年間約130万人の方が亡くなり、このうち相続税の課税対象になるのは1/10といわれています。しかし課税対象であろうが、なかろうが、1年で130万通りの相続が発生し、多くのトラブルが生じています。当事者にならないためには、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、2人の姉と弟、そして弟の嫁を巻き込んだトラブルを、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

株式を譲らない2人の姉に仕掛けた、長男の嫁の奇策

医者からの宣告を受けて、ショックだったのと同時に、非常に面倒くさいことになったと思ったそうです。Aさんの父が亡くなったとき、遺産は姉弟で三等分するようと記された遺言書がありました。それに基づき遺産分割を進めていきましたが、懸念となったのが、Aさんの会社の株式でした。遺言書通りに分けてしまうと、株式が分散してしまい、経営に支障が出る場合がある――そう考えて、株式は母かAさん自身に集約するよう姉にお願いしましたが……ダメだったそうです。

 

 

「あんたの会社に口出しすることはないから安心して。でもこれ(=会社の株式)もお父さんが遺してくれた大切な財産だから、きちんと分けてもらうわ」とふたりの姉。実際に、姉たちがAさんの会社に口出しすることはまったくありませんでした。しかし株式が分散している状況は望ましくなく、また今後トラブルにならないとも言い切れません。自分が生きているうちにAさん自身のところに集約したいと考えたのです。

 

そこでAさんは2人の姉に、がんを患い先が長くないこと、そしていまのうちに株式をAさん自身に譲渡してほしいことを伝えました。すると姉たちは「別にいいわよ。で、譲渡金はいくら?」と言ってきました。然るべき計算をすると、会社の現状ではとても払うことのできない金額になります。そのことも含めて姉たちに伝えたところ「そんな安い金額で応じられるわけないじゃない!」と言い、埒があきません。

 

「弟の死が迫っているのに、あんなことを言うとは……」と落胆したAさん。交渉の途中でしたが体調を崩し、そのまま入院をすることになってしまいました。

 

入院をしたAさんは、がんの影響もあるのでしょう、みるみるうちに痩せていきました。しかし口にするのは、会社のことばかり。祖父、そして父から継いだ大切な会社。きちんとしたカタチで子どもたちに承継していきたい――。その思いに立ち上がったのが、Aさんの奥さんでした。そして2人の姉をAさんが入院する病院に呼び出したのです。

 

三人が面会したのは、入院患者と面会をする談話室。

 

Aさんの妻「今日はすみません、わざわざご足労いただいて」

 

長女・次女「いいのよ。お見舞いにこないと、と思っていたから。で、Aの具合はどうなの?」

 

Aさんの妻「食べるのが辛いらしく、入院して10キロぐらい痩せてしまって……」

 

長女「そんなに……」

 

次女「で、いまAは?」

 

Aさんの妻「病室で寝ています。先生が言うには、1ヵ月くらいが山場だと……」

 

長女・次女「……(絶句)」

 

Aさんの妻「そのような状況なので、Aに代わってお願いなのですが、会社の株式を100万円で譲渡していただけないでしょうか?」

 

Aさんの妻に対して、2人の姉は「Aが大変なのはわかるけど、その金額じゃあ……」と、首を縦にふろうとしません。そのとき、Aさんの妻は驚きの行動に出ました。談話室には多くの方がいます。そのなかで2人の姉に対して土下座をして訴えたのです。

 

Aさんの妻「お願いです! 株式をお譲りください。夫には時間がないんです!」

 

長女・次女「ちょ、ちょ、やめてよ土下座なんて!」

 

涙声で土下座をしながら訴え続けるAさんの妻。談話室にいた人たちは「何事か」と、3人に注目。最終的に2人の姉は、Aさんの妻の要求に応じたそうです。

 

「夫の苦しみに比べたら、土下座なんてへっちゃらですよ。何年、夫と一緒に会社を切り盛りしてきたと思っているんですか」と、Aさんの妻。Aさんも「これで何の心配もない」と安堵の表情をみせていました。

 

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