コロナショックで忍び寄る「信用収縮の連鎖」

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3月11日、IMF(国際通貨基金)のトビアス・エイドリアン金融資本市場局長はロイターのインタビューで、ハイイールド債やレバレッジドローンなど比較的流動性の低い資産を運用するファンドの流動性リスクについて指摘した。原油安やコロナショックで投資家が流動性の低い資産の売却を急いだ場合、ハイイールド債スプレッドがさらに拡大して信用収縮を引き起こすリスクがある。

大幅にディスカウントされた米ハイイールド地方債ETF

原油安ショックと新型コロナウイルスに対する懸念が高まった3月9日以降、流動性が低いハイイールド債ETFやレバレッジドローンETFの市場価格はベンチマーク以上に値下がりした。

 

中でも米ハイイールド地方債ETFの市場価格はNAV(基準価額)に対して3月12日時点で-19.4%と、突出して高いディスカウント率となった。大幅なディスカウント率は運用資産の流動性以上の解約が殺到した可能性が示唆される。

信用収縮の連鎖はすでに始まったか?

IMFのエイドリアン氏は現時点で広範な信用収縮は見られないとの認識を示しているが、原油安と新型コロナウイルスのパンデミック状態が長引き世界経済が低迷すれば、いずれはデフォルト(債務不履行)が増加し信用収縮を引き起こす可能性がある。

 

ブルームバーグの報道によれば、すでにホテル運営会社のHILTON WORLDWIDE やWYNN RESORTSが与信枠から資金を引き出したとされ、プライベート・エクイティ会社のBLACKSTONE GROUPやCARLYLE GROUPが傘下の関連会社に与信枠の利用を促したと報じられた。信用収縮が起こっていないからこそ与信枠を確保することが可能だったわけだが、今後クレジット・リスクが高まれば金融機関も不良債権化を警戒して与信枠を縮小させる可能性がある。また、ハイイールド債スプレッドはさらに拡大すれば、特に信用リスクの高い発行体はプライマリー・マーケット(発行市場)でも資金調達することが困難になるため、デフォルトが急増しかねない。

 

さらに、投資家も損失拡大を恐れてハイイールド債ファンドの解約を急げば、ハイイールド債スプレッドの拡大に拍車をかけ、信用収縮の連鎖が引き起こされる可能性がある。前述した米ハイイールド地方債ETFのNAVに対して市場価格が大幅にディスカウントされた状態は、来たる信用収縮の連鎖を示す予兆かもしれない。

 

金融市場のストレスを示すUSD LIBOR/OISスプレッド(3カ月)は3月11日に0.53%まで急騰した。リーマンショック当時の水準には程遠いが、金融ストレスは徐々に高まりつつある。

 

日次、期間:2009年2月5日~2020年3月12日 ※VanEck Vectors High Yield Municipal Index ETFを使用 NAV乖離率は(市場価格ーNAV)÷NAVで計算
[図表1]米ハイイールド地方債ETFのNAV乖離率 日次、期間:2009年2月5日~2020年3月12日
※VanEck Vectors High Yield Municipal Index ETFを使用
NAV乖離率は(市場価格ーNAV)÷NAVで計算
出所:Bloombergのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

日次、期間:2012年1月3日~2020年3月12日 ※USD HY All Cash Bonds Sectors OASを使用
[図表2]米ハイイールド債スプレッド 日次、期間:2012年1月3日~2020年3月12日
※USD HY All Cash Bonds Sectors OASを使用
出所:Bloombergのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

日次、期間:2007年12月31日~2020年3月11日 ※LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ) 図表1-3出所:Bloombergのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]USD LIBOR/OISスプレッド(3ヵ月) 日次、期間:2007年12月31日~2020年3月11日
※LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)
出所:Bloombergのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

 

記載された銘柄はあくまで参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『コロナショックで忍び寄る「信用収縮の連鎖」』)。

 

(2020年3月13日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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