米ドル円の値動きが落ち着いてきた
為替市場において、ユーロ米ドルの値動きに注目が集まっているようです。
日本のFX(外国為替証拠金取引)トレーダーは、2月から3月にかけて、米ドル円の取引をする人が増えたようです。もともと、テレビの経済ニュースなどで米ドル円の値動きはよく伝えられており、なじみがあります。
ただ、値動きが乏しいというのが取引するにあたって難点でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を材料にこの1~2カ月間は激しく上下に振れました。中長期スパンでの保有が基本の株式投資とは違って、為替のトレーダーは短期(超短期)スパンで買ったり、売ったりを繰り返す人が大半です。下方向であれ、上方向であれ、動きがあればよいのです。
しかし、3月下旬あたりから値動きが落ち着いてきました。現在は107円~109円のレンジで上下に振れているようですが、徐々に108円台あたりに値動きが収れんし、落ち着くとみられています。
それでも金利が高ければ(あれば)しばらくホールドという選択肢もないわけではありませんが、米ドルにも、日本円にも金利がつきません。値動きがなくなれば、米ドル円は魅力が一気に薄れます。
この点で、ユーロ米ドルも金利の点では変わりはありませんが、値動きはあるため、短期や超短期のトレーダーに人気化しているとのことです。
月足のレジスタンスラインに上値を抑えられている
タイムリーな話題として、4月8日(水)15時ごろ、ユーロが対主要通貨で急落する場面がありました。
「EU財務相らが新型コロナ対策で合意に至らず」とのニュースが流れ、一気に売られたとみられます。15時前に1.0880ドル台で推移していましたが、この報道が伝わると、1.0838ドルまで急落しました。
足もとで、多くの市場関係者が新型コロナウイルス関連の(金融や財政政策の)話題に敏感になっているとうかがえる出来事です。
EU内の会合や、ECB(欧州中央銀行)の理事会は、どうも「全会一致」で合意となるケースが多いです。逆に言えば、1~2カ国でも納得しないところがあれば、合意に至らずということが多いと、アナリストやエコノミストからしばしば耳にします。
かつて、EU加盟国が少ない頃は合意に至ることが多かったり、そのために要する時間も少なくて済んでいた印象がありますが、加盟国が増え、東ヨーロッパの国々も加盟するようになって、そうではなくなった感じがします。
かつて、大国のドイツやフランス、イタリアが合意しても、小国のキプロスが反対したため、合意できなかったということもありました。
ユーロ米ドルをテクニカル的にみますと、2008年7月につけた史上最高値1.6ドル台を頂点に、長期の下落トレンドの中にあると読み取れます。それぞれの戻り高値を結ぶと1本のレジスタンスライン(上値抵抗線)を引くことができます。
3月に新型コロナウイルスの騒動で米ドル売りが強まり、ユーロ米ドルが急伸する場面がありましたが、それでも、このレジスタンスラインを上抜けることはできませんでした。したがって、かなり強い抵抗線と考えられます。
ただ、未来永劫ずっと下がる続けるということはなく、どこかで反発すると思われます。
そこで下値をみると、2015年以降に3回ほど安値をつけて、それからリバウンドに転じていることが読み取れます。1.5ドル台が2回、1.3ドル台が1回ですが、このうち1.3ドル台をオーバーシュート(相場の行き過ぎ)とみれば、おおむね1.5ドルあたりがサポートライン(下値支持線)なのかもしれません。
レジスタンスラインに徐々に上値を抑えられ、一方でサポートラインによって下値も固まってきている状況ですが、この2本のラインの形状から、「三角持ち合い」と言います。いずれは上下どちらかに放れて、その際は大きく動くというのが「投資の教科書」の説明ですが、その時が近づいてきている感があります。
月足チャートでの「三角持ち合い」であって、どちらかに放れるのは2~3年後になるかもしれませんが、今年である可能性もあります。
新型コロナウイルスは感染拡大が続くのか、鎮静化に向かうのか、現時点ではわかりませんが、この新型コロナ関連のニュースを機に、ユーロ米ドルは上下どちらかに動意づく可能性もありそうです。
どちらになるかは判断がつきませんが、10年以上も下落トレンドが続いているということを考慮すると、過去の経験則から、上方向に動意づく公算が大きいように思います。
それはつまり、ユーロ買いか米ドル売りになりますが、後者でしょう。仮にアメリカで新型コロナの感染拡大が止まらなければ、素直に米ドル売りと思われます。また、世界的な感染拡大で「有事のドル買い」が進んだことから、新型コロナの騒動が一服すれば「有事のドル買い」の反対となり、やはり、米ドル売りとなりそうです。
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