ユーロ圏、大幅景気減速想定…国債購入プログラム使用も視野か

投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、マーケットレポート・ヘッドライン。日々のマーケット情報を専門家が分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

「今日のヘッドライン」20年3月23日号で指摘したように、欧州中央銀行(ECB)は7500億ユーロ(約89兆円)相当の新たな臨時の資産購入プログラム(パンデミック緊急購入プログラム、PEPP)を導入しました。財政政策の後方支援が期待されますが、ユーロ圏景気の落ち込み度合いは想定しがたいことから、さらなる選択肢も検討されている模様です。

ユーロ圏PMI:3月の総合PMIは大幅に低下、下支えとなっていたサービス業が悪化

マークイット・エコノミクスが2020年3月20日に公表した、3月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は31.4と市場予想(38.8)、前月(51.6)を大幅に下回りました。同指数は50が景気拡大・縮小の目安です。

 

内訳を見ると、製造業PMIは44.8と前月(49.2)を下回るも、市場予想(39.0)は上回りました。一方、ユーロ圏の景気を下支えしていたサービス業のPMIは3月が28.4と、市場予想(39.5)、前月(52.6)を共に大幅に下回りました。

 

月次、期間:2017年3月~2020年3月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ユーロ圏(総合、製造業、サービス業)PMIの推移 月次、期間:2017年3月~2020年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:ユーロ圏総合PMI、PEPP、OMT、コロナ債

今日のヘッドライン20年3月23日号で指摘したように、欧州中央銀行(ECB)は7500億ユーロ(約89兆円)相当の新たな臨時の資産購入プログラム(パンデミック緊急購入プログラム、PEPP)を追加しました。財政政策の後方支援が期待されますが、ユーロ圏景気の落ち込み度合いは想定しがたいことから、さらなる選択肢も検討されている模様です。

 

ユーロ圏の20年のGDP(国内総生産)成長率を予想するのは困難です。ECBが3月12日に公表したスタッフの成長率予想を見ると20年は年率0.8%と、19年12月時点の成長率予想である1.1%から下方修正されていますが、小幅にとどまっています(図表2参照)。予想作成時からの新型コロナウイルスの感染拡大が想定外であったことを物語ります。

 

四半期、時点:2019年12月(左)、2020年3月(右) 出所:ECBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ECBスタッフによるユーロ圏GDP成長率予想 四半期、時点:2019年12月(左)、2020年3月(右)
出所:ECBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

足もとのユーロ圏GDP成長率の市場予想を見ると、マイナス2%程度からマイナス10%近い予想まで、あまりに幅広いため、コンセンサスを推し量ることは困難ですが、サービス業PMIなどから判断してマイナス成長の公算は高まっています。

 

PEPPの購入規模はユーロ圏のGDP規模の6%超と見られます。ある程度の落ち込みはカバーされていますが、人の移動の制限、国境の閉鎖などが長引くようであれば成長率はさらに悪化する可能性もあります。景気刺激策として財政政策が拡大された場合の準備も検討されている模様です。

 

候補のひとつは国債購入プログラム「アウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)」です。ドラギ前ECB総裁が債務危機に際して「ユーロを守るため何でもやる」として12年に導入されました。今日のヘッドラインでは2年ほど前のイタリア債務問題でOMT使用の可能性に言及しました。ECBの他の債券購入プログラムと異なり、OMTは支援条件や財政健全化などの条件が整えば、特定の国の債券を購入する柔軟性と、ほぼ無制限の購入可能性があるからです。最も、個別国の財政ファイナンスの色合いが濃いことからドイツなどの批判も強く、過去使われたことが無い制度です。それでも、想定される経済の落ち込みから、少なくとも検討が進んでいることが報道されています。

 

別の財政支援としてユーロ圏共同債、別名コロナ債の発行が模索されています。フランス、イタリア、スペインなど欧州連合(EU)加盟9ヵ国はコロナ債発行を求めて共同書簡を公表しました。金融政策は共通ながら財政政策は国別であることが欠点といわれながら、議論が進まなかった問題です。新型コロナウイルスにより機運は高まりましたが、ドイツなど決定力のある国は慎重な姿勢です。26日からのEU首脳会議で検討される見込みで、会議の動向に注目しています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ユーロ圏、大幅景気減速想定…国債購入プログラム使用も視野か」も視野か』を参照)。

 

(2020年3月26日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

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