コロナ禍『クリスチャン・ディオール』の意外な対応…ESG

世界的に収束の動きを見せている新型コロナ感染拡大。電気メーカーのシャープがマスクの製造販売を発表するなど、大企業の迅速なコロナ対応が話題になりました。他国ではどのような取り組みが行われていたのでしょうか? 今回は、『クリスチャン・ディオール』『アディダス』の事例を紹介します。 ※本連載では、企業が「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」に配慮し、長期的な経営を目指す取り組み「ESG経営」について、キャピタル アセットマネジメントがわかりやすく解説します。

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コロナで明らかになった大企業の「環境課題」への対応

◆ESGへの取り組みが企業の持続的成長を促す

 

本記事では、新型コロナウイルスの感染拡大に対する企業の対応を紹介しながら、ESG課題への持続的な取り組みが企業価値の向上につながることを、解説していきます。

 

世界が刻々と変化するなか、企業も多様な社会的課題に直面しています。社会的課題が企業の中長期的な業績に悪影響を及ぼす可能性があるならば、早い段階からの対応は、企業の持続的成長を促すことにつながるでしょう。ESGへの取り組みを他社に先駆けて行っている企業は、高い経営能力と競争力を持ち、将来的に成長が見込める企業であると考えられます。

 

【顧客の価値観の変化に応えて~収益を伸ばす】

 

コトラーのマーケティング理論では、消費者の商品選択のステージは「価格」からはじまり、次に「品質」重視へ、さらに「安心・安全」を求め、最後に「購入による社会的課題の解決への貢献」という流れで尺度が変化すると考えられています。

 

もし消費者の大部分が最後のステージに至ったとすれば、企業はこの新しい顧客セグメントに向けて、環境にやさしいプロダクトを商品に追加しようとするでしょう。実際、自動車業界においては、電気自動車やハイブリッド車がラインナップに並んでいますね。

 

もちろん、我々人類にとって喫緊の環境課題は「新型コロナウイルス感染拡大の阻止」であり、企業は消費者の急な価値観の変化にも対応が求められます。

 

高級ブランドを経営するLVMH社は、このような消費者の急激な変化をいち早く察知しました。つまり、化粧品の需要が今後急減に低迷すること、そして手指消毒液やマスクといった衛生管理で役立つ商品の供給が急務であることに気づいたのです。

 

LVMH社は手指消毒用水性アルコールジェルを生産する原材料を豊富に持っているため、クリスチャン・ディオールなどの高級化粧品の製造ラインを改良し、フランスの社会が求める 手指消毒用水性アルコールジェルの製造ラインを生み出しました。そして製造された水性アルコールジェルはフランス政府や病院に提供されました。

 

LVMH社は新たな製造ラインを生み出した。
LVMH社は新たな製造ラインを生み出した。

従業員60,000人を抱えるアディダス社のコロナ対応

【従業員の働き方をサポート~効率性を維持】

 

新型コロナ対策としてリモートワークがずいぶんと板についた今、労働時間について、より効率的な働き方を選ぶ社員が増えています。価値観を変容させる社員が増加していけば、企業はそれに対応した取り組みが求められるようになります。

 

MIT(マサチューセッツ工科大学)の2020年4月の調査によると、米国で在宅勤務を行う労働者の割合は50%近くに達しました。ツイッター社がコロナ明け後も在宅勤務を認めると発表するなど、米国企業の作業形態が大きく変わりつつあるのです。

 

労働観の変化を無視して、従来のように昔ながらの職場環境・仕組みを漫然と維持することはリスクです。企業は時代に合わせた職場変革に取り組むことが求められています。

 

【投資家の判断基準に注意~安定株主を確保】


銀行のなかにも、地球温暖化問題や環境課題に積極的に取り組む動きが見受けられるようになりました。

 

たとえば2020年3月現在、みずほ銀行、UBS、ドイツ銀行、JPモルガン・チェース銀行等大手24銀行が、地球温暖化問題への取り組みとして、今後建設が予定される1,600もの石炭火力発電所への新規融資及びプロジェクト・ファイナンスを行わないことを宣言しました。

 

新型コロナウイルスの蔓延に際し、ドイツの銀行が企業に対して取り組みを求めた事例もあります。

 

2019年12月末、従業員60,000人を雇用する大手スポーツ用品メーカーのアディダス社は、流動性リスクに備えるためのキャッシュが必要でした。同社は、ドイツ復興金融公庫を中心とする銀行団から30億ユーロのシンジケート・ローンを受けるため、配当支払い停止の条件を了承しました。その後、アディダス社は自社株買いも停止しました。

 

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国内外の長期投資家の一部は、新型コロナウイルス問題を受け、今後リストラに追い込まれるようになった結果、企業が能力のある従業員を失って競争力が低下することを恐れ、配当支払いや自社株取得を延期するように、企業向けの要望書を公表しています。

 

エンゲージメント活動を重視する機関投資家は、非財務的な観点から、企業の健全性、成長性を議論します。その過程を通じて有効な対話が継続されれば、企業にとってよき理解者であり、安定的な投資家が生まれていくことでしょう。

 

[図表1]企業から見たステークホルダー

 

株主をはじめとするステークホルダーを重視した経営では、社会情勢への機敏な対応が求められます。しかしそれは結果として売上や利益の増加につながり、経営の効率性が向上するとともに、社会や株主からの信頼を勝ち取ることで企業を将来の長い期間にわたって成長させることになります。

イオングループ、コンビニ事業で時間的コスト97%減

企業価値を向上させるためには、「収益性」や「効率性」を向上させることが必要になります。収益性の代表的な指標はROA(総資産利益率)で、企業(自己資本+他人資本)の全体的な収益性を表す指標です。

 

ここでは資金の出所を区別せずに、企業が多数のステークホルダーから調達した資本をどれだけ効率的に運用できたのかを分析してみましょう。

 

ROAを高めるには、①収益性(売上高利益率)を高めるか、②資産回転率(効率性)を上げるか、もしくはその両方のバランスを改善することです。

 

「収益性」を高めるには、顧客の商品選択の変化を捉え、企業のリソース(資産)を新しい需要開拓に向けて配分し、商品の競争優位性を高めなければなりません。マーケット・シェア競争で負けないようにマーケティング戦略を立てるなど、消費者に支持され続けることも目指す必要があります。

 

「効率性」を上げる方法としては、生産設備の自動化が挙げられます。自動化装置を採り入れれば、生産性を維持しながら、従業員の労働時間の短縮や人手不足の解消が可能です。一時的には設備投資がかさみ固定費が増加することもありますが、中長期的にはフリンジベネフィットを含む労働コストの低下が見込まれます。

 

たとえば、2018年以前のイオングループのコンビニエンスストア事業では、約30人のスタッフが1,200店舗分の売上データの登録業務を担当してきましたが、事務統合を機に仕事量は1.8倍に増加しました。そこで同グループはRPAを導入したところ、月間2,200時間の作業を同60時間へと大幅に減らす(97%カット)ことができました。

 

*RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション) PC操作などで行っている定型的な業務をソフトウェアロボットに代行させ、データ入力を自動化します。ホワイトカラーのロボットとしても知られています。

 

同業の西友では122体のホワイトカラーロボットが稼働しており、従業員の業務のうち年間2万時間分を代替しています。業務の効率化を達成し、従業員が土日深夜の対応をすることもなくなったのです。

 

筆者が分析対象にしている日本企業は約1,000社あり、各企業のESG課題に対する取り組みを毎年1回、総合スコアで集計します。そのなかからESGへの取り組みについての評価(スコア)が高い100社と評価の低い100社が、それぞれステークホルダーから集めた資産を効率的に活用することができているのかを分析します。この2つのグループの平均ROAは[図表2]で確認できます。

 

[図表2]ESGスコア上位100銘柄対下位100銘柄のROA

 

ESGスコアが高い企業群のROAは、ESGスコアが低い企業群のROAよりも高いことがわかります。高スコア銘柄と低スコア銘柄間のROAの乖離(開き)は年によって違いますが、ビジネス環境がよくない、あるいは大きく変化するときに乖離が拡大する傾向にあります。

 

たとえば2013年、アベノミクスが始まった年はESGスコアの低い企業群のROAが低下し、ROAの乖離が広がりました。このころは、正に日本経済のGDP(国内総生産) が毎年伸びず、多くの企業が競争優位性を失っていた時期です。

 

世界景気がいい時期(2017~2019年)では、ESGスコアが上位の企業群と下位の企業群の間で、ROAの変化傾向が異なっていることを確認できます。ESGスコアが上位の企業群のROAは景気拡大とともに年々高まり、収益拡大による企業価値向上が着実に実現しているといえるでしょう。逆に好景気にも関わらず、ESGスコアが下位の企業群では、ROAの伸びは見られませんでした。

 

本業が強くなる企業に共通するポイントに「ESG課題に対する取り組み方」が関係していると考えられます。ESG課題への取り組みが持続的成長のカギとなり、企業価値の向上につながるのです。

 

キャピタル アセットマネジメント 調査部

 

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キャピタル アセットマネジメント株式運用部 部長
CFA 協会認定証券アナリスト 

1994年日興バーラ(現MSCI Barra)入社。ポートフォリオ・リスク管理アセット・アロケーションのコンサルタントとして活躍。1996年からロイター・ジャパン(現トムソン・ロイター・マーケッツ)でチーフ・フィナンシャル・エンジニアとして日本株式リスク・モデルの開発をリード。ロイター(英国)でクオンツ分析ツールのグローバル・プロダクト・マネジャー。

その後、リッパー投信評価の日本版確定拠出年金ファンドの評価・アワードを立ち上げて、機関投資家向けカスタム・インデックス業務に従事。2016年10月当社に勤務、CAM ESG日本株ファンドの運用プロセス・ポートフォリオ管理を担当。業界在籍年数25年。

著者紹介

キャピタル アセットマネジメント株式会社は2004年に発足した中堅の運用会社です。

外国株式では、ベトナム、フィリピン、アセアン市場、中近東(ドバイ、アブダビ)などの新興国市場・企業の株式に投資するファンドのほか、世界のシェールガス関連株式、世界ツーリズム株式に投資するファンドなど、ユニークで存在感あるファンドをこれまで設定・運用しております。加えて、日本株では、投信業界初の公募投信であるESG(環境・社会・ガバナンス)日本株ファンドを設定・運用しております。

弊社は資産運用商品を通じてお客様の多様な資産運用ニーズにお応えするため、独自の運用手法とグローバルな情報ネットワークを駆使し、クオリティーの高い商品の提供に努めております。同時に厳格なリスク管理を行いながら好パフォーマンスを求めることが最良の使命であると考えております。

今後とも、存在感ある付加価値の高い商品の品揃えを拡充することにより、受益者の皆様の運用ニーズにお応えして満足度を高めていただき、資産運用業界の発展に貢献出来るよう努力して参ります(写真は代表の杉本年史)。

●代表取締役社長 杉本年史 プロフィール
日興證券入社後、ニューヨーク勤務を経て債券部外国商品部門のヘッド、香港店債券部門のヘッド、現日興アセットマネジメントのファンドマネージャーを歴任。その後、明治ドレスナーアセットマネジメントでグローバル債券運用部長、プラザキャピタルマネジメント(現キャピタル アセットマネジメント)でチーフファンドマネージャー兼商品企画部長。2018年6月当社代表取締役社長に就任。

著者紹介

連載環境・社会・企業統治に着目した「ESG投資」の全貌

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

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