新型コロナウイルスの感染拡大が米国内で問題になってから初めての米国雇用統計が4月3日(金)に発表となります。前回発表のものでは影響は数値として出ていませんでしたが、今回から顕在化してくるとみられ、警戒感が強まっています。ポイントを整理します。

新型コロナウイルスの影響がどの程度なのかが焦点

FX(外国為替証拠金取引)をやられている方ならばおなじみと思いますが、為替相場における毎月恒例の一大イベントが、米国の雇用統計です。基本的に、毎月第1金曜日に発表されます。夏時間、冬時間で発表時間は違いますが、4月3日(金)は日本時間で21時30分です。

 

これまでも、米国雇用統計を機に相場のムードが一変したことは何度もありました。また、弱気相場が超・弱気相場になったり、その逆に強気相場が超・強気相場へと加速することもありました。為替のトレーダーのみならず、株式市場や債券市場といったマーケットでも、すべての金融関係者が注目する経済統計です。

 

米国雇用統計はすべての金融関係者が注目する一大イベントともいえる。
米国雇用統計はすべての金融関係者が注目する一大イベントともいえる。

 

今回は言うまでもなく、感染が拡大している新型コロナウイルスの影響がどの程度なのかが焦点です。

 

雇用統計の調査対象期間は毎月12日が含まれる週の調査となっており、直近の感染拡大の状況はまだ反映されていないとみられます。そのため、世界中のアナリスト、エコノミストの予想にかなり幅がある点が波乱要因です。

 

3月の非農業部門就業者数が減少となれば、2009年10月以来となる。
3月の非農業部門就業者数が減少となれば、2009年10月以来となる。

 

日本の雇用統計は、テレビのニュースなどでは失業率に注目が集まりますが、米国では少し異なります。もちろん、失業率も大事なのですが、いちばん注目されるのは非農業部門就業者数です。

 

4月3日に発表される3月分は、非農業部門就業者数は10.0万人の減少との市場予想が出ています。2009年10月以来となる就業者の減少となる見通しです。

 

普段であれば、市場予想を上回れば米ドル買い、下回れば米ドル売りとなりやすいのですが、先ほどご説明したように、アナリストやエコノミストの予想が強弱マチマチで一定していません。その中央値ということで10.0万人の減少となっていますが、トレーダーの感覚としては、もっと下(悪い)の数値ではないでしょうか。

米ドル円は当面上値の重い展開が続く見通し

参考になりそうなのが、毎週木曜日に公表されている(前週の)新規失業保険申請件数というデータです。普段はあまり注目されないのですが、相場急変時には注目度が増します。

 

3月26日発表分では、申請件数は328.3万件とリーマン・ショック後を上回る過去最大の急増となりました。今後も全米で人やモノの移動制限の長期化が見込まれており、さらなる失業保険申請件数の増加が予想されます。

 

米ドル円・月足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
米ドル円・月足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

前月の米国雇用統計が発表された後の相場を振り返ってみますと、2月分では就業者数が市場予想を上振れたほか、1月分、さらには12月分と直近のものが上方修正され、堅調な雇用環境が示されました。しかし、新型コロナウイルスの問題がまったく織り込まれていないとして、株式市場や債券市場など、多くのマーケットでは材料視されませんでした。

 

今回、仮に市場予想を上回る数値が出るとしても、新型コロナの件がほとんど反映されていないと判断するトレーダーが多ければ、米ドル売りが強まる可能性があります。これには、次回の5月発表のもの(4月分)に新型コロナの影響が一気に反映され、数値がかなり悪化するだろうという思惑(警戒)が背景にあります。

 

また、市場予想を下回る数値が出る場合、それは素直に米ドル売りに反応しそうです。

 

いずれにせよ、3月中旬あたりから、雇い止め、レイオフ(一時解雇)、自宅待機といった影響が表面化しており、非農業部門就業者数は当面、マイナスの状況が続きそうです。米ドルは対主要通貨に対して、上値の重い展開が続くと考えられます。
 

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