些末な情報にとらわれてはいけない
2009年の「新型インフルエンザ」が流行したとき、メディアは「今日は患者が何人出た」という詳細な患者数を大々的にくり返し報道していました。しかし、患者数が523名であろうが525名であろうが、状況自体に大きな違いが生じるわけではありません。523と525で対策や治療法が変わるわけでもありません。というか、そもそも受診していない患者や誤診されている患者のことを考えると、端数の3とか5にはほとんど意味がありません。報告数と感染症の実数はずれているものです。
「おい、見張りよ。敵は何人いる?」
「10万25人です」
「えらく速く数えたな」
「ええ、25まで数えたんですが、あとはだいたい10万くらいでした」
というジョークがあります。些末な数字は問題の本質とは離れており、そこにこだわっていてもしようがないことを逆説的に教えてくれています。
ところが、リスク下においては、しばしばこういう些末でどうでもいい情報を流すのに一所懸命になってしまいます。一所懸命なのは分かるのですが、些末なことばかりに気をとられていると、もっと大事な問題の本質、例えば、
「なぜ今回の流行は起きているのか」
「どうして、それが制圧されていないのか」
「どうやったら、この流行を食い止めることができるのか」
といった、より本質的な議論がなおざりになってしまいます。まるで赤レンガの数をひとつひとつ数えていて、東京駅の入り口がいつまでたっても見つからない旅行者のようなものです。
些末な部分は敢えて捨象し、本質的な「より大きな話」をするのが大事なことも多いのです。