父の遺産相続。兄は平等な分割を目指したが…
葬儀は社葬として行われ、多くの参列者が故人との別れを偲びました。そして葬儀からしばらく経ったころ、相続の話し合いの場で事件は起こりました。
話し合いの席に着いたのは、母、Aさん、Bさんの3人。株式など、兄に対しての計画的な贈与は行われていたため、遺産分割の対象となったのは、父が住んでいた一軒家とマンションが3部屋でした。
Aさん「母さんとは先に話しておいたんだが、母さんはもう90歳だし、いまから自宅やらマンションやらもらっても仕方がないので、兄弟2人で分けたほうがいいと思うんだ」
Bさん「(カチン)」
Aさん「母さんの面倒は今まで通り俺がみていく。だから自宅とマンション2つは俺がもらって、残るひとつをBに、という分け方はどうだろう」
Bさん「(カチン)」
Aさん「んっ、どうした?」
Bさん「兄さん、それでは納得できない。すごい不公平だと思う」
Aさん「どうしてだい?」
Bさん「結局、母さんは相続放棄して、兄弟2人で分けるということだろう。自宅はいくらするんだ。結構な広さだし、あそこは街の一等地だ。マンション3つ足して、足りないくらいだろ」
Aさん「でも母さんの面倒は俺が見るんだし」
Bさん「それに、先に母さんと話しておいたって、なんなんだよ。いつも兄さんは、世の中は自分を中心に回っていると思っている。自分の決めたことを反対されるとは思っていない」
Aさん「そんなことはないさ……」
Bさん「父さんの財産だって、結構、贈与としてもらっているんだろう。俺なんてゼロだ。確かに兄さんは会社の後継者だ。それでも、何なんだ、この差は!」
Aさん「仕方がないだろ、俺は会社の跡取りとして育てられてきたんだ。Bとはひと回りも違う。差があって当たり前だろ」
Bさん「差が大きすぎると言っているんだよ」
母「まあ、まあ、2人とも落ち着いて」
積年の想いが噴出し、2人の話は平行線のまま。後日改めて相続の話し合いの場がもたれ、生前贈与を受けていることも考慮して、自宅はAさんが、3つのマンションはBさんが相続することになりました。