「高額・供給過多・融資無理」どん詰まりに見えるが…
新築一棟マンションは、高額過ぎて一般的なサラリーマンでは買えない。新築ワンルームマンションは、割高で投資対象としての魅力に欠ける。新築アパートは、そもそも融資が受けられない。中古アパートは新築以上に供給過多。
現在の不動産投資は、どれもサラリーマンが対象とするには不向きとしか思えません。では、サラリーマンにとって不動産投資の旨味はなくなってしまったのでしょうか?
実は現在の大変厳しい市況でも、サラリーマンが高確率で成功できる不動産投資があります。それは中古ワンルームマンションです。その理由がいくつかありますので、ひとつずつ説明していきましょう。
かつては「年収の10倍」までローンを組むことができた
1.価格が安い
かつてサラリーマン投資家の間で新築アパートがブームとなりました。上場企業の社員や公務員ならば年収の10倍程度までローンを組むことができたので、人によっては1億円以上の物件も買うことができたのです。
とはいえ、いくら資金を調達できたとしても、1億円の借金に抵抗を感じない人は少ないでしょう。より少ない借入で大きな効果を生む投資対象にしたいのではないでしょうか。
では、新築ワンルームマンションならどうでしょう。これは前述のように割高です。とても効果的とはいえません。
その点、中古ワンルームマンションならば、東京23区内の物件でも2,000万円前後と割安です。このリーズナブルな価格は、「借金を背負う」という心理的なハードルが低くなると同時に、実利として新築ワンルームマンションよりも大きな利益を生みます。中古ワンルームマンションと新築ワンルームマンションのキャッシュフローシミュレーションを比較すれば一目瞭然です。
新築ワンルームマンションのキャッシュフローシミュレーション
●物件価格:3,000万円
●頭金:10万円
●返済期間:35年
●金利:2%
●家賃:9万円
●利回り:3.6%
●毎月の返済額:9万9,047円
●管理費・修繕積立金:5,000円
毎月1万4,047円、年間16万8,564円の赤字です。
中古ワンルームマンションののキャッシュフローシミュレーション
●物件価格:2,000万円
●頭金:10万円
●返済期間:35年
●金利:2%
●家賃:8万7,000円
●利回り:5.2%
●毎月の返済額: 6万5,921円
●管理費・修繕積立金:1万円
毎月の支払額はローン返済6万5,921円と管理費・修繕積立金1万円の合計7万5,921円です。これに対して、家賃収入は新築よりもやや下がって8万7,000円。したがって、毎月1万1,079円、年間で13万2,948円の黒字となります。
16万8,564円+13万2,948円=30万1,512円。新築と中古の価格差によって年間約30万円も利益の違いが出るのです。
年間30万円ということは、ローン返済期間の35年では1,050万円。これはほとんどのサラリーマンにとって、インパクトのある数字ではないでしょうか。
ファミリー向けのマンションで「退去者」が増える理由
2.物件の実力がわかっている
賃貸物件に投資をした際の成功とは、すなわち入居者募集に困らない、ということになります。そのため、新築物件の場合は、計画段階で綿密な市場調査を行います。最寄り駅の乗降客数、年齢構成、収入の傾向、周辺の競合物件の傾向などを調べ上げ、間取りや賃料を決定します。
それでも絶対に成功するとはいえません。ふたを開けてみれば「競合物件より収納が少し小さい」「競合物件よりも駅からの道が少しだけ暗い」といった些細な差で、毎回入居者募集に苦労することもあるのです。一方で中古物件の場合は、すでに実力が明白となっています。販売会社に依頼すれば、新築時から現在までの入居状況がわかりますし、同じ棟の空室状況も調べてもらえます。このような調査で、人気物件か否かを把握してから購入することができるのです。
また、中古ワンルームマンションなら、その建物自体の管理状態も現物によって確認することができます。ファミリー向けの分譲マンションでは、「物件は管理体制で買え」と言われるほど管理は重要視されます。管理がずさんだと、ゴミ捨て場が汚れっぱなしになったり、廊下などの共用部分の不具合が放置されたりして退去者が増えていきます。
このような管理体制をじっくり確認できるのも、中古ワンルームマンションのメリットといえるでしょう。
「都内23区」ワンルームマンションの実情は?
3.東京23区内の中古ワンルームマンションのニーズはまだまだ高い
不動産投資では「すでに供給過多で空室だらけになっている」ということが多いですが、これは東京23区内の中古ワンルームマンションには当てはまりません。東京都は全国でも圧倒的に人口が増加している地域です。また、大企業のほとんどが東京に本社を置いているため、今後も安定して人口が増えていくでしょう。一方でアパートが増加したのは、おもに東京23区内に通勤する人たちが住むエリアです。具体的には国道16号線沿いと考えればわかりやすいでしょう。
かつてこのエリアでは、23区内と比べると土地代が圧倒的に安いため、新築アパートが乱造されました。サラリーマン大家がこぞって買い漁ったのです。
このような背景から23区内の単身者用賃貸住宅は、まだまだ足りない状況です。つまり、エリアの選択さえ間違えなければ、中古ワンルームマンションは入居者募集で困ることがほとんどないのです。
「スルガ銀行不正融資事件」の影響はないのか?
投資用アパートローンの審査基準は、押しなべて非常に厳しくなっています。年収500万円前後のサラリーマンでは、ほぼ絶望的な状態と言えるでしょう。
しかし、中古ワンルームマンションなら心配無用。現在(2019年9月)でもスルガ銀行の事件が発覚する前と同様の審査基準で融資を受けることが可能です。
その理由は、やはり単価が低いからです。ですから金融庁は中古ワンルームマンションの融資に対して目を光らせていません。一般的なサラリーマンであれば、ほかに大きな借金があるといった特別な事情でもない限り、審査には通るはずです。それどころか、アパートでは35年が上限だったローン期間も45年までOKになる場合もあります。
ローンの返済期間が長くなれば、それだけ利子を多く支払うことになりますが、逆に月々の返済が減ることでより多くの収入を得ることができます。
参考までに先ほど紹介した2,000万円の物件を例に、35年に対し45年だとどれだけキャッシュフローが好転するかを比較してみましょう。
35年の場合の毎月の利益は、1万1,079円でした。年間では13万2,948円です。一方で45年の場合は、次のようなキャッシュフローになります。
●物件価格:2,000万円
●頭金:10万円
●返済期間:45年
●金利:2%
●家賃:8万7,000円
●利回り:5.2%
●毎月の返済額: 5万5,918円
●管理費・修繕積立金:1万円
毎月の家賃収入が8万7,000円あるのに対して、支出はローン返済額5万5,918円+管理費・修繕積立金1万円=6万5,918円になります。したがって、月々の収支は、
8万7,000円-6万5,918円=2万1,082円(年間25万2,984円)
ということになります。35年ローンとの差額は年間12万36円。投資の目的を資産運用とするならば、45年ローンが利用できることは大きなメリットとなります。
また、年収500万円以上のサラリーマンが投資用中古ワンルームマンションを買うのであれば、融資のハードルが低いゆえに賃貸住宅暮らしの独身者なら4戸、持ち家で妻子がいても2戸所有することも不可能ではありません。
桑田 泰
エステージェント株式会社 代表取締役