近年では相続税の課税はますます重く、また、これまで許容されていた対策にも規制がかかるなど、非常に厳しいものとなっています。大切な資産を減らすことなく無事に相続を乗り切るには、どのような手段があるのでしょうか。「相続実務士」のもとに寄せられた相談実例をもとにプロフェッショナルが解説します。※本記事は株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。
「あなたも、あなたも、あなたも!?」相続人が大量発生
●ポイント1 戸籍謄本調査で相続人を確定
Kさんにお聞きすると、相続人の兄弟姉妹はそれぞれ自宅があり、亡くなった姉のマンションに住むことを希望する人もいないため、処分して現金で分けることが現実的だと判断できました。
マンションは姉名義のままですから、まずは相続登記をしなくてはなりません。
そこで、土地や建物の評価証明と登記簿謄本を取得すると、父親の名義が2分の1登記されていることが判明しました。どうやら最初から2人の名義で購入したようですが、姉といちばん親しくしていたKさんも初耳で、大変驚いていました。
しかし、そうなると多少事情が変わります。2分の1については、父親の相続登記をしなくてはなりません。
父親が亡くなったのは10年以上前ですが、そのときはなにも手続きをしていないとのこと。相続税の基礎控除範囲内の財産だったということでしょう。
さらに事態を複雑にしていたのは、Kさんの父親が再婚だったことです。先妻との間に子どもが4人、さらに先妻の子どもの妻を1人養子にしていることもわかり、相続人は16人となったのでした。
●相続関係者
被相続人:姉(独身、飲食店経営)
相続人 :16人(兄弟姉妹3人、先妻の子4人、養子1人、代襲相続人8人)
●ポイント2 マンションの売却価格を調査
マンションの売却価格の目安がつかないと財産分与金の目安もつかないので、筆者はすぐ調査に入りました。
最寄りの駅から徒歩2分程度と近いのですが、年数は築20年以上、東向きのベランダには隣の擁壁が立ちはだかっているため、日当たりも望めません。また、購入当初から手を加えていないため、リフォーム代が数百万円はかかると思われました。
そこで、持ち出しを押さえるためにリフォームせずに現況で購入してくれる不動産会社を探したところ、幸いなことにほどなく買い手が見つかりました。
●ポイント3 相続人代表は1人に
相続人が16人ですから、姉の財産であるマンションを共有登記すると売却の手続きが大変です。そこで、Kさんが代表でマンションを相続し、ほかの相続人には代償金を払うようアドバイスしました。新盆の法要に集まる機会があるということで、その際にKさんから説明をしてもらうようお願いしました。手続きに関する書類はこちらで準備し、全員に送付しましたが、ほとんどの相続人は協力的で、押印して返送してくれました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続実務士発!みんなが悩んでいる「相続問題」の実例