負債総額は2年連続で前年度を下回った
帝国データバンク、東京商工リサーチと企業を対象に信用調査を行う2社から、2019年度の全国企業倒産件数が公表されています。
調査方法が異なるため、倒産件数や負債額に違いはありますが、いずれも前年度に比べて、倒産件数が増加しているとの結果が出ました。
まずは、帝国データバンクからみてみましょう。
2019年度の倒産件数は8,480件(前年度8,057件、前年度比5.3%増)となり、リーマン・ショック以降の過去10年間で最少だった前年度から2年ぶりに増加に転じました。ただ、負債総額は1兆2,187億8,900万円(前年度1兆5,548億0900万円、前年度比21.6%減)と2年連続で前年度を下回り、比較可能な2000年度以降で最小を更新しました。
業種別に見ると、7業種中5業種で前年度を上回りました。このうち小売業(1,990件)は前年度比8.9%の増加となり、飲食店(784件)は過去最多を更新しました。
主因別の内訳をみると、「不況型倒産」の合計は6,723件(前年度比5.0%増)で、構成比は79.3%(同0.1ポイント減)を占めます。負債額別にみると、負債5,000万円未満の倒産は5,283件(前年度比6.7%増)となりました。
地域別にみると、9地域中7地域で前年度を上回り、その中でも関東(3,044件、前年度比5.1%増)は2009年度以来、10年ぶりに前年度を上回りました。
「人手不足倒産」は194件(前年度比14.8%増)で6年連続の前年度比増加、「後継者難倒産」は479件(前年度比14.0%増)で2年連続の前年度比増加、「返済猶予後倒産」は498件(前年度比3.8%増)で4年連続の前年度比増加となりました。
小・零細規模の企業の倒産が多かった
続いては、東京商工リサーチの調査結果です。
2019年度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が8,631件(前年度比6.4%増)、負債総額が1兆2,647億3,200万円(同21.8%減)となりました。
件数は第2四半期(7~9月期)から増加に転じ、年度では2008年度以来、11年ぶりに前年度を上回りました。ただ、1990年度以降の30年間では2016年度(8,381件)に次ぎ、5番目に低い水準にとどまっています。
負債総額は2年連続で前年度を下回りました。負債5億円以上10億円未満257件(前年度265件)、同10億円以上50億円未満161件(同173件)、同50億円以上100億円未満13件(同16件)、同100億円以上11件(同12件)と、いずれも前年度を下回っています。
一方、同1億円未満は6,490件(同6,015件)と全体の75.1%を占め、過去30年間の構成比では最も高く、小・零細規模が中心だったことを裏付けた形です。
各業種の中でも特に厳しいのは飲食店
2社のデータから、倒産件数は増えたものの、負債総額は2年連続で前年度を下回ったようです。帝国データバンクによれば、比較可能な2000年度以降で最小を更新したとのことです。
これは、大企業の倒産がなかったということが大きいでしょう。上場企業の倒産は3年ぶりに発生しませんでした。2社の調査ともに、負債トップは静岡県の「AWH(旧:淡島ホテル)」という企業で、負債総額は約400億円でした。負債1000億円超の倒産は、2014年度以来5年ぶりに発生しなかったことになります。
2020年度については、やはり、新型コロナウイルスの影響が懸念されます。帝国データバンクによると、倒産件数は3月時点で7カ月連続の前年同月比増加となっていて、リーマン・ショック以降では最長の連続増加です。
各業種の中でも特に厳しいのは飲食店です。2019年度の飲食店の倒産(784件、前年度比19.3%増)は過去最多を記録しており、上昇基調の物流費や人件費、消費税率引き上げ分を転嫁できていない企業は多いと考えられます。これに新型コロナウイルスの感染拡大の影響が追い打ちをかけているとみられ、政府や地方自治体による「サポート」が求められます。
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