国内の新型コロナ関連の材料はほぼ織り込まれた
4月21日(火)の東京株式市場では買い手控えのムードが強く、日経平均株価は続落となっています。国内では引き続き、特に注目すべき材料は見当たりません。新型コロナウイルスのニュースがいろいろと伝えられていますが、マーケットの材料になりそうなものはないようです。
新型コロナウイルスに対する抗体測定試薬の取り扱いを開始した医学生物学研究所や、ウイルスの感染力を抑えたり細菌を殺したりする紫外線照射装置を開発したと報じられたウシオ電機の株価が急騰していますが、材料難のなかで「幕間つなぎ」的に物色されているに過ぎないと思われます。
このほかの個別銘柄では、シャープがマスクの販売を開始したとか、ANAホールディングスが終わった2020年3月期の業績見通しを大幅に下方修正したというニュースが話題になっていますが、織り込まれている話です。
ただ、ANAに関しては、新たに始まった2021年3月期の見通しを探りやすくなったとの声も聞かれます。2020年3月期は、2019年4~12月に積み上げてきた利益を2020年1~3月に吐き出した格好です。そのため、「国内線が半減、国際線が90%減で2020年1~3月の売上高、損益がこれぐらいだから、上期では…とか、通期では…」といった感じで、計算がしやすくなったということです。季節要因もあって冬場はもともと利益がでにくいため、この2020年1~3月は「想定し得る最悪の数字」との見方もできそうです。
NY原油先物は史上初めてマイナス価格で取引を終えた
20日(月)の米国市場から21日(火)の東京市場にかけて、マーケットの大きな話題は原油相場です。NY原油先物5月限(WTI)の終値は、1バレル=-37.63ドル(前営業日比-55.90ドル)でした。史上初めてマイナス価格で取引を終えたことになります。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界的に経済活動が止まっています。航空機の運航が激減し、外出自粛で自動車のガソリン需要も停滞しており、原油の在庫がだぶついています。
原油の供給を減らすために、このほど産油国で構成される「OPECプラス」の会合が行われ、過去最大の減産幅となる日量970万バレルの減産が決められましたが、なお需要と供給のバランスが崩れています。
市場関係者の間では、産油国による追加減産は避けられないという見方が多いです。現在はロシアと中東の各国、中南米のメキシコなどが対立していますが、これ以上の値崩れを避けるために、追加減産に合意せざるを得ないという思惑(期待)は根強くあります。
原油価格がマイナスになった背景とは?
「原油価格が史上初のマイナス」とだけ聞けば、かなりインパクトのある話です。しかし、5月限の先物での価格であり、悲観するほどの話ではないというブル(強気)の見立てもあります。
詳説は省きますが、先物取引には売買最終日があります。今回急落したNY原油先物5月限(WTI)は日本時間今夜、4月21日(火)が最後の売買になります。買い(ロング)のポジションを持っていれば、「現受け」しなければなりません。つまり、原油を「実物」で引き取る必要が出てきます。
これが金(ゴールド)の先物であれば、「現受け」しても場所をとるわけではないので問題ありません。ところが、原油ですから、莫大な量を入れられる「容器」が必要です。
平時であれば、「備蓄できる場所」には余裕があるでしょう。しかし、この1~2カ月間の原油価格下落を受けて、どの国も、どの石油会社も原油在庫をかなり抱えており、引き受けられるスペースがありません。したがって、売買最終日を前に「投げ売り」が出たものと考えられます。
原油価格がマイナスになるということは、「お金を払ってでも、引き取ってほしい」ということになります。新たに備蓄の設備をつくる費用などを考慮すると、致し方ありません。
これが原油価格「史上初のマイナス」の背景であり、あまり悲観するほどの話ではないという見方につながっています。
実際のところ、売買最終日までまだ1カ月あるブレント先物6月限(ICE)の終値は1バレル=25.57ドル(前営業日比-2.51ドル)です。2021年の春に限月交代を迎える先物(売買最終日まで1年以上あるもの)は1バレル=30ドル台です。このことから、この4月が最悪期であり、5月には経済が持ち直し、あるいは1年後には原油の需要がそれなりに出てくるという投資家、トレーダーが少なくないと見て取ることもできます。
経済の見通しを立てるために、原油の先物もしっかりと見ていく必要がありそうです。
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