原油価格暴落の衝撃 今後の注目点は?

投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

 

OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどで構成されるOPECプラスは12日(日)、日量970万バレルの減産という歴史的合意を成立させた。しかし、WTI原油先物価格は暫定合意が報じられた9日(木)に前日比9.3%安、連休明けの13日(月)は同1.5%安、14日(火)は同10.3%安、そして15日(水)と16日(木)は節目の20ドルを終値で下回った。原油市場で何が起こっているのか?

歴史的減産でも追いつかない需要の急減

OPECプラス臨時会合で合意された減産規模は日量970万バレル、世界の供給量全体の1割に相当する過去最大の協調となった。サウジとロシアがそれぞれ250万バレル、その他OPECプラス国が470万バレルであり、それ以外にも米国やカナダ、ブラジルが計370万バレル、その他G20加盟国が130万バレルの減産と報じられている。しかし、IEA(国際エネルギー機関)は今月15日、世界の原油需要は今年4月に日量2,900万バレル減少、4-6月期では日量2,310万バレル減少する予測を示しており、歴史的減産がコロナショックに伴う原油需要の急減に追いついていないのが実態だ。

 

年次、単位:万バレル、期間:1965年~2018年 ※ロシアは1985年以降 出所:BPよりピクテ投信投資顧問作成
[図表1]原油生産量(日量) 年次、単位:万バレル、期間:1965年~2018年
※ロシアは1985年以降
出所:BPよりピクテ投信投資顧問作成

ストレージ不足が原油価格の下落に拍車をかける可能性も

さらに深刻なのが原油のストレージ(貯蔵庫)不足だ。WTI原油先物には限月(満期)があり、限月が長い先物ほど先物価格が高い状態をコンタンゴと呼ぶが、原油現物は保管コストがかかるので通常コンタンゴになりやすい。しかし、コロナショックによる急激な需給悪化を受け、WTI原油先物では強烈なコンタンゴが発生している(図表2)。このような状況下で懸念されるのは、タンカーや備蓄タンクといったストレージが、今後数週間で容量を超える恐れがあるとIEAが指摘している点だ。ストレージが容量を超えれば行き場を失った原油が市場に溢れるため、理論上、供給量を抑えるためには原油価格がさらに下落する必要がある。

 

日次、単位:米ドル/バレル、期間:2018年1月1日~2020年4月16日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]WTI原油先物価格差(第2限月―第1限月) 日次、単位:米ドル/バレル、期間:2018年1月1日~2020年4月16日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

原油価格の低迷は米国ハイイールド債のリスク要因に

原油価格の低迷は原油生産企業を直撃する。その影響が如実に表れているのが、原油生産企業が一部含まれる米国ハイイールド債のスプレッドだ(図表3)。FRB(米国連邦準備制度理事会)による流動性供給によってスプレッドは幾分低下したが、FRBはすべての米国ハイイールド債を流動性供給の対象とはしているわけではない。当面は原油と米国ハイイールド債の動向に警戒が必要だ。

 

日次、期間:2018年1月1日~2020年4月16日 ※米国ハイイールド債スプレッドはUSD HY All Sectors OASを使用 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表3]米国ハイイールド債スプレッドとWTI原油先物価格 日次、期間:2018年1月1日~2020年4月16日
※米国ハイイールド債スプレッドはUSD HY All Sectors OASを使用
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油価格暴落の衝撃 今後の注目点は?』を参照)。

 

(2020年4月17日)

 

 

田中 純平

 

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

 

[PR]8月20日(木)特別イベント/幻冬舎会場&オンライン同時開催
資産運用のプロから直接「本音」が聞ける!
IFA口座開設済みのお客様限定/特別フリートークセッションライブ

 

投資家ご本人が、自ら考え、選び、投資をするプロセスを徹底サポート!
幻冬舎グループのIFAによる
「資産運用」個別相談会

 

 

幻冬舎グループがIFAをはじめました!
「お金がお金を生む仕組み」を作りたいけど、相談相手がいない…
この現実から抜け出すには?

 こちらへ 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧