新型コロナウイルスの騒動で景気は記録的な「最悪の状態」であると、経済データからも示されました。個人の景況感を調べた景気ウォッチャー調査は調査開始以来の最悪の数値となり、企業向けの調査でも「東日本大震災」後の水準まで低下しています。これらのデータを詳しく見てみます。

景気ウォッチャー調査は14.2と大幅に悪化した

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「東日本大震災以来の…」、「リーマン・ショック以来の…」、さらには「戦後初めて…」といった見出しのニュースをよく見かけますが、また1つ、「調査開始以来、初めての…」というものが出てきました。

 

内閣府が4月8日(水)に発表した「景気ウォッチャー調査」によると、3カ月前と比べた景気の実感を示す指数(季節調整値)は、前月より13.2ポイント低い14.2と大幅に悪化しました。「景気ウォッチャー調査」は、テレビのニュースなどでは「街角景気」を知ることができる指標として、おなじみのものです。

 

景気ウォッチャー調査はタクシーの運転手などの協力を得て、肌で感じる景況感を調査している。
景気ウォッチャー調査はタクシーの運転手などの協力を得て、肌で感じる景況感を調査している。

 

14.2という結果は東日本大震災直後の水準(2011年4月の23.9)や、リーマン・ショック後の水準(2008年12月の19.0)を下回り、調査開始以来の最悪の数値です。新型コロナウイルスの感染拡大で自粛ムードは日に日に強まっており、景況感が急速に悪化していることが数値として示されました。

 

【出典】内閣府
【出典】内閣府

 

2000年1月から毎月実施している景気動向調査であり、生活実感としての景況感を調査するのが狙いです。タクシーの運転手、小売店や娯楽施設のスタッフ、派遣従業員などの協力を得て、肌で感じる景況感を調査しています。

 

このデータに限らず、景況調査は50を超えると好況、50を下回ると不況と言われており、つまり、ふだんは50を超えるか否かに注目が集まります。今回は14.2という結果になり、好不況の議論どころか、経済が急速に委縮している状況がうかがえます。

企業向けの景気動向調査は6カ月連続で悪化している

「景気ウォッチャー調査」は個人に対する調査ですが、続いては企業に対するものです。

 

帝国データバンクが4月3日に発表した「TDB景気動向調査(全国)~3月調査」によると、国内景気は過去最大の下落幅になったとのことです。「東日本大震災」後の水準まで低下しています。調査対象は2万3,676社、有効回答は1万1,330社、回答率47.9%です。

 

【出典】帝国データバンク
3月の景気DIは前月比6.2ポイント減の32.5となった。
【出典】帝国データバンク

 

3月の景気DIは前月比6.2ポイント減の32.5となり、6カ月連続で悪化しました。2014年 4月(前月比4.2ポイント減)を超える過去最大の下落幅です。

 

3月の国内景気は、新型コロナウイルスの感染が世界的な広がりをみせるなか、全業種・全規模・全都道府県の景況感が大幅に悪化しています。感染拡大の防止対策として外出自粛やイベントの中止・延期、訪日客の入国・行動制限などによりヒト・モノ・カネの流れが停滞したことで、経済活動は大きく制約されました。特に旅行客の急減などを受けて「旅館・ホテル」の景況感は過去最低の水準に落ち込んでいます。

 

以上から、国内景気は後退局面のなかで新型コロナウイルスの影響が拡大したため、過去最大の下落幅を記録したと、帝国データバンクでは結論づけています。

 

【出典】帝国データバンク
【出典】帝国データバンク

 

今後の国内景気についてですが、やはり、新型コロナウイルスの広がりや終息が景気の先行きを左右するとみられます。このほか、海外における社会・経済活動の停滞、2021年への東京オリンピック・パラリンピックの延期などもあり、不確実性は高まっていると言えます。

 

政府の補正予算や 5G(第5世代移動通信システム)の本格化、生産の国内回帰などは好材料と言えますが、国内の混乱が沈静化しても、海外では不確実性が高まっているため、帝国データバンクでは、後退が続くとの見方を示しています。

 

先に示した景気ウォッチャー調査でも、数値がずっと50を下回り、2019年は景気後退局面とみられていました。そこで起きた新型コロナウイルスの騒動であり、景気をさらに下押しするのは避けられそうにありません。

 

いずれの統計データも、しばらくは底ばいが続く可能性があります。いつ上向いてくるのか、注意深く見守る必要があるでしょう。

 

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