なぜワイドショーの「感染者情報」に踊らされてしまうのか?

新型コロナウイルス感染拡大で日本は緊急事態宣言が出され、外出自粛のパニック状態になった。新型コロナの集団感染が起こったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船し、動画を配信したことで話題となった神戸大学医学部附属病院感染症内科・岩田健太郎教授の著書『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)の一部を抜粋し、リスク・コミュニケーションの観点からパニックによる被害拡大を防ぐための方法を明らかにする。

些末な情報にとらわれてはいけない

2009年の「新型インフルエンザ」が流行したとき、メディアは「今日は患者が何人出た」という詳細な患者数を大々的にくり返し報道していました。しかし、患者数が523名であろうが525名であろうが、状況自体に大きな違いが生じるわけではありません。523と525で対策や治療法が変わるわけでもありません。というか、そもそも受診していない患者や誤診されている患者のことを考えると、端数の3とか5にはほとんど意味がありません。報告数と感染症の実数はずれているものです。

 

「おい、見張りよ。敵は何人いる?」

「10万25人です」

「えらく速く数えたな」

「ええ、25まで数えたんですが、あとはだいたい10万くらいでした」

 

というジョークがあります。些末な数字は問題の本質とは離れており、そこにこだわっていてもしようがないことを逆説的に教えてくれています。

 

同じ数字でも、人によって評価は違う。
同じ数字でも、人によって評価は違う。

 

ところが、リスク下においては、しばしばこういう些末でどうでもいい情報を流すのに一所懸命になってしまいます。一所懸命なのは分かるのですが、些末なことばかりに気をとられていると、もっと大事な問題の本質、例えば、

 

「なぜ今回の流行は起きているのか」

「どうして、それが制圧されていないのか」

「どうやったら、この流行を食い止めることができるのか」

 

といった、より本質的な議論がなおざりになってしまいます。まるで赤レンガの数をひとつひとつ数えていて、東京駅の入り口がいつまでたっても見つからない旅行者のようなものです。

 

些末な部分は敢えて捨象し、本質的な「より大きな話」をするのが大事なことも多いのです。

神戸大学病院感染症内科 教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター医療リスクマネジメント分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学病院感染症内科診療科長。著書に『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)、『感染症は実在しない』(インターナショナル新書)、『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』(光文社新書)など多数。

著者紹介

連載新型コロナウイルスを正しく恐れる「リスク・コミュニケーション」入門

「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門

「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門

岩田 健太郎

光文社新書

新型コロナウイルスの感染拡大によって、緊急事態宣言が発令された。政府、自治体は不要不急の外出自粛の要請、学校の休校、さまざまな商業施設への休業要請も行われ、日本人はパニック状態になった。 エボラ出血熱、新型イ…

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