2020年4月分鉱工業生産指数・速報値について

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

新型コロナウイルス感染拡大で鉱工業生産・前月比▲9.1%と大幅低下に

 

4~6月期鉱工業生産指数・前期比は2ケタ・マイナスの可能性大

 

4月分景気動向指数:先行CI・一致CIとも前月差下降に、基調判断は「悪化」継続を予測

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・4月分速報値・前月比は▲9.1%と3ヵ月連続の低下になった。15年を100とした季節調整値の水準は87.1と、これに次ぐ13年1月分(94.8)と比べても非常に低い指数水準である。新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要の減少、部品供給の遅れ、感染拡大防止のための工場の稼働の低下、操業停止などが生じ幅広い業種で生産が低下した。

 

●4月分鉱工業生産指数では、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、輸送機械工業(除.自動車工業)等14業種が前月比低下した。上昇業種は生産用機械工業の1業種のみだった。

 

●経済産業省は基調判断を19年10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正し、11月分・12月分でも判断を据え置いていたが、20年1月分では「総じてみれば、生産は一進一退ながら弱含んでいる」と上方修正した。2月分も判断は据え置きだった。しかし、前回の3月分で「総じてみれば、生産は低下している」と下方修正した。さらに今回4月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」と下方修正した。

 

●先月発表された4月分製造工業予測指数・前月比は前月比+1.4%の上昇の見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、4月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲1.3%の低下になる見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲2.3%~▲0.4%になっていた。鉱工業生産指数の前月比▲9.1%は下限を大幅に下回る伸び率である。

 

●4月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲8.8%と2ヵ月連続の低下となった。低下率は2015年基準で最低水準である。前年同月比は▲15.9%で7ヵ月連続の減少となった。なお、低下となるものが多かった中で、ノート型パソコンの前月比が+67.5%と高い伸び率になった。テレワークを実施する企業の増加が感じられる数字である。

 

●4月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲0.3%と2ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は+2.7%と18ヵ月連続の上昇となった。出荷の前月比マイナスより、感染拡大防止のための工場の稼働の低下、操業停止などで結果として生産調整が行われたことになり生産のマイナスが大きかったので、在庫の前月比がマイナスになった。

 

●4月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+12.7%で2ヵ月連続の上昇となった。指数水準は137.4で2015年基準で最高水準である。在庫の増加ではなく、出荷の大幅減少によるところが大きいので、出荷が持ち直す局面になれば、在庫率の低下が期待される。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、おおむね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年10~12月期は出荷の前年同期比が▲6.5%、在庫が同+1.2%と「在庫調整局面」であった。20年4月は出荷の前年同月比が▲15.9%、在庫が同+2.7%と、出荷の前年同期比が▲5.2%、在庫が同+2.9%だった20年1~3月期に続いて「在庫調整局面」の状態にある。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると5月分は前月比▲4.1%の低下、6月分は前月比+3.9%の上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、5月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲5.7%の低下になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲6.6%~▲4.7%になっている。いずれにしても、6月分の生産指数の水準が4月分を上回る可能性は小さそうだ。

 

●ただ製造工業予測指数の数字に関しては経済産業省もHPで、「5月上旬に実施した調査結果の集計であるため、感染症をめぐる緊急事態宣言の解除等、5月上旬以降の新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢変化は十分には織り込まれていると考えにくく、不確実性も多分にありますが」と述べているように、5月分の数字に関しては幅広くみておく必要があろう。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、4月分を先行き試算値最頻値前月比(▲5.7%)、6月分を製造工業予測指数前月比(+3.9%)で延長すると、4~6月期の前期比は▲13.8%の低下になる。また、4月分・5月分を製造工業予測指数前月比(▲4.1%、+3.9%)で延長すると、4~6月期の前期比は▲12.8%の低下になる。4~6月期の鉱工業生産指数は新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻になった時期だけに、1~3月期の前期比上昇から一転して前期比2ケタという大幅低下になる可能性が大きいだろう。

 

(4~6月期のGDP予測)

 

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4月分の対1~3月平均比は▲36.3%の大幅減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲1.3%の減少だ。また、商業販売額指数・小売業の4月分の対1~3月平均比は▲12.2%の減少になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の1~3月期から4~6月期へのゲタは▲2.6%の減少になった。乗用車販売台数の4月分の対1~3月平均比は▲19.8%の減少になった。GDP統計の実質個人消費(家計最終消費支出)と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)1~3月期から4~6月期へのゲタは▲2.7%と大幅マイナスである。総合的に考えると、4~6月期第1次速報値の個人消費は、前期比でかなり大幅マイナスの減少率になる可能性が大きいとみられる。

 

●設備投資の関連データである資本財出荷指数の4月分の対1~3月平均比は▲8.5%の減少になった。資本財(除.輸送機械)は同▲4.1%の減少になった。また、建設財は同▲3.9%の減少になった。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される4~6月期の実質設備投資は前期比減少になる可能性が大きいとみられる。

 

●実質輸出入の動向をみると輸出の4月分の対1~3月平均比は▲15.6%の大幅減少になった。控除項目の輸入は同+9.6%の増加になっている。4月分のモノだけでみると外需は大幅なマイナス寄与になる。4~6月期の外需の前期比寄与度は大幅マイナスになる可能性が現時点では大きいと判断する。

 

●現段階で4月分のデータをもとに総合的に判断すると、8月17日に発表される4~6月期の実質GDP第1次速報値は現行統計史上最大のマイナス成長になる可能性が大きそうだ。ちなみに5月のESP フォーキャスト調査では4~6月期の実質GDP前期比年率▲21.3%という大幅マイナスというのが予測平均値だが、4月の生産統計の結果などはその予測を裏付けるものといえそうだ。

 

(4月分景気動向指数:先行CI・一致CIとも前月差大幅下降に、一致CIによる基調判断は「悪化」継続か)

 

●4月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲6.0程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、マネーストックと東証株価指数、2系列の前月差はプラス寄与である。最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●4月分の一致CIは前月差▲4.5程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列では、投資財出荷指数、1系列の前月差はプラス寄与である。生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分・10月分・11月分・12月分・1月分・2月分・3月分に続き、4月分も「悪化」継続になると予測する。

 

●4月分の先行DIは22.2%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、新設住宅着工床面積、マネーストックの2系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列がマイナス符号になると予測した。

 

●4月分の一致DIは0.0%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年4月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

(2020年5月29日)

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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