居酒屋業態やインバウンドを取り込んでいた業態が苦戦
新型コロナウイルスの感染拡大で、外食産業の事業環境に変化がみられます。
帝国データバンクではこのほど、外食事業を展開している上場企業(または上場グループ中核企業)のうち、ホームページなどで月次売上高をリリースしている66社について、2月分の既存店実績と全店実績を集計し、レポートを公表しています。
集計対象66社のうち、2月分の既存店実績が前年同月を上回ったのは 31社(同47.0%)となり、一方で下回ったのは35社(構成比53.0%)と過半数を超えました。全店実績では、前年同月を上回ったのは45社(同68.2%)、下回ったのは 21社(同31.8%)となりました[図表1]。
帝国データバンクでは、同じ外食事業のなかでも、居酒屋業態やインバウンドを取り込んでいた業態が苦戦する一方、ファミリー層向けやテイクアウトが可能な業態は、前年同月の実績を上回る傾向があるようだと分析しています[図表2]。
なお、今年の2月はうるう年で前年よりも営業日数が1日多かったほか、天皇誕生日や日取りの関係で前年よりも土日祝日の合計日数が2日多かったため、前年同月よりも高めの数値が出ています。それでも、35社は既存店が前年同月を下回っており、新型コロナウイルスの影響は大きかったといえるでしょう。
3月以降は月次データが悪化する企業が増える可能性
このように、2月は意外にも既存店ベースで47.0%が前年実績を上回っていますが、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が本格化したのは3月に入ってからです。つまり、3月分や4月分のデータは、前年同月の実績を下回る企業がさらに増加することが予想されます。
一段と厳しい状況に追い込まれそうなのは、やはり居酒屋業態でしょう。夜間に外食する人が少なくなっており、新宿や渋谷のような繁華街では、目に見えて夜の時間帯に人通りが減っています。
居酒屋チェーンの中には、運営する店舗を臨時に休業するところも出てきました。鳥貴族と串カツ田中は4月2日、新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛要請などを受け、直営店全店を4日から12日まで臨時休業すると発表しています。
また、東京都の小池百合子知事は3月30日、「接客を伴う飲食の場で感染を疑う事例が多発している。ナイトクラブやバーなどへの入店を当面、控えてほしい」と発言しました。複数の報道では、歌舞伎町で働く人に感染者が増えているとのことです。歌舞伎町だけでなく、銀座や六本木のナイトクラブやバーでは、やはり臨時に休業するところが増えています。
もともと、昨年秋の消費税増税時に「テイクアウトは8%(軽減税率適用)、イートインは10%(軽減税率不適用)」とされ、店内飲食を主力とする企業には逆風が吹いていました。それが新型コロナの影響で、逆風が暴風となっている印象です。
反対に、テイクアウトや宅配を展開するところは追い風となっています。「Uber Eats(ウーバーイーツ)」と書かれた黒いバッグ(リュック)の配達員を、東京都内では至る所で見かけます。その数は日に日に増えている印象です。こちらはむしろ、新型コロナによる騒動が大きくなるほど、業績を伸ばすと予測されます。
飲食を営む会社の中で、二極化はさらに進みそうです。
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