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新型コロナウイルスの感染拡大または原油価格の急落を背景に新興国の信用力が悪化しました(図表1参照)。しかし各国、特に米国の市場機能回復に向けた政策対応や、国際通貨基金(IMF)などの支援期待から足元、落ち着きは見られますが、今後の展開には懸念材料も残されています。
新興国格付け:将来の格下げを検討とするネガティブウォッチを付与される国も
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは2020年5月14日、パキスタンの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)にネガティブウォッチ(格下げ方向で検討)を付与する一方、格付けはB3(B-に相当)で据え置きました。
また、ムーディーズは5月7日にエチオピアの発行体格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)にネガティブウォッチ(格下げ方向で検討))を付与しました。格付けはB2(Bに相当)に据え置いています。
どこに注目すべきか:ネガティブウォッチ、IMF、G20、債務不履行
新型コロナウイルスの感染拡大または原油価格の急落を背景に新興国の信用力が悪化しました(図表1参照)。しかし各国、特に米国の市場機能回復に向けた政策対応や、国際通貨基金(IMF)などの支援期待から足元、落ち着きは見られますが、今後の展開には懸念材料も残されています。
パキスタンやエチオピアの格付け動向が注目されることはまずないでしょう。図表1の代表的な新興国債券指数でもパキスタンの時価総額は0.45%、エチオピアはわずか0.09%で直接的な影響はないに等しいです(20年4月)。
ただ、ネガティブウォッチの背景には今後の新興国支援の動向を見る上での注目点も含まれていると見ています。まず新興国の信用力が底打ちした政策を簡単に振り返ります。ドル建て新興国債券を下支えた最大の要因は主に3月23日の米連邦準備制度理事会(FRB)の大胆な金融支援策でベース金利の米国債利回りが安定したことや、新興国も含めたスワップによる流動性供給です。
もうひとつの支援はIMFや世界銀行など国際機関による支援策が合意されたことです。例えば、国際通貨金融委員会(IMFC)は日米欧や新興国を含む20ヵ国・地域(G20)らの合意のもと、様々な新興国支援策を承認しました。IMFは2008年頃の世界金融危機当時の4倍となる1兆ドルと融資能力を拡大してきましたが、具体的な支援手段も整いつつあります。
ただ、問題点を2つ指摘すると、新型コロナウイルスの感染が完全に収束していない中、支援額が十分か不安もあります。
2点目は、格付け会社がネガティブウォッチを付与した理由ですが、新興国支援は公的機関だけでなく、民間の債権者の負担を条件とする動きがあります。民間が負担を負うならば債務返済の延期など選択的な債務不履行も視野に入る可能性が考えられます。先の2ヵ国以外にも同様な問題に直面する国があることも懸念されます。新興国支援には国際的な協調体制が必要です。1月ほど前の報道では、先進国は新興国支援に合意とだけ報道されています。それは事実であり前進は見られますが、総論賛成、各論反対となるリスクが全くないということではないと思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国支援の落とし穴』を参照)。
(2020年5月15日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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