日経平均株価は今週になって3日続落です。マーケットの話題は低調な原油価格の動向ですが、本来ならば、原油安は経済にプラスです。しかし、足もとの水準まで下落してくると経済にはマイナスととらえられるようです。なぜでしょうか?

新たな懸念材料も浮上し、日経平均株価は3日続落

4月22日(水)の東京株式市場では、日経平均株価は大きく下落しています。今週になって3日続落です。

 

21日(火)の昼過ぎに、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長について、アメリカのCNNテレビから「手術を受けたあと、重篤な状態になっているという情報がある」と伝えられ、同日午後の日経平均株価は下げ幅を広げました。これに対し、韓国大統領府から「特異な動向は把握されていない」とのコメントが出されています。真偽のほどは不明であり、先行き不透明感につながる新たな材料が出てきた格好です。

 

このニュースは米国市場でもネガティブな材料としてとらえられたようです。22日(水)の東京株式市場でも、引き続き相場の重しとなっています。

 

家賃の支払いが困難になった飲食店などを救済するため、与野党が家賃の減免や猶予などの対策を検討し始めたと報じられている。
家賃の支払いが困難になった飲食店などを救済するため、与野党が家賃の減免や猶予などの対策を検討し始めたと報じられている。

 

国内の新たな材料としては、新型コロナウイルスの感染拡大で家賃の支払いが困難になった飲食店などを救済するため、与野党が家賃の減免や猶予などの対策を検討し始めたと各メディアが伝えています。毎日新聞によると、自民党は店舗などの借り手に対する直接補助の検討を始めたとし、第2次補正予算案での対応を念頭に置いているとのことです。野党は「家賃モラトリアム法案(仮称)」を来週にも共同提出する構えで、今後は与野党間で協議が行われる見通しです。

 

都心や繁華街で飲食店を展開している企業(個人)は、臨時休業や営業時間の短縮で売り上げが大きく落ち込んでいます。しかし、家賃は支払わなければならず、月末が近づくにつれて問題化してきたと、テレビの情報番組などで繰り返し取り上げられています。契約上、1回でも滞納があれば明け渡しを求められるところもあるようで、飲食店の関係者は困っています。

 

一方、店舗のオーナー側も、簡単には減額などに応じられない事情もあります。建物のメンテナンス費用を業者に支払う必要があるほか、銀行から借り入れがある場合、返済が滞れば信用問題にもつながり、非常に複雑な話です。「着地」によっては失業者が大量に出たり、金融機関の経営不安にもつながることであり、注目度が高まっています。

原油相場はまだまだ不安定な相場が続きそう

金融関係者の注目は、引き続き原油価格の動向です。20日(月)の米国市場では、NY原油先物5月限(WTI)は史上初のマイナスとなりました。つまり、「お金を払うから、原油を引き取ってくれ」ということです。先物取引ですから最終売買日というものがあって、21日(火)がその最終取引でしたが、終値は1バレル=10.01ドル(前日比+47.64ドル)でした。さすがにプラス圏に戻しています。

 

しかし、1カ月後に期限を迎える6月限は大幅安となっており、低調な相場に変わりはありません。世界中の国、石油会社のオイルタンクは満タンであり、備蓄の余裕はないとみられます。原油在庫がダブついている状況である一方、産油国は減産を渋っており、需要が増える見込みもありません。

 

米国のトランプ大統領は「原油購入の最適な時期」、「マイナスの石油価格は金融的な問題であって、原油の状況を反映したものではない」、「7,500万バレルをリザーブに入れ、国家石油備蓄を満タンにする」と発言するなど強気ですが、ほとんどの市場関係者は懐疑的です。

 

日本のようにほぼ全量を輸入する国にとっては、原油価格の下落は経済に追い風です。しかし、米国のような産油国にとっては、原油価格の下落はマイナスになります。シェブロンやエクソンモービルをはじめとするオイル関連企業の業績の下押し圧力となり、株価下落につながります。

 

また、シェブロンやエクソンモービルは米国株式市場において、NYダウという指数への寄与度が大きく、2社の株価が急落すると、NYダウも大きく下落します。米国株が下げると、日経平均株価など他の国の株式市場でも指数が下落します。

 

単に「原油価格が下がった!」とか、「ガソリンスタンドで給油したら安くなった!」と喜んでいるわけにはいかないのです。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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