新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米ドル円は歴史的な値動きをみせました。1か月ほどで上下10円の値幅を伴って振れましたが、4月相場はどうなるのでしょうか。また、目先で注目のイベントとして、どのようなものがあるのでしょうか。

米ドル円は上下10円の値幅で上下に振れた

為替市場では2月中旬以降、米ドル円が上下10円の値幅で上下に振れましたが、ここにきて落ち着きを見せている印象です。

 

値動きをザっと振り返ると、2月20日には112.22円の高値をつけていましたが、「中国以外では広がりそうにない」と楽観視されていた新型コロナウイルスの感染者がアジアやヨーロッパなどに広がりを見せると、3月9日の安値101.18円まで一本調子で暴落しました。

 

この下落の間にはFRB(連邦準備制度理事会)をはじめ、各国・地域の中央銀行による利下げ・追加緩和が決まりましたが、金融政策では株安は止められないとの見方が広がったため、原油や金(ゴールド)といったコモディティも含めて、金融マーケット全体が混乱しました。

 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、金融マーケット全体が混乱した。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、金融マーケット全体が混乱した。

 

いろいろ理由はあるのでしょうが、いわゆる「リスク回避の円高」で米ドル円が急落したとの解説が無難でしょうか。しかし、新型コロナの混乱が一段と悪化すると、今度は一転して「有事のドル買い」となって米ドルが対主要通貨で上昇し、米ドル円も3月24日には111.71円まで値を戻しました。

 

このように、米ドル円は1カ月ほどの間に10円以上の下落となった後、今度は10円程度の上昇という、歴史的な値動きをたどりました。

 

一口に米ドル円が下落していると言っても(1)米ドルが売られている、(2)円が買われている、(3)その両方、のいずれかになります。この点で今回、米ドル円の下落時は「円が買われている」の要因が大きかったように思います。一方、米ドル円の上昇時は「米ドルが買われている」の要因がけん引したと考えられます。

米ドル円の上昇モメンタムは一服した感がある

足もとでは、米ドル円の上昇モメンタムは一服した感があります。112円台回復に失敗したことを嫌気した売りもあって、足もとでは107円台まで下落してきました。この背景として「有事のドル買い」は一巡したとの報道もあります。

 

リスク回避の度合いが極度に高まり、株安や原油安が進行する中で、米ドル資金を確保しようという動きが広がりました。金融商品を売って、現金化するということです。その資金移動が一巡したことで、ひと頃のような米ドルがマーケットで不足している状況が解消し、米ドルは対円でも下落に転じたとみられます。

 

米ドル円・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
米ドル円・日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

それでは、米ドル円はこのまま下落が続くのでしょうか。それとも、リバウンドに転じて再び112円台をトライするのでしょうか。

 

ここ数日は、108円ちょうどのレベルで値動きが止まっています。各国が打ち出す景気テコ入れ策の動向を見極めたいとか、日本の年度替わりに伴う資金移動が交錯しているとか、いろいろと解説が聞かれます。

 

それよりも、新型コロナの感染者拡大も、各国の財政政策もひとまず織り込まれて、次の材料待ちというのが今の状況ではないでしょうか。

値動きが出てくるのは5月に入ってからか

1カ月にわたって上下に大きく振幅しましたが、「一度立ち止まって、状況をしっかり把握しよう」というタイミングだと思われます。

 

パニック的に売りまくって、今度は反対方向へとポジションを傾けて、その高値と安値の真ん中のあたりの水準まできて、冷静さを取り戻そうとしている頃合いなのだと考えられます。

 

ポジティブ派の方からすれば、「コロナ後」をそろそろ考えるべきといった論調でしょう。アメリカのトランプ大統領が代表格で、「イースター明けの4月12日に多くの米国人が復帰できる」というシナリオこそ撤回したものの、3月30日には「これまでの新型コロナウイルスのガイドラインの期限を4月30日まで延期する」として、5月から回復していくという見立てを示しています。

 

ネガティブ派の方からすれば、アジアからヨーロッパ、そして世界に拡大した新型コロナの被害が、アメリカでさらに猛威を振るうというものでしょう。

 

米ドル円・60分足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
米ドル円・60分足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

この点で、4月になって発表が相次ぐ米国の経済指標に注目です。悪いであろうというコンセンサスは一致しているものの、どの程度悪いのかは見方が割れそうです。

 

4月2日(木)の貿易収支、3日(金)の雇用統計あたりで「思っているよりも悪い」のか、「思っているほど悪くはない」のか、なんとなくでも見えてきそうです。投資家は先行き不透明感を最も嫌がります。したがって、良いでも、悪いでも、アメリカの「いま」が見えてくればよいのです。

 

それでも、本格的に値動きが出てくるのは5月に入ってからかもしれません。4月は日本、アメリカ、ヨーロッパのいずれも、中央銀行の会合(日銀であれば、金融政策決定会合)が月末(28~30日)に集中しているためです。

 

新型コロナに伴う金融混乱に対応し、各中銀は臨時会合で利下げや追加緩和を決めました。その効果がどうだったのか、4月下旬の会合で議論がなされるのは間違いがありません。会合後に公表される公式アナウンスをみてから、新たなポジションを作ろうと考える投資家が大半と考えられます。

 

4月は経済指標や各国要人のコメントなどで一時的に上下に振れることはあっても、基本的には107~109円の水準で値動きが収れんすると思われます。仮にトレンドができて相場が大きく動くならば、それは下方向でしょう。まだ織り込み切れていない、新型コロナ関連のネガティブな材料が出るときです。

 

 

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