中国経済統計に浮かび上がる今後の課題

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中国の一連の4月統計から、新型コロナウイルスの影響による1-3月の大幅な落ち込みからは回復が示されました。特色は生産関連主導の回復で、小売売上など個人消費は回復が鈍く、課題が浮き彫りとなりました。22日の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)開幕(予定)を前に、今回の経済指標から中国の問題点を振り返ります。

中国経済統計:鉱工業生産は市場予想を上回るも、小売売上高は軟調

中国国家統計局が2020年5月15日に発表した4月の工業生産は前年同月比+3.9%と、市場予想(+1.5%)、3月(マイナス1.1%)を上回りました。4月の小売売上高は前年比マイナス7.5%と、市場予想(マイナス6%)を下回りました(図表1参照)。また、1-4月の都市部固定資産投資は前年同期比マイナス10.3%と、市場予想(マイナス10.0%)とおおむね一致し、1-3月のマイナス16.1%からはマイナス幅が縮小しました(図表2参照)。

 

なお、5月18日に公表された中国の新築住宅価格は前月比+0.4%と前月の+0.1%を上回りました(図表2参照)。

 

月次、期間:2016年6月~2020年4月、小売売上高は前年比  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国小売売上高と失業率の推移 月次、期間:2016年6月~2020年4月、小売売上高は前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

月次、期間:2016年4月~2020年4月、前年比、住宅価格は前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国固定資産投資構成指数と新築住宅価格の推移 月次、期間:2016年4月~2020年4月、前年比、住宅価格は前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:小売売上、失業率、インフラ投資、全人代

中国の一連の4月統計から、新型コロナウイルスの影響による1-3月の大幅な落ち込みからは回復が示されました。特色は生産関連主導の回復で、小売売上など個人消費は回復が鈍く、課題が浮き彫りとなりました。22日の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)開幕(予定)を前に、今回の経済指標から中国の問題点を振り返ります。

 

まず、生産活動の回復は他の指標と照らし合わせても整合的です。たとえば生産活動の目安とされる発電量は4月が前年同月比+0.3%と、1-3月期の前年同期比マイナス6.8%から急回復しています。ただ、生産活動の回復の持続性には疑問もあります。今日のヘッドラインの5月8日号で指摘したように4月の輸出に医療品やマスクなど「特需」が含まれており、生産活動を下支えしたと見られるからです。特需、特に海外からの需要は今後軟調に推移すると思われます。

 

一方、コンピューターは前年比+26.2%、四輪車は+5.1%と3月のマイナス43.0%から回復するなど明るい面も見られます。また、鉄鋼製品やセメントは4月は前年比プラス3%台でした。当局が意図するインフラ投資が寄与した模様です。

 

そこで、次に固定資産投資を内容別に見ると、4月はインフラ投資はマイナス幅が大幅に縮小しました(図表2参照)。当局は地方政府特別債の割当拡大などインフラ投資の資金調達を促しており、意向に沿う動きともいえます。ただ、金融緩和などを受け、4月は新築住宅価格が市場予想を上回るなど、不動産市場も上昇傾向です。確認は必要ですが、当局は不動産市場の過熱は望んでいないと思われます。

 

持続的な回復を考える上で、最も気になるのは軟調な個人消費です。単に市場予想を下回ったことよりも、失業率の上昇を伴っている点が気がかりです。先日、中国の国営テレビ局(CCTV)は習近平国家主席が議長を務めた中国共産党中央政治局の会議を引用して「雇用優先」政策を強化し、雇用確保を支援すると伝えています。中国では、雇用を確保しやすい投資主導から、サービス化主導の経済へ進行中です。インフラ投資などでカバーしきれない雇用の確保には、全就業者の半数近いサービス産業への対応が求められます。この点における中国当局の政策に注目しています。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国経済統計に浮かび上がる今後の課題』を参照)。

 

(2020年5月18日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

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