コロナ関連で業績下方修正の上場企業は200社を超えた
新型コロナウイルスの感染拡大により、日本の多くの企業では業績が急激に悪化しています。レジャー産業や飲食業などでは長期の臨時休業、営業時間の短縮を余儀なくされ、従業員の一時帰休を行う企業も増えてきているようです。この2~3カ月間でも業績はかなり傷んでいますが、この先、良化する兆しがみえません。
帝国データバンクでは、特別企画として「新型コロナウイルスの影響による上場企業の業績修正動向調査」をまとめました。4月15日時点のデータについて、公表したものです。
新型コロナウイルスは国内経済に大きなダメージを与えており、その影響によって業績予想の下方修正を発表する上場企業は後を絶ちません。帝国データバンクでは、業績予想の修正に関する適時開示情報を発表した上場企業のうち、新型コロナウイルスの影響が含まれ、業績予想を下方修正した企業について集計しています。
分析すると、「新型コロナウイルス」の影響を受けたとして業績予想の下方修正(連結、非連結)を発表した上場企業は4月15日までに累計217社となり、200社を超えました。この217社が下方修正したことで、減少した売上高の合計は約1兆7,416億8,300万円にものぼります。
マーケットで注目されたのは、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングです。国内の売上急減に加え、海外店舗のほぼすべてが休業を余儀なくされており、大幅な下方修正を発表しました。
また、新型コロナウイルス感染拡大に収束のメドが立たないなか、全国で関連倒産も相次いでおり、影響の拡大が今後も懸念されます。帝国データバンクの調べでは、4月16日15時時点で61件となっています。
業種別では製造業が下方修正のトップに
業種別にみると、製造業やサービス業、卸売業、小売業が上位に並んでいます。
製造業に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大が中国国内でまず広がり、とりわけ日本向けの製品を多く生産しているとされる武漢市で被害が広がったため、早い段階から自動車産業などで顕在化したとみられます。
2位のサービス業と4位の小売業は、航空便の国際線が減便となり、訪日客の減少で販売減というダメージを受けたところで、外出自粛要請によって日本人の顧客も足が遠のいたことが影響したとみられます。
3位の卸売業は、そのほとんどは商社です。物流の停滞、国内外の消費減少はもちろんですが、大きいのは原油、石炭、鉄鉱石といった資源(コモディティ)価格の下落です。
5位の金融・保険業はマーケットの混乱や、金利下落の影響を受けています。
この5つのセクターで下方修正する企業が目立つという結果が出ましたが、会社数や金額の増加だけでなく、今後、下方修正を発表する業種・セクターの広がりも見込まれます。
業績予想を取り下げた企業も少なくない
この調査は「集計開始以来、一度は業績予想を発表していたものの、その後『未定』とした企業については判明している数値で集計」とあります。すなわち、先行き不透明感から企業側が「信ぴょう性のある数字(見通し)を出せない」と判断し、業績予想を取り下げたところは含まれません。
いわば「隠れ下方修正企業」とも言えます。会社側も、実際に業績をまとめてみないと、どのような数字になるのかわからないというもので、大幅な悪化が見込まれます。
上場会社は会社法以外にも、金融商品取引法や取引所の規則が適用されます。金融商品取引法に基づく法定開示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書などのほか、いくつかの基準で臨時報告書も必要)とともに、金融商品取引所における適時開示制度があり、上場会社が適時開示を行う場合、取引所の定める制度に則って開示しなければなりません。
したがって、「いい加減な数字(見通し)」を開示したままにするわけにはいかず、上振れとなりそうなら上方修正、その逆は下方修正する必要があります。
その基準は、当初の業績予想に対して「売上高に対して10%以上の変動(プラスまたはマイナス)」、「営業損益、経常損益、当期純損益に対して30%以上の変動(プラスまたはマイナス)」であり、いずれかが生じる見込みとなった段階で修正しなければなりません。
業績予想を取り下げる場合には「業績予想非開示の場合には、前期決算の売上高や利益の額を予想値とみなして、売上高10%以上、各利益30%以上の変動があった際には重要事実として開示が必要となる」となります。
このように、上場企業には厳格なルールがあり、それに則っています。今回のコロナショックを受けて「業績予想非開示」とするならば、各利益30%以上の下方修正の可能性があるということです。
株価だけを見て、安易に「値ごろ感から…」というのではなく、業績もしっかりみて投資したいものです。
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