理想とかけ離れていた「医師の現実」
34歳のとき、私は病院を辞めました。勤務医ではなく、フリーランスの医師として生きる道を選択したのです。その後、開業していた父が病に倒れ、急遽私は地元に戻って院長になりました。
2009年に帝京大学の医学部を卒業してから、大学病院の研修医、総合病院の勤務医、非常勤のフリーランス、そして開業医として、10年間近く医療現場で働き続けてきました。そこで見たのは、多くの医師が仕事に忙殺され疲弊しながらも、ハードに働き続けることをやめられないという、理想とは全く異なる現実でした。
たしかに、一般のサラリーマンに比べれば医師は高収入です。しかし、仕事は激務ですし、患者の体調の変化と向き合っているので、緊張によるストレスを常に抱えています。余暇の時間も少ないこともあってか、ストレス解消として高級車を乗り回したり、ブランドの服を身につけたり、豪華な食事をしたりする先輩たちをたくさん見てきました。年収が1500万程度でも1000万円を超える車を購入したり、 1 億円を超える住宅を購入し、月々のローンの支払いに追われている医師も多くいます。
私はそのようなお金の使い方と働き方に長い間、違和感を感じていました。仕事に追われて自分のやりたいことができない毎日を過ごすのではなく、自分の医師としての技術と腕を最大限に発揮しながら、医師以外のやりたいことも優先できるような生活がしたいと思っていたのです。自分の人生は一度きりなのだから、自分が思い描いたビジョンを達成していきたい、そう考えてきました。
そのような思いを持ちつつ、いままで働き、資産形成について勉強を始め、何度か失敗しながらも自分の理想に近づいてきたと自負しています。本書では、私のこれまでの経験と投資の知識を、これから資産形成を始めようとするドクターの皆さんにお伝えしていきます。