「私は認知症です」ありのままの自分を受け入れた生き方とは?

認知症の初期症状としてよくいわれるのは、「何度も同じことを言ったり聞いたりする」「ものの名前が出てこない」「以前はあった関心や興味が失われる」「置き忘れやしまい忘れが多くなる」などです。認知症と診断された本人は、「認知症」という病気と、どう向き合っているのでしょうか。本記事では、書籍『認知症の語り 本人と家族による200のエピソード』(日本看護協会出版会)より一部を抜粋し、実際の声を赤裸々に紹介していきます。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

「私は私」であるっていうことを、やっとわかった

【63歳(診断時59歳)の男性・Aさんの語り:2010年9月】

 

「どうして私がアルツハイマーになったんだ」ってことは、毎日毎日ありましたね。「私が悪かったのか」っていうんではないですけど、自分が悪いことをしたからこうなったんだっていうのを、やっぱりね。

 

私が悪かったのか
どうして私がアルツハイマーになったんだ

 

だから、そういうことではないということを、やっとわかるようになったような気がするんです。それがまあ、よかったんじゃないかなと思いますね。何ていうか……そうだったんだっていうことを、やっとわかった。やっとですね。ほんとやっと、やっとだと思います。​

 

──アルツハイマーになったことの意味っていうのは、何かご自分の中であると思われてらっしゃいますか。

 

 そうですね……、私がアルツハイマーになったということが、最初は「何でだ?」って思ってましたけれども、「私は私」であるっていうことを、やっとわかった。そこに至るまでに、相当格闘したわけですけど。

 

 

【インタビュー映像はこちら】

 

・Aさんのプロフィール(2010年9月時点)

元脳神経外科医。妻と2人暮らし。

 

54歳の頃、簡単な漢字が書けなくなり、下痢も始まり、身体の衰弱が激しくなった。59歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された。

 

60歳の頃、認知症当事者であるクリスティーン・ブライデンさんの講演を機に自らもアルツハイマー型認知症であることを公表し、ようやく自分の病気と自分自身を受け入れることができた。

 

アリセプトとメマンチンにより、病状は安定している。夫婦ともにクリスチャン。

公表を決めたら、ぱあーっと開けたような感じがした

【52歳(診断時50歳)の女性・Bさんの語り:2014年11月】

 

(自分が認知症だということを)隠して生きているというのは、怯えているんですね。いつもね、知られたらどうしようという……なんかこうビクビクビクビクして、なんかこう硬くなって生きているような。

 

でも、「公表しよう、名前も顔も公表しよう」って。レビーは、皆さんが思っているような病気とは違うんだということを伝えていこう、って思ったときに、スカッとしたっていうか、ま……いいんだって。私はもうこれから堂々と生きていくんだ。……私は、もう、怯えて生きていくのは嫌だ。堂々と生きていくぞ、って思ったときに、……何ていうかな、何かぱあーっと開けたような感じがしました。

 

もちろん、怖いのはあるんですよ。扉をバーンと開けたときに、向こうに何がいるかはわからない。こんなネット社会で、もちろん、誹謗とか中傷とか、……うざいとか、きもいとかっていうのが出てこないっていうことはないと思うんです。必ずあると思うんですね。世の中いろんな人がいますから。

 

でも、たとえそれがあったとしても、そんなのは気にしない。もう、私は堂々と生きたい。ビクビク怯えながら、生きるのは嫌だと思いまして。

 

 

【インタビュー映像はこちら】

 

・Bさんのプロフィール(2014年11月時点)

夫と子供2人の4人家族。

 

41歳の頃、不眠で精神科を受診しうつ病と診断され、約6年間抗うつ薬を服薬した。

 

50歳で自律神経症状や幻視から心筋シンチグラフィ等の検査を受けたが診断はつかなかった。8カ月後、体調が悪化し再診を受け、レビー小体型認知症と診断され、抗認知症薬による治療が始まる。インタビュー時、多くの症状が改善していた。

認知症のタイプと症状の違い

「認知症」というと、まずアルツハイマー病を思い浮かべますが、広い意味での認知症に対してアルツハイマー型認知症が占める割合は50~60%といわれています。ほかにも様々な種類があり、それらが合併する混合型もあります。種類によって症状、治療、ケアの仕方は大きく異なるため、正しい診断を得る必要があります。

 

ここでは、本記事に登場したタイプをご紹介します。

 

・アルツハイマー型認知症

脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質がたまることで、正常な神経細胞が壊れ、脳が萎縮していく「変性性認知症」です。加齢や遺伝のほか、糖尿病や高血圧の人がなりやすいことが、科学的に証明されています。

 

認知症の中で数が最も多く、若年性の場合は40代から発症することもあります。記憶の障害から始まり、症状は徐々に進行していきます。「脳血管性認知症」というタイプと合併することも多いです。

 

・レビー小体型認知症

大脳皮質にレビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質がたまることで、脳が萎縮する「変性性認知症」の一種です。

 

病気の初期には記憶障害が目立たないことが少なくないため、注意力の著しい低下や物事を段取る力の低下、あるものが見えていない、距離がわからないなどの症状にも注意を払う必要があります。

 

他のタイプの認知症とは異なる症状として、実際には存在していないものが見える「幻視」、レム睡眠行動障害注1、パーキンソン症状注2などがあります。早期に診断され、適切な治療が行われれば、症状の改善が期待できます。

「認知症」と向き合う、本人の想い

インタビューに答えていただいた認知症本人の皆さんは、診断からおよそ3年ほど経過している方たちです(異変を感じたころからは平均6年)。

 

この方々は「病識」(自分が病気であるという認識)をもって、診断からの月日を過ごしてこられたわけですが、記憶をはじめとする様々な認知機能の低下や変動について、今まで普通にできたことができなくなっていくことに気づいたり、指摘されたりすると、つらくなったり、さびしく感じる、と多くの方が語っています。

 

そうした不安と向き合いながらも、ありのままの自分を受け入れ、日々の暮らしのなかに小さな喜びを見出しながら、前を向いて今を生きる心の声を伺うことができました。

 

 

認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン

 

 

注1 レム睡眠行動障害:睡眠には、急速な眼球運動を伴うレム睡眠と、ゆっくりと目が動いているノンレム睡眠がある。通常の睡眠では、ノンレム睡眠とレム睡眠が1つの単位を形成し、80~120分ごとに、一晩で3~5回繰り返されている。一般的に、夢をみる睡眠であるレム睡眠時には、筋肉が弛緩し動かなくなるのが特徴的であるが、レム睡眠行動障害では、レム睡眠時に体が動くようになるため、不快感や恐怖感を伴う。大声を上げ起き上がったり、手足を激しく動かしたりすることがある。比較的高齢の男性に多い。 

 

注2 パーキンソン症状:筋肉がこわばって、動きが鈍くなったり、硬直するなどの、パーキンソン病にみられる症状。

 

 

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健康と病いの語り ディペックス・ジャパン(通称:ディペックス・ジャパン)は、英国オックスフォード大学で作られているDIPEx(Database of Individual Patient Experiences) をモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指す。理事長は別府 宏圀氏(写真)。

著者紹介

連載『認知症の語り』本人と家族による200のエピソード

認知症の語り 本人と家族による200のエピソード

認知症の語り 本人と家族による200のエピソード

編集:認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン

日本看護協会出版会

認知症本人と家族の声を集めたウェブサイト「認知症本人と家族介護者の語り」の書籍版。 本人や家族の生の声から、「病気」としての認知症ではなく、病いとともに生きる「経験」としての認知症について知ることができます。…

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