東京株式市場は不安定な値動きが続いていますが、この背景には、政府による『緊急事態宣言』があるのか、警戒感が強まっているという指摘があります。そして、もし宣言が出されるとして、相場がどう動くのか読み切れないということもありそうです。今回は仮に宣言が出されるとして、日本株が下方向、上方向に動く、それぞれの場合のシナリオを考えてみます。

『緊急事態宣言』で日本株は底なし沼的に下落する!?

「『緊急事態宣言』が出たら、日本株は大きく下げますか?」

 

これが4月~5月の日本の株式市場における最大関心事でしょう。WEBのニュース、ブログや、最近は証券会社のレポートなどでも、宣言でマーケットがどう動くのかについて、考察が見受けられます。

 

もちろん、実際に宣言が出されて、相場が動いてみなければわからないというのが模範解答ですが、それでは今後の投資戦略を立てる上で、感心しません。そこで今回は、下方向、上方向の両方のシナリオを考えていきます。

 

■「緊急事態宣言で経済活動が完全に止まる」の恐怖

 

感覚として、ネガティブなニュースが出たら、株価は下がると思われる方が多いのではないでしょうか。『緊急事態宣言』で国内の経済活動が完全に止まってしまい、警察官や病院関係者など認められた人以外は外出することができず、それでは企業業績が悪化し、バタバタとつぶれていく…というイメージを持たれるかもしれません。

 

『緊急事態宣言』が出て日本株は急落すると予想するアナリストも、下がらないとみる市場関係者もいる。
『緊急事態宣言』が出て日本株は急落すると予想するアナリストも、下がらないとみる市場関係者もいる。

 

これは、1月から2月にかけて、テレビのニュースや情報番組で繰り返し何度も見させられた、中国・武漢市の状況がアタマにインプットされているためと思われます。人口1,000万人の都市が封鎖され、大通りを自動車が走っていないどころか、人も歩いていないという状況は、かなりのインパクトがありました。

 

武漢ほどではなくても、その後にフランスやアメリカでも似たような状況になっているというニュースが伝えられており、「ついに東京もあのようになるのか…」という恐怖心があるのだと考えられます。

 

「そうなれば、日本の株式市場はさらに混乱するかもしれない…」と思うのは、自然なことでしょう。日経平均株価は3月19日に16,358.19円まで暴落し、それから値を戻していますが、安値更新どころか、底なし沼的に下落すると予想するアナリストもいるようです。

『緊急事態宣言』で「悪材料出つくし」となるか?

ただ、金融マーケットの複雑なところは「織り込み済み」、「想定の範囲内」、「材料出つくし」という言葉があるところです。

 

記憶に新しいところでは、2008年9月に起きた「リーマン・ショック」です。それから1年ほどの間、金融マーケットは混乱しました。その混乱はもともと経営状態が芳しくなかった大手企業の経営問題にも波及しました。

 

混乱する中においては、経営不安がウワサされる自動車大手のGM(ゼネラル・モーターズ)が破たんすれば、いよいよアメリカの経済は大変なことになるとささやかれていました。

 

そして、GMは実際に破たんしたのですが、数年経って、これが相場の転機になったとの解説は多く聞かれます。金(ゴールド)相場の上昇が一服し、投資家の恐怖心が薄れていき、遅れて、リスク資産への資金の移動が始まりました。米国株なども底を打ち、上昇に転じています。

 

つまり、投資家心理が過度に悪化している状況では、ネガティブな材料がマーケットに過度に織り込まれている場合が多いです。

 

今回の「コロナショック」では、日本の場合は政府の『緊急事態宣言』が出るか否かが最も注目されています。もし宣言が出ると、考えられる悪材料がほぼ出つくすため、日本株も「悪材料出つくし」でリバウンドするというのが、ブル(強気)派のシナリオです。

 

意外にも、このシナリオを支持する金融関係者は多く、テレビにもよく出てくるアナリストの中には「二番底はない」と断言する人もいるようです。

日経平均株価16,358.19円という「砦」を守れるか

4月1日に行われた参議院決算委員会で、安倍首相が新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」について、現時点で出す状況ではないとしたうえで、宣言が出されたとしても、フランスのような都市の封鎖はできないという認識を示したことが話題になっています。

 

また、首相は「これがただちにロックダウン(都市封鎖)ということでもなく、フランスのようなロックダウンができるのかといえば、できない。そこには誤解がある。さまざまな要請はすることになるかもしれないが、フランスなどで行っているものとは、やや性格は違うものだ」と述べています。

 

このことから、宣言が出されても、特に経済活動が制限されるワケではなく、「より一層気をつけましょう」というものに過ぎないといった見方をする識者も出てきました。

 

そうであれば、日経平均株価は3月19日につけた16,358.19円が最安値ということになりそうです。おそらく、この4月~5月に公表される3月期決算企業の2020年度業績見通しは、かなり慎重なものになると予想されます。発射台が低いということは、下方修正リスクよりも、上方修正の期待の方が高くなります。

 

目先では、まだまだ何らかの材料によって株価の下押し圧力が強まることもあるかもしれません。それでも日経平均株価16,358.19円という「砦」を守れれば、株価リバウンドの期待が高まりそうです。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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