5月雇用統計の見方

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米国の失業率は、経済活動再開に伴い一時帰休者が復職することで、6月5日に発表される5月の統計をピークに急速な低下局面になる可能性がある。ただし、新型コロナウイルス禍で社会や企業経営が大きく変化し、適応できない人材の失業は長期化するのではないか。経済はL字に近いU字回復とすれば、足下の株価上昇局面には半身に構えて乗る必要があるだろう。

5月失業率:20%超えだがピークの可能性も

6月5日に発表される5月の米国雇用統計は、調査期間が5月10〜16日の週だった。4月の調査終了後、この週までに失業保険の新規申請件数は1,218万件に達する(図表1)。失業率に換算すると約7.5%であり、4月の失業率が14.7%なので、単純に足し合わせれば5月は22%程度になる計算だ。正に大恐慌期に迫る厳しい状況である。


 

期間:2019年~2020年5月29日 出所:米国労働省の統計よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]米国・失業保険の状況 期間:2019年~2020年5月29日
出所:米国労働省の統計よりピクテ投信投資顧問が作成

 

もっとも、4月の雇用統計では、失業者2,306万人のうち、78.3%に相当する1,806万人が一時帰休だった。つまり、経済活動が再開されるに連れ、仕事に復帰する人が相当程度いるだろう。

 

また、失業保険の継続受給件数も、5月第1週の2,491万人が直近のピークであり、5月第3週は2,149万人になっている。新規申請件数も頭打ち傾向であり、失業率は5月がピークで、6月以降は急速な低下に向かう可能性があるだろう。

2020年度:大幅なマイナスの下駄を履く可能性

1929年10月24日に始まったと言われる大恐慌では、失業率は1933年5月の25.6%が天井だった(図表2)。その後は下降局面となり、1937年7月に11.0%まで低下している。ただし、そこから再び上昇に転じ、1938年6月に20.0%になった。米国の雇用を本格的に好転させたのは、フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策ではなく、1939年8月26日、ドイツ軍がポーランドに侵攻して火蓋が切られた第2次世界大戦だったと言えるだろう。

 

  期間:1929~1955年  出所:米国労働省の統計等よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表2]米国・大恐慌下の失業率と株価期間:1929~1955年
出所:米国労働省の統計等よりピクテ投信投資顧問が作成

 

現代に話を戻すと、足下の株価は、金融政策による大量の流動性供給に支えられつつ、雇用情勢の改善など景気回復への期待を織り込んで上昇していると考えられる。それがデータで確認できるのはこれからであり、当面はこの期待に基づく堅調な相場が続きそうだ。

 

ただし、新型コロナウイルス禍は、米国の社会システムや企業経営にも大きな変革を迫るだろう。産業の新陳代謝が進むことで、環境の変化に適応できない企業の破綻は続く可能性が強い。そうしたなか、人によっては失業期間が長期化することも考えられる。雇用情勢が「事実上の完全雇用」と言われた2019年のレベルに戻るには、相当の時間が必要なのではないか。

 

米国の場合、雇用状況の停滞は消費の伸び悩みを通じて経済成長を抑制する要因と言える。また、新型コロナウイルスは、感染拡大第2波のリスクも消えていない。景気底打ちからしばらくは力強い回復に見えても、結局はL字に近いU字回復になる可能性が強いだろう。株式市場については、半身に構えつつこの上昇相場に乗る必要があるのではないか。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『5月雇用統計の見方』を参照)。

 

(2020年6月5日)

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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