米国株は大幅高でも、日本株は不安定な値動き
4月9日(木)の東京株式市場では、日経平均株価は方向感に乏しい値動きとなっています。前日も大幅安と大幅高を行ったり来たりして、大引けにかけては上げ幅を拡大するという「気迷い相場」の様相でしたが、引き続き不安定な相場と言えます。
8日(水)の米国株式市場では、11月の大統領選挙に向けた民主党候補の指名争いで、バイデン前副大統領が党候補の指名獲得を確実にしたと報じられたことから、NYダウは前日比3.44%の大幅な上昇となりました。一騎打ちの様相であったサンダース上院議員が8日、選挙戦からの撤退を表明したことが好感されたのです。サンダースの政策は極端に左派寄りであり、市場関係者から敬遠されていました。
ただ、あくまでも米国内の政治の話であって、日本株には材料にしにくい話です。これでバイデン氏が次期大統領確実となれば話は別ですが、現職のトランプ大統領になるのか、バイデン氏になるのか、わかりません。これでは、米国以外のマーケットでは織り込みにくいです。
政府と7都府県の知事の足並みがそろっていない
政府による「緊急事態宣言」で目先のイベントを無難に通過したという安ど感はあるものの、その後、政府と対象の7都府県の知事の足並みがそろっていないと報じられていることが、新たな懸念材料と指摘する向きもあります。
8日(水)夜の複数の報道によれば、企業への自粛要請と補償はセットという考えは一致しているようです。しかし、財政が豊かな東京都と、そうではない千葉県など他の府県とでは、スタンスが違うようです。
例えば、東京都は「濃厚接触」のリスクが高いとする理・美容業や、販売しているものが生活必需品ではないとしてホームセンターに自粛を要請したい考えです。これには、補償も行うとして予算化する意向を固めているようです。
しかし、他の自治体はそのような余裕がないため、自粛を要請する範囲を広げることには難色を示しています。政府では「理・美容業は相応の対策を行えば、感染リスクは低い」、「ホームセンターは生活必需品を売っている」として、東京都の案に実質的に反対しているもようです。
時間をかけて話し合えばよいというものではなく、今週中には決めて、10日(金)には公表する予定のようですが、着地点がみえないとして、新たな懸念材料として浮上しているようです。
ドラッグストアの好業績が期待されているが…
9日(木)から10日(金)にかけて2月期企業の決算発表はピークを迎えますが、マーケットで話題になっている銘柄が、愛知県を基盤にドラッグストア「スギ薬局」を展開する、スギホールディングスです。
5大都市圏を中心にドラッグストアを展開する企業には特に、かなりの追い風が吹いていると言われています。実際、足もとの同社の月次データは極めて良好です。マスク、除菌用品、トイレットペーパーなどが売れています。
好業績への思惑で、株価は3月13日(金)の安値4,760円から、4月7日(火)の取引時間中には5,950円まで25%も上昇しましたが、節目の6,000円を目前に伸び悩んでいます。7日に「2020年2月期営業利益は前期比16%増の300億円前後となり、従来予想の280億円から上振れたもよう」との観測報道がありましたが、良いことは事前に誰でもわかっていました。
投資家の目線は新たに始まった2021年2月期の計画を、会社側がどのように出してくるのかでしたが、発表された決算では「2021年2月期の連結業績予想につきましては、新型肺炎による影響を現段階において合理的に算定することが困難なことから未定としております」でした。
配当予想は開示されましたが、2020年2月期の実績80円に対し、2021年2月期も80円とされ、据え置きです。「たぶん、2021年2月期も好業績だろう」とか、「増配もあるだろう」という期待は多くの投資家の心の中にあると思われますが、これでは自信を持って、株を買い進めるにはためらいます。
百貨店、旅行業、製造業といったところは業績悪化が十分すぎるほど織り込まれ、当面は浮上が見込めないというコンセンサスができあがっています。ならば、ドラッグストアのように好業績が見込めるところが日本経済や、日本株を引っ張っていってほしいというのが、多くの市場関係者の思いでしょう。
2月期企業、3月期企業と決算発表は続きますが、「業績予想の非開示リスク」には留意すべきです。
このほか、決算発表を延期するところも出てくるかもしれません。市場関係者の関心が新型コロナウイルスの感染拡大から、「緊急事態宣言」を経て企業業績に移っていますが、消化不良的なモヤモヤ感は否めません。
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