都市封鎖の再延期も懸念されるフィリピン経済

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フィリピンの20年1-3月期の成長率が急低下した背景は、自然災害と新型コロナウイルスの感染拡大の影響が主な要因です。ただ、フィリピンが感染抑制に向け都市封鎖を本格化させたのは3月後半ながら、成長率は市場予想を下回る結果となりました。フィリピンの20年成長率予想の下方修正の要因となる可能性も考えられます。

フィリピンGDP成長率:20年1-3月期は前年同期比マイナスを記録

フィリピン統計庁が2020年5月7日に発表した20年1-3月期GDP(国内総生産)成長率は、前年同期比でマイナス0.2%と、市場予想(+2.9%)、前期(6.7%)を下回りました。前期比ではマイナス5.1%と、市場予想(マイナス2.0%)、前期(+1.8%)を下回りました(図表1参照)。

 

フィリピンのGDP成長率は前年同期比では2008年頃のリーマンショックでもプラスを維持していました。マイナス成長になったのは、アジア通貨危機後の1998年と、およそ21年ぶりとなります。

 

 四半期、期間:2000年1-3月期~2020年1-3月期 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]フィリピンGDP成長率(前期比、前年同期比)の推移四半期、期間:2000年1-3月期~2020年1-3月期
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:自然災害、GDP構成項目、投資、成長率予想

フィリピンの20年1-3月期の成長率が急低下した背景は、自然災害と新型コロナウイルスの感染拡大の影響が主な要因です。ただ、フィリピンが感染抑制に向け都市封鎖を本格化させたのは3月後半ながら、成長率は市場予想を下回る結果となりました。フィリピンの20年成長率予想の下方修正の要因となる可能性も考えられます。

 

まず、フィリピンの自然災害について簡単に振り返ると、今年1月12日に、フィリピンのルソン島南部にあるタール火山が噴火しました。近隣の工場や政府機関が休業し、マニラ空港では大半の航空機の運航が停止されました。

 

次に、フィリピンの20年1-3月期GDP成長率を項目別に見ると、通常GDP成長率とおおむね同水準で安定的に推移する民間消費が低下しました。

 

四半期、期間:2019年1-3月期月~2020年1-3月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]フィリピンGDP成長率の項目別の推移 四半期、期間:2019年1-3月期月~2020年1-3月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

最も大きく低下したのは投資で、特に耐久消費財関連の設備投資と建設投資が軟調でした。一方で、IT関連の投資については、従来の二桁の伸びは止まりましたが、20年1-3月期もプラスを確保しています。

 

さらに産業別に見ると、輸送や宿泊などを含むサービス業と、建設業などが落ち込みました。例えば、サービス業の変化率を前年同期比で見ると、前期の+8.1%から、20年1-3月期は+1.4%に急低下しました。サービス業は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けやすい産業に落ち込みが見られます。

 

フィリピンが新型コロナウイルス対策に都市封鎖をマニラなど首都圏で本格化させたのは3月中旬からです。2週間ながら、フィリピン経済への影響は深刻であったことがうかがえます。

 

なお、フィリピン当局は都市封鎖を5月中旬まで延長して(繰り返して)います。フィリピンの感染者数は11000人を超え、死者も700人を上回り、感染拡大の勢いが収まらない状況です。場合によっては、都市封鎖の再延期も想定されます。

 

国際通貨基金(IMF)が4月に公表した世界経済見通しで、フィリピンの成長率は20年が+0.6%、21年には+7.6%が予想されています。また、フィリピンの成長率は過去、アジア新興国全体の成長率と水準が近い傾向が見られます。今後のコロナの動向次第ながら、フィリピンが想定通りの経済成長を確保できない要因が(感染拡大を受け)増えつつあるように思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『都市封鎖の再延期も懸念されるフィリピン経済』を参照)。

 

(2020年5月12日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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