投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー

 

OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどで構成されるOPECプラスは12日(日)、日量970万バレルの減産という歴史的合意を成立させた。しかし、WTI原油先物価格は暫定合意が報じられた9日(木)に前日比9.3%安、連休明けの13日(月)は同1.5%安、14日(火)は同10.3%安、そして15日(水)と16日(木)は節目の20ドルを終値で下回った。原油市場で何が起こっているのか?

歴史的減産でも追いつかない需要の急減

OPECプラス臨時会合で合意された減産規模は日量970万バレル、世界の供給量全体の1割に相当する過去最大の協調となった。サウジとロシアがそれぞれ250万バレル、その他OPECプラス国が470万バレルであり、それ以外にも米国やカナダ、ブラジルが計370万バレル、その他G20加盟国が130万バレルの減産と報じられている。しかし、IEA(国際エネルギー機関)は今月15日、世界の原油需要は今年4月に日量2,900万バレル減少、4-6月期では日量2,310万バレル減少する予測を示しており、歴史的減産がコロナショックに伴う原油需要の急減に追いついていないのが実態だ。

 

年次、単位:万バレル、期間:1965年~2018年 ※ロシアは1985年以降 出所:BPよりピクテ投信投資顧問作成
[図表1]原油生産量(日量) 年次、単位:万バレル、期間:1965年~2018年
※ロシアは1985年以降
出所:BPよりピクテ投信投資顧問作成

ストレージ不足が原油価格の下落に拍車をかける可能性も

さらに深刻なのが原油のストレージ(貯蔵庫)不足だ。WTI原油先物には限月(満期)があり、限月が長い先物ほど先物価格が高い状態をコンタンゴと呼ぶが、原油現物は保管コストがかかるので通常コンタンゴになりやすい。しかし、コロナショックによる急激な需給悪化を受け、WTI原油先物では強烈なコンタンゴが発生している(図表2)。このような状況下で懸念されるのは、タンカーや備蓄タンクといったストレージが、今後数週間で容量を超える恐れがあるとIEAが指摘している点だ。ストレージが容量を超えれば行き場を失った原油が市場に溢れるため、理論上、供給量を抑えるためには原油価格がさらに下落する必要がある。

 

日次、単位:米ドル/バレル、期間:2018年1月1日~2020年4月16日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]WTI原油先物価格差(第2限月―第1限月) 日次、単位:米ドル/バレル、期間:2018年1月1日~2020年4月16日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

原油価格の低迷は米国ハイイールド債のリスク要因に

原油価格の低迷は原油生産企業を直撃する。その影響が如実に表れているのが、原油生産企業が一部含まれる米国ハイイールド債のスプレッドだ(図表3)。FRB(米国連邦準備制度理事会)による流動性供給によってスプレッドは幾分低下したが、FRBはすべての米国ハイイールド債を流動性供給の対象とはしているわけではない。当面は原油と米国ハイイールド債の動向に警戒が必要だ。

 

日次、期間:2018年1月1日~2020年4月16日 ※米国ハイイールド債スプレッドはUSD HY All Sectors OASを使用 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表3]米国ハイイールド債スプレッドとWTI原油先物価格 日次、期間:2018年1月1日~2020年4月16日
※米国ハイイールド債スプレッドはUSD HY All Sectors OASを使用
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油価格暴落の衝撃 今後の注目点は?』を参照)。

 

(2020年4月17日)

 

 

田中 純平

 

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧