいろと調べているうちに、植田さんが書かれた『会話でわかる! 忙しい医師のための不動産投資』という本に出会いました。これが良かった。そこから実際にお会いし、信頼できる人だと感じたので、お金関係をすべて一任させてもらったんです。
――投資を始めて、何が一番変わりましたか?
お金に関する余計な心配がなくなり、安心して本業に専念できる環境が整ったことが大きいです。不動産投資をしようかと思っていたときには、他の私立病院から膨大な報酬で院長をやらないかという誘いもあって、一瞬、心が揺らいだりもしたのですが、いまでは本当にやりたい大学病院の仕事に集中できています。もし、私一人で、不動産をやろうと思っていたら、さらに悩み事が増えていたのかもしれません。植田さんのおかげで医師としての初心に戻らせてもらった感じです。
――資産形成に関して、若いドクターや研修医の皆さんにアドバイスはありますか?
無駄遣いをせずに、先々のことを考えて行動するのがいいのではないかと思います。私自身は不動産投資を選択しましたけれど、それは皆さんがご自身で判断したらいい。ただ、頑張って患者さんを見ていれば、いい暮らしができるというある種の理想のようなものは、いま崩れかけています。ですので、とりあえず、いろいろな話は聞いたほうがいいのではないでしょうか。
――仕事面ではどうでしょうか。
医師は千差万別で一概には括れませんが、私自身は悩んだら苦しいほうを選択してきた、ということはいえるかもしれません。また、2025年に向けた地域医療構想により「医師」と「病床」の再配置が検討されています。つまり、それは別々の病院に勤めていた医師が一つの施設に集まる可能性があるわけですよね。同じ専門科の医師でも、働く施設が違えば、考え方や経験がまるで違います。再配置された新しい施設では、より標準化された高度な医療が求められると私は思っています。
働き方改革を4年後に、地域医療構想を5年後に控え、医師は個人事業主のような働き方に近づいていくはずです。今後、医師には医療のプロとしてスキルはもちろん、ある種の経営感覚が問われます。そのときに、専門以外のことは任せられるというパートナーを見つけることが大事なのではないでしょうか。
(インタビュアー クロスメディア編集部)