正確な状況把握もやはり大事な理由
とはいえ、先の言葉と矛盾するようですが、正確な状況把握もとても大切です。
「エボラ出血熱が医療者の間ですごく増えている」
という情報は、状況を正確に伝えていません。「すごく」というのはどのくらい「すごい」のか。「増えている」とは本当に増えているのか。本当に増えているとすれば、「どのくらい」増えているのか。
「エボラは、医療者1000人中、○人に感染した」
という数値化された情報であれば、情報の妥当性が増します。
「すごい」とか「増えた」と判断するのは各人各様です。その判断は、ある程度は相手に委ねないといけないこともあるのです。
「増える」「減る」は経験の少ない研修医がよく陥る間違いです。
「患者さんの体温が38℃まで上がりました」
「患者さんの体温が37.7℃まで下がりました」
と逐一報告したりします。
患者は人間ですから、ずっとまったく同じ体温というわけにはいきません。通常、朝には体温が下がり、夕刻には体温が上がり気味になります。38℃から37.7℃までの微細な体温の変化は、プロであれば「熱が下がった」とは解釈しません。数時間後には39℃台まで再び体温が上がることもしばしばです。そのたびに一喜一憂しても詮無いことです。
もっと長いスパンで、微増微減する体温は放っておいて、「大きな視点」から体温を評価することが大事です。株や円相場の上げ下げの評価と同じですね。素人ほど、細かな違いに一喜一憂するものです。
「増えた」は本当に増えているのか。誤差範囲内ではないのか。きちんとクールにプロフェッショナルに評価することが大事です。ニュースの内閣支持率などは、しばしば統計学的な分析とは全然関係ない形で、「上がった、下がった」と報道されています。