新型コロナウイルスのショックで日本株は大きく下落しましたが、特にひどい下げを見せたのはREIT(不動産投資信託)です。一時は高値から半値近くまで暴落しました。その後はリバウンドを見せていますが、まだ割安と見られます。どのような投資戦略をとればよいのでしょうか。

「コロナショック」で東証REIT指数は急落した

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「コロナショック」の相場で、必要以上に売り込まれた金融商品の1つがREIT(不動産投資信託)と考えられます。日本では「J-REIT」と呼ばれ、東京証券取引所に上場しているものは、トヨタ自動車やソニーといった事業会社の株のように取引所で売買ができます。

 

投資信託協会のホームページでは、「多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です」とされています。

 

J-REITの多くは、年に2回決算を行います。つまり、運用が順調であれば年に2回分配金を受け取ることができます。最近は、事業会社の「株主優待制度」と同様に、「投資主優待制度」を設定しているものもあります。ホテルを投資先とするJ-REITならば、宿泊施設の割引券がもらえるといったイメージです。

 

東証REIT指数は新型コロナウイルスの影響に加えて、東京五輪の延期への懸念もあり、大きく下落した。
東証REIT指数は新型コロナウイルスの影響に加えて、東京五輪の延期への懸念もあり、大きく下落した。

 

当初は金融機関や年金といった機関投資家ばかりが好んで投資している傾向がありましたが、このところは個人投資家も資金を入れているようです。マネー雑誌などでは、NISA(少額投資非課税制度)口座での保有を推奨している記事も見受けられます。

 

そのJ-REITは、今回の「コロナショック」で暴落しました。とりわけ、金融機関や年金などが好みそうな銘柄ほど、ストップ安まで売り込まれていました。

日銀のJ-REIT買い入れ枠倍増でも下げ止まらなかった

東証REIT指数の安値は3月19日で、終値では1,145ポイント、取引時間中では1,138ポイントまで下げました。この日の前日比での下落率は2割にも達し、投げ売り、見切り売りが一気に出ました。1カ月半ほど前までは2,200ポイント台で推移していたため、短期間に5割近くの水準まで暴落した格好です。

 

東証REIT指数・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
東証REIT指数・日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

REITは一般的に「利回り商品」と言われます。J-REITで言えば、日本の金利動向をにらみながら、投資口価格が上下に振れます。

 

「コロナショック」を受けて、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が実質ゼロ金利を導入したことなどにより、世界的に債券市場も大きく動きました。日本の金利も変動したため、投資家のパニック的な投げ売り、見切り売りが東証REIT指数を押し下げたものと考えられます。

 

なお、主要国の中央銀行が新型コロナウイルスによる経済や金融市場の動揺を抑えるため、協調姿勢を強化しました。日本銀行ではETF(上場投資信託)やJ-REITの買い入れ枠倍増を決定したのですが、J-REITを買い入れるため、本来はJ-REITの反発の材料になっても良さそうなのですが、それでは下げ止まりませんでした。

 

年度末の相場において、各投資主体も決算対策を行わなければならず、スパイラル的に東証REIT指数が下落する中で、損失拡大を回避するための売り(損失確定のための売り)が相次いだものとみられます。「売りが売りを呼ぶ」の展開になったと考えるべきでしょう。

経済の立ち直りで投資口価格や分配金の回復も期待可能

世界のREITと違って、東証REIT指数の下落に拍車をかけた要因として、東京オリンピック・パラリンピックが延期(もしくは、当時は中止の可能性もありました)となった場合の影響が懸念されたということもあるでしょう。

 

結果的に、中止ではなく延期となったため、小売企業や宿泊施設への追い風が1年ずれ込んだという見方もできます。「コロナショック」で確かに足もとのホテルはかなり厳しく、ホテルを組み込んだREITは特に売り込まれている印象があります。仮に、新型コロナウイルスの感染が終息したり、予防、治療の薬などが開発されれば、宿泊施設に投資するREITは大きなリバウンドが見込めそうです。

 

それ以外でも、商業施設、オフィス、住宅(レジデンス)を組み入れるREIT、いずれも下げがきつくなっています。過去には破たんするREITもありましたが、リーマン・ショックなどのこれまでの混乱時とは違って、最近はREITのM&A(合併・買収)も活発化しています。単独では運営が困難となっても、M&Aによって生き延びていくものと推測されます。

 

そうすれば、「コロナショック」から経済が立ち直るにつれ、いずれは投資口価格や分配金の回復(増加)も期待されます。

 

大手不動産、大手商社などがスポンサーとなっているREITであれば、資金繰りの心配をする必要はあまりなく、大きく下落した現在の投資口価格は、中長期視点で見れば相当割安感があると考えられます。

 

歴史的な買い場到来との見方をする投資家もいるようです。マーケット全体の先行き不透明感が晴れない中、投資資金の逃避先(退避先)としても有効でしょう。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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