●米国の経済対策は給与税減税などを含む見通しだが、3月10日時点で詳細の説明は行われず。
●来週のFOMCで0.5%の利下げを予想、市場の動揺が続けば4月にゼロ金利政策と量的緩和へ。
●政策対応で、感染者数のピークアウトを待つ間、株価の下げ圧力を緩和する効果は期待できよう。
米国の経済対策は給与税減税などを含む見通しだが、
3月10日時点で詳細の説明は行われず
トランプ米大統領は3月9日、新型肺炎の感染拡大を受け、大規模な経済対策を検討すると表明しました。トランプ米大統領の発言によると、経済対策には、感染予防のため在宅を余儀なくされることで収入を失う恐れのある時間給労働者への支援や、給与税減税が含まれる見通しです。また、感染拡大で打撃を受けた産業の救済や、中小企業へのローンなども検討事項とみられます。
経済対策の詳細については、3月10日の記者会見で、トランプ米大統領が説明する予定でした。しかしながら、トランプ大統領は当日姿を見せず、ペンス米副大統領が記者会見を行い、経済対策を議会に提案したことを明らかにしました。また、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長も記者会見に同席しましたが、近い将来のある時点で、詳細な内容を公表するだろうと述べるにとどまりました。
来週のFOMCで0.5%の利下げを予想、市場の動揺が続けば4月にゼロ金利政策と量的緩和へ
一方、金融政策について、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月17日、18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。FRBは3月3日の臨時FOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年1.50%~1.75%から年1.00%~1.25%に引き下げたばかりですが、直近のFF金利先物市場では、さらに0.75%の追加利下げが織り込まれている状況です(図表1)。
緊急利下げでも米国株式市場の不安定な動きが続いていることから(図表2)、弊社は3月17日、18日のFOMCで、0.5%の利下げが決定されると予想しています。また、信用緩和という名目で、量的緩和の導入を示唆することも想定しています。また、4月以降も金融市場の動揺が続いた場合、FRBは4月28日、29日のFOMCで、0.5%の追加利下げでゼロ金利政策に踏み切り、同時に量的緩和を実施するとみています。
政策対応で、感染者数のピークアウトを待つ間、株価の下げ圧力を緩和する効果は期待できよう
経済対策は、議会における与野党の承認が必要ですが、民主党は給与減税には慎重です。そのため、経済対策は最終的に、感染拡大の影響を受けた家計や企業への支援に的を絞った内容になる可能性が高いと思われます。また、FRBが強力な量的緩和を実施するため、社債やETFも買い入れの対象に含めるとした場合、連邦準備法改正のための議会承認が求められます。
以上より、経済対策の詳細が明らかになるまでにはやや時間を要する見通しで、また、本格的な量的緩和も準備の期間が必要となります。経済対策や金融緩和は、当然ながら新型肺炎を撃退することはできませんが、経済への悪影響を和らげることは可能です。政策対応により、感染者数の世界的なピークアウトを待つ間、株価の下げ圧力をいくらか緩和する効果は期待できると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナで不安定感増す米国市場…経済対策の効果は?』を参照)。
(2020年3月11日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト