東京23区は「ワンルーム」物件の需要が拡大する一方
現在の不動産投資でサラリーマンの皆さんが最も成功する確率が高いのは、中古ワンルームマンションです。しかしながら、まったくリスクがないとはいえません。残念ながら絶対に避けられないリスクが4つ存在します。その内容と対策を解説しましょう。
リスク①「空室」
不動産投資を続けるうえで、一番恐怖を感じるのは空室ではないでしょうか。多くの投資家の頭の中には、「空室」=「家賃収入なし」=「自腹でローン返済」という方程式が成り立っていると思います。
この考え方に間違いはありません。ですから最近は、管理会社と一括借上契約を結ぶケースが主流になっています。しかし、これは管理会社を儲けさせるだけの仕組みです。それならばどうすればいいのかというと、最も空室になる可能性の低い立地=人が集まる場所の物件を選ぶしか方法はありません。
では、日本でもっとも人が集まる場所はどこでしょうか? それは東京23区です。そのおもな理由を紹介しましょう。
大企業や外国企業が集中している
ほとんどの人、特に単身者が住む場所で一番こだわるのは立地です。そして単身者の多くは、職場になるべく近い場所に住みたいと考えます。東京都には、大企業の本社の約半数、外国企業の7割以上が集中しています。
働く場所があるところに人は集まるものです。日本は人口減の時代に突入しています。ですから、賃貸市場は冬の時代といわれていますが、東京都にその風はまったく吹いていません。総務省の『住民基本台帳人口移動報告』によると、2017年の都道府県転入超過数は、東京都が7万5,498人で、2位の千葉県1万6,203人を大きく引き離して断トツの1位となっています。
約7万5,000人といえば、千代田区の人口(約6万5,000人)を上回ります。この人数は転入から転出を差し引いた純増分です。東京では、毎年これだけの人口が増えているのです。
数多くの大規模な再開発が計画されている
さらに東京には、まだまだ人が増える見込みがあります。たとえば、23区内は次のような大規模な再開発計画が進んでいます。
●TGMM芝浦プロジェクト(約30万2,100m²・2020年完成予定)
●渋谷駅街区開発計画一期(約18万1,000m²・2019年開業予定)
●虎ノ門再開発事業(約80万m²・2022年完成予定)
●浜松町2丁目4地区A街区(約29万m²・2027年完成予定)
●六本木5丁目西地区再開発(約8万2,000m²・完成時期未定)
これだけ数多くの大規模な再開発が集中しているエリアは、日本全国でほかにないでしょう。
留学生の数が多い
また、東京にいる留学生の数は10万3,456人(2017年)で、こちらも全国トップ。しかもその数は右肩上がりで増加しています。
外国人就労者の数が多い
そして、外国人就労者数も全国トップで、同様に右肩上がりで増え続けています。これから人口と同時に働き手も減っていくことが確定的な日本において、留学生と外国人就労者の数が今後も増加していくことは間違いありません。
しかも東京に働きに来る人や留学生の多くは単身者です。その根拠として前述の住民基本台帳があります。
東京23区の世帯数は2003年時点では約400万世帯でした。それが2018年には510万世帯に増えています。ところが1世帯当たりの人数は減り続けているのです(2018年現在約1.9人)。これは単身世帯増加を意味します。東京で増加し続ける単身者は、まさに中古ワンルームマンションの入居者ターゲットと合致します。したがって、東京の中心地である23区内の物件であれば、空室のリスクは極めて低いといえるでしょう。
しかしながら、この話をすると「東京に仕事や勉強をしに来る人には若者が多い。若い人は長く住んでくれないので入居者募集に苦労するのでは?」と心配する人がいます。
確かにその傾向はあります。しかし、このリスクも最小限にとどめることが可能なのです。入居者と賃貸契約を結ぶ際は、「退去するなら1ヵ月前までに連絡すること」といった内容の告知期間を設けるのが一般的です。この期間はオーナー自身で決められますが、1ヵ月から3ヵ月が多いようです。短ければ短いほど入居者には喜ばれますが、入居者募集のハードルは上がります。
とはいえ、実際には23区内であれば1~2週間の募集期間で次の入居者が決まるケースがほとんどです。
この募集期間の短さも23区内という好立地の利点でしょう。その証拠として東京のおもなワンルームマンション管理会社のデータを確認すると、平均入居率は98%前後をキープしています。ほとんど空室がない状態なのです。
ちなみに一括借上契約では、退去者が出るたびに「1~3ヵ月の免責期間を設ける」のが一般的です。つまり、一括借上契約を結んでいても退去者が出れば、免責期間中の家賃収入はゼロになるのです。これで本当に安心といえるのでしょうか。
「賃料下落により自腹でローン返済」は杞憂
リスク②「賃料の下落」
賃貸物件オーナーにとって、空室に続く恐怖は「賃料(家賃)の下落」でしょう。皆さんも入居者として築5年と築15年のワンルームマンションが、同じ賃料で選べるのであれば、迷わず前者を選択するはずです。ですから、その対策として賃料は時とともに下げざるを得ません。
ただし、賃料の下落に関しては、誤解している人が多いようです。その誤解とは「もし、ローンの返済期間中に賃料をゼロ円にしても入居希望者が見つからなくなったらどうしよう」ということです。確かにそんな事態になったら、ローン返済のことで毎日頭が一杯になってしまうでしょう。
しかし、断言しますが絶対にそんな事態にはなりません。地方の過疎地、しかも古くて雨漏りがするような木造アパートならいざ知らず、世界の中心地である東京23区内のマンションならば、人が住める状態である限り必ずニーズがあります。
そして、23区内のワンルームマンションは、過去のデータが豊富に蓄積されているので、築何年で、どのくらいの賃料になるのかの相場を比較的容易に予想できます。ページの表を見てください。23区内の平均的な賃料の推移です。新築時を100とすると、1年ごとに1%ずつ下がっていき、10年後には1割下落します。そこからは下落幅が緩やかになります。
したがって、築10年以降の物件を購入すれば、賃料下落のインパクトを比較的軽減できるというわけです。実際の例でそのことを確認してみましょう。下の表を見てください。
これは、不動産流通機構が運営しているネットワークシステム「レインズ」に公開されている中野区の入居者募集中物件の一覧です。
①が築20年、②が築40年です。築20年の賃料は8万円前後となっています。一方で築40年は7万円弱を維持しています。しかも築40年の賃料はアパートのものです。仮に耐久性が高いマンションなら数千円は高くなるでしょう。
このことからも、きちんとメンテナンスされた23区内の中古ワンルームマンションであれば、賃料はどんなに下がっても1割程度ということが分かります。
それならば、購入前に現状の1割減の賃料でも問題ないかを検討すれば、賃料下落のリスクは最小限にとどめておくことができるはずです。
修繕費は「年間3万円前後」の積み立てで十分
リスク③「修繕費用」
不動産オーナーになると聞くと、メンテナンスに多額の費用がかかると思う人が多いようです。しかし、分譲マンションの場合、多額の費用を要する外壁や配管など共用部分の修繕は、すべて修繕積立金などで賄われるので、オーナーが個別に負担することはありません。
また、入居者の過失による内装のキズなどは入居者の負担で修繕しますし、火災があった場合は、火災保険で対応可能です。残る修繕部分といえば、経年劣化による内装や設備の不具合です。これはオーナー負担で対応するしかありません。
とはいえ、具体的には退去時の原状回復と10~15年ごとのエアコン、給湯器交換ぐらいしかありません。退去時の原状回復は不定期に発生するので、不安視する人もいます。しかしながら、平均すれば2~4年に一度です。そして肝心の費用も大体1回当たり12万円程度でしょう。
しかも東京の場合は、入居者から敷金1ヵ月分を納めてもらうことが一般的です。ですから12万円のうち8万円前後(家賃1ヵ月分)は敷金で賄えます。したがって、実質の負担額は4万円程度なので年間1万円前後を積み立てれば対応できてしまいます。
エアコンの交換は10年保証を付けても9万円程度、給湯器の場合は10万円程度です。両方とも10~15年に一度なので年間2万円も積み立てていれば備えは十分です。つまり、ワンルームマンションの修繕費用は、年間3万円前後積み立てていけば、怖いことはありません。これくらいの負担なら支払っても利益は十分に残ります。
震災による経済損失リスクは極めて小さい
リスク④「震災」
日本は地震大国です。最近は、熊本県や北海道などで大地震が続いたので、心配する人も多いでしょう。特に投資用ワンルームマンションのオーナーは、災害時は自宅に加えて投資用物件の復旧費用も負担しなければならないので深刻に考えがちです。しかし、皆さんが考えるほど事態は深刻にならないはずです。
その一番の理由は、マンションの耐震性が高いからです。このことは社団法人高層住宅管理業協会が東日本大震災後に行った、東北と関東のマンション(4万6,365棟)を対象とする次の被災状況調査の結果を見れば明らかです。
大破(建て替えが必要):0%
中破(大規模な補強・補修が必要):0.09%
小破(タイル剥離・ひび割れ等):2.55%
軽微(外観上ほとんど損傷なし、または極めて軽微)16.13%
損害なし:81.23%
つまり、あの未曾有の大震災でも約97%のマンションは、ほとんど無傷だったのです。
これは頑丈なつくりのマンションゆえの結果でしょう。また、万一損傷があったとしても、タイルの剥離など共用部分は管理組合のほうで対応するので、オーナーの懐は痛みません。
一方、入居者の家具や家電などに被害があった場合は、入居者自身の負担で対応することになります。それでも不安な場合は、専有部分の地震保険に加入しておけば安心でしょう。
以上のように、中古ワンルームマンションで考えられるリスクは、すべて最小限の負担で対応が可能です。これだけリスクが明確で、しかも対策が立てやすい投資対象はほかにありません。これも中古ワンルームマンションの魅力のひとつです。
桑田 泰
エステージェント株式会社 代表取締役