木造の建物が密集する下町…災害で壊滅的被害を想定
「京成立石」は、東京都葛飾区にある京成電鉄押上線の駅です。一日の乗車数は、4万人弱。押上線は「押上」駅で都営地下鉄浅草線に乗り入れ、羽田空港や横浜方面にダイレクトにアクセスできます。“京成”とつくのだから、近隣に「立石」駅があるかといえば、なかなか見つけることはできません。調べてみると、大分県杵築市日豊本線に「立石」駅があります。無人駅ですが、「京成立石」駅よりも開業年は早いようです。ただし、この駅に配慮し、“京成”を付けたかは不明です。
立石という地名は、室町時代の古文書『下総国葛西御厨注文』に載っているほど由緒のあるもので、立石8丁目にある「立石」という奇石(珍しい形・色をした石のこと)からつけられました。この石、「立石様」と呼ばれてきたもので、古墳時代に千葉県房総半島南部の鋸山付近から古墳の石室を造るための石材として運ばれてきました。奈良時代以降になると、墨田から小岩に抜ける、古代東海道の道標として転用されたといいます。
江戸時代、地面から60センチ以上も露出したこの石は、『江戸名所図会』『新編武蔵風土記稿』にも奇石として紹介されています。地元の人々の信仰の対象となり、村の名主・島田新右衛門らがこの地にほこらをたて、立石稲荷神社としてまつられました。現在は地面から数センチほどしか露出しておらず、どれが立石様なのか、判別するのも難しいような状態です。
「京成立石」駅周辺を見ていきましょう。駅周辺は、「立石西町商栄会」「区役所通り商店会」「立石中央通り商店会」「協同組合立石仲見世共盛会」「立石駅通り商店会」の5つの商店会のほか、駅南口から200mほどいった先の奥戸街道には「立石大通り商店会」と、都内でも活気あふれる商店街が集中するエリアです。
下町らしく建物が密集する街並みは、戦後、闇市から発展したもの。そして昨今、立石の名を一躍知らしめたのが「せんべろ」です。1000円あればベロベロに酔えるという言葉通り、驚きの安さの飲食店がひしめきあっています。
なかでも、象徴的存在が「立石仲見世商店街」。「仲見世」という名の通り、ルーツは浅草。戦争で被災した浅草の飲食店が露店を始めたことから商店街へと発展していきました。雑多なアーケード街には、居酒屋などが立ち並び、昼間から行列ができる有名店も。北口の「呑んべ横丁」もなかなかディープなスポットです。10軒ほどの居酒屋やスナックなどの飲食店が、足を踏み入れるのも躊躇するほど古い建物で営業しています。
そんな昭和過ぎる街並みに、多くのファンがいる立石ですが、防災力はかなり低めです。木造建築が密集し、地震の際の建物の倒壊危険度や火災危険度は、都内でも上位にランクイン。もしものとき、壊滅的な被害を受けるのは明白です。
そんな立石の街では再開発が進行中です。まず街を南北に分断している押上線では、連続立体交差事業が、2022年の完成を目途に竣工しています。北口、南口、それぞれにはタワーマンションを中心とした複合施設ができる予定です。すでに動き出している再開発に、シャッターを閉める店も増えています。再開発後、立石らしい昭和感がどれほど残るか、わからない状況のようです。
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