物上げ業者の検索ワード「マンション 投資 仲介」
一般の人が物上げ業者から中古ワンルームマンションを購入することは可能なのでしょうか? 一般的に物上げ業者の存在はほとんど知られていません。そのため、物上げ業者から買うことは、まさに裏ワザといえます。そもそも、業者そのものを見つけること自体、少々むずかしいかもしれません。なぜなら、
●仲介ゆえに利益率が低いのでテレビコマーシャルなどの広告を打っている会社は皆無。
●通常は一般人をターゲットとしないので、取り扱う物件が「楽待」や「健美家」など不動産投資情報サイトに出ていない。
●取引先のメインが再販業者なので、駅前など目立つ場所に店舗がない。
といった理由からです。しかしながら、実は物上げ業者から直接物件を購入することは可能なのです。
ただし、物上げ業者から中古ワンルームマンションを買いたいのなら、自分から積極的に行動することが必須になります。
比較的簡単な方法としては、「マンション 投資 仲介」といった検索ワードで物上げ業者を探すことです。
このような方法で、めぼしいところを数社ピックアップして、直接「投資物件を仲介してほしい」と電話またはメールをしてみましょう。
このとき、注意点が2つあります。
ひとつは、「当社は一般の人とはお取引しません」と回答するところはご縁がないということです。粘っても無駄なので諦めましょう。
もうひとつは、間違って再販業者に連絡をした場合でも、ほとんどが「できます!」と答えるはず、ということです。それはとにかく会って自社(売主)物件につなげたいからです。ここで喜んで会いに行ってしまえば、時間の無駄になってしまいます。
「再販業者」と「物上げ業者」を見分ける2つの質問
では、どうすればいいのでしょうか。
連絡を取った不動産投資会社が間違いなく物上げ業者であるか否かを見分ける方法…それは、最大2つの質問をすることです。
ひとつ目は、「御社の売主物件と仲介物件の割合はどれくらいですか?」と聞いてみましょう。「100%仲介です」と即答すれば、ほぼ間違いなく物上げ業者です。
一方で「半々です」といったように微妙な割合で答える業者は避けたほうが無難です。再販の利益率の旨味を知った業者が、半分も仲介をするはずはあり得ないからです。
この質問で90~100%仲介と答えた業者は、会う価値があると見ていいでしょう。会った際はいくつか物件を紹介してくれるはずです。その資料の取引態様欄が「媒介(仲介)」なら問題ありません。
もし、資料に取引態様の欄がなければ「媒介契約書を見せてください」と2つ目の質問をしてみましょう。
媒介契約書とは、物上げ業者と売主が交わすもので、買主を探す期間や仲介料などが記されています。通常は買主に見せるものではありませんが、要望されて断る理由はありません。これを見せてくれないようなら怪しいと考えていいでしょう。
この2つのハードルをクリアできれば、間違いなく物上げ業者です。
選ぶべきは、「投資目的に沿った提案」ができる業者
しかし、残念ながら物上げ業者のすべてが顧客を成功へと導いてくれるとは限りません。普段再販業者としか取引していないため、一般人とのやり取りが不慣れなところも多いはずです。
そこで、一般人のニーズにも寄り添ったお客さま目線の提案をする物上げ業者を見極める、最も有効な方法を紹介しましょう。
それは、投資目的に合った提案をしてくれるか否かです。サラリーマンが中古ワンルームマンションへ投資する際のおもな目的は、次の4つになります。自分がそのどれを目的とするのかを伝え、それに対してここで紹介する内容を納得できるまで説明してくれる物上げ業者ならば、合格といえるでしょう。
1. 年金対策
この目的を選択するならば、目先の利益を求めるのはむずかしいでしょう。重視するのは年金を受給する年齢に達する20~30年後の資産価値です。多少年間のキャッシュフローが悪くても価値が下がらない物件を購入するべきです。
具体的に選択すべきなのは、超好立地の物件です。23区内でも中央区、港区、千代田区に絞り、なかでも六本木や赤坂といったブランド力のある地名が理想でしょう。
もちろん、物件価格はほかのエリアよりは高額になりますが、その差額よりも20~30年後の家賃や売却価格の差額のほうがほぼ間違いなく多くなります。
ですから、練馬区、板橋区、北区といった23区内でも比較的安価で買えるエリアの物件は、年金対策用としてはお勧めできません。
ただし、注意点もあります。まず、キャッシュフローが極端に悪い物件は論外です。「楽待」や「健美家」などのサイトで同条件の物件の利回り相場を確認し、あまりに低い利回りの物件ならば避けるべきです。
また、たとえ人気の中央区・港区・千代田区内の物件であっても、最寄り駅から徒歩12分を超えるものは、極端に資産価値が下がります。同じく避けるべきでしょう。したがって、そのような物件を紹介する物上げ業者は、パートナーとして不合格と言わざるを得ません。
2. 資産運用
ここでいう資産運用とは、「より多くの利益を毎年得る」ということです。それゆえ、資産運用を目的とするならば、できる限り高い利回りを追求しなければなりません。
とはいえ、「23区内」で「物上げ業者が仲介する」物件であれば、比較的高い家賃が取れるうえに割安なので、基本的に赤字経営になることはありません。一定の利回りに達していると考えていいでしょう。
ですから皆さんがすべきことは、そのなかで収支計画書を見比べて、より高い利回りの物件を選ぶだけです。
注意点としては、まず、利回りを重視しすぎて極端に築古な物件を選ばないことです。23区内の物件は、前述のように人気があるので、築古でも比較的家賃が下がりません。一方で販売価格は築年数なりに下がっていきます。その結果、築40年、50年といった物件は、極端に高利回りになります。
しかし、その利回りに飛びつくのは考えものです。例えば、1981年以前に建築確認を受けた旧耐震基準の物件(築38年)は、耐震性に不安があります。
また、法定耐用年数である築47年を過ぎた物件は、9年しか節税効果を得られないので、長い目で見れば資産運用向きとは言えません。
さらに、築古物件なのに管理費と修繕積立金が相場よりも極端に少ない物件も要注意です。これらを少なく設定している物件は、必要な修繕が必要なときにできないため、突然の値上げや100万円前後の一時金を求められることが多々あります。
積立金の目安は、国土交通省が上の表のように公表しています。1㎡当たり毎月200円前後といったところでしょう。なお、「事例の3分の2が包含される幅」とは「この幅に納まっていれば妥当」という範囲です。
3. 生命保険代わり
購入資金を融資によって調達するならば、実はすべての物件が生命保険代わりになります。融資の条件に団体信用生命保険への加入があるからです。
したがって、生命保険を投資目的とするならば、保険内容を比較検討するべきです。具体的には三大疾病(「がん」「心疾患(急性心筋梗塞)」「脳卒中」)への対応の有無などです。これは融資をする金融機関によって異なります。
また、生命保険代わりになるからといって、負担額が保険料よりも多くなるのなら本末転倒です。キャッシュフローがプラスマイナスゼロならば保険料が無料、マイナス1万円ならば年間12万円の生命保険と同等、といった考え方もできます。現在加入している生命保険の負担額と比較してみましょう。
4. 節税
節税効果は利回りが低い物件でも当てはまります。どのような物件でも減価償却の対象になるからです。
ただし、前述したように築古の物件は節税できる期間が短くなるのでお勧めできません。やはり、費用対効果という意味で築10~20年の物件を選ぶのが無難でしょう。
そして、より効率的に節税効果を狙うなら、物件価格と所有する物件数に注目すべきです。
例えば、1,500万円の物件を購入して30万円の節税効果があるならば、3,000万円の物件では60万円前後の効果を見込めることになります。
また、1戸3,000万円で60万円の節税が実現できるならば、2戸所有すれば120万円の節税になります。
つまり、物件価格が高ければ高いほど、所有する戸数が多ければ多いほど節税効果が得られることになるのです。
とはいえ、いくら多く欲しくても購入資金を無限に調達できるはずはありませんし、以前の記事『人生が激変…失敗から学ぶ「中古ワンルームマンション投資」』で紹介したように、戸数が増えるほどリスクも増加します。そのため、様々なバランスの見極めが重要になります。
また、節税のために価格の高い物件を購入したり、戸数を増やしたりする際は、累進課税にも注意しなければなりません。
物件価格が高くなればなるほど、戸数が増えれば増えるほど、ふつうなら得られる利益は多くなります。その際、日本の所得税は課税対象額が多くなればなるほど税率が上がる累進課税方式なので、左の表にある一定のボーダーラインを超えると納税額がグッと増えてしまいます。それでは節税になりません。
このようなことから、不動産投資において節税を重視するなら、事前の詳細な計算が必須となります。不慣れな一般人にとってはむずかしいでしょう。
そこで頼りになるのが、信頼できるパートナーです。個人との取引にも慣れたお客さま目線の物上げ業者ならば、スピーディーに節税効果も含めた収支計画書を作成してくれるはずです。
桑田 泰
エステージェント株式会社 代表取締役