2020年1月分鉱工業生産指数・速報値について

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

1月分生産指数前月比+0.8%と2ヵ月連続プラス。現状に注目し経産省は基調判断を上方修正

 

製造工業予測指数からみると1~3月期前期比増加の可能性あるが、新型コロナがどこまで下押すか

 

厚生労働省の求人票記載内容拡充が阻む、1月分景気動向指数・一致CIの前月差上昇

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・1月分速報値・前月比は+0.8%と2ヵ月連続の増加になった。15年を100とした季節調整値の水準は99.6と、19年9月分(103.2)以来の指数水準になった。また、前年同月比は▲2.5%と4ヵ月連続の減少になった。

 

●1月分鉱工業生産指数では、自動車工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、その他工業等の8業種が前月比増加した。生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、電気・情報通信機械工業等の7業種が前月比減少となった。

 

●経済産業省は基調判断を8月分・9月分の「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から、10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正し、11月分・12月分でも判断を据え置いていたが、20年1月分では「総じてみれば、生産は一進一退ながら弱含んでいる」と足元の2ヵ月連続前月比増加の動きを反映し、上方修正したという。

 

●鉱工業生産指数の1月分製造工業予測指数・前月比は+3.5%の増加であった。また、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値である先行き試算値でみると、1月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.5%の増加にとどまる見込みであった。90%の確率に収まる範囲は▲0.6%~+1.5%になっていた。+0.8%という実績はやや上限の方に近い伸び率である。

 

●1月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+0.2%で2ヵ月連続の増加となった。前年同月比は▲3.7%で4ヵ月連続の減少となった。

 

●1月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+1.5%の増加になった。2ヵ月連続の増加である。前年同月比は+3.8%と15ヵ月連続の増加となった。

 

●1月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲1.5%で4ヵ月ぶりに前月比下降となった。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年4~6月期は出荷の前年同期比が▲2.7%、在庫が同+3.0%、19年7~9月期では出荷の前年同期比が▲0.1%、在庫が同+0.9%、19年10~12月期では出荷の前年同期比が▲0.1%、在庫が同+0.9%であった。20年1月は出荷の前年同月比が▲3.7%、在庫が同+3.8%と、「在庫積み上がり局面」の状態にある。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると2月分は前月比+5.3%の増加、3月分は前月比▲6.9%の減少の見込みである。3月分で前月比増加を見込むのは、パルプ・紙・紙加工品工業1業種である。パルプ・紙・紙加工品工業の製造工業予測指数は2月分は前月比+0.6%、3月分は前月比+1.1%と比較的低めの伸び率にとどまっている。

 

●過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、2月分の前月比は先行き試算値最頻値で+2.0%の増加になる見込みになる。90%の確率に収まる範囲は+1.0%~+3.0%になっている。

 

●製造工業予測指数の調査時点は2月10日なので、新型コロナウイルスの感染懸念が現時点ほど深刻化していない状況であった。このため、経済産業省の基調判断は表面的な数字よりも慎重なものになっている感じがする。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、2月分は先行き試算値最頻値前月比(+3.0%)、3月分を前月比(▲6.9%:製造工業予測指数)で延長すると、1~3月期の前期比は+0.3%の増加になる。

 

●また、2月分を製造工業予測指数前月比(+5.3%)、3月分を前月比(▲6.9%:製造工業予測指数)で延長すると、1~3月期の前期比は+2.5%の増加になる。両者の試算値から見て、生産の持ち直し基調が年末頃から出ていて、1~3月期の前期比は増加に転じてもおかしくなかった局面と言えそうだ。新型コロナウイルスの影響がどう出るかを、予断を持つことなく見守るしかない局面であろう。

 

(1月分景気動向指数、一致CIによる基調判断は「悪化」継続)

 

●1月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.4程度の下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、マネーストックの4系列が前月差上昇寄与に、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差下降寄与になると予測した。なかでも新規求人数は1月から求人票の記載項目が拡充され、一部に求人の提出を12月先送りしたり、1月での提出を見送る動きがあったようで、前月差▲0.81程度と大幅に下降方向に寄与しそうだ。

 

●1月分の一致CIは前月差0.0程度とギリギリで4ヵ月ぶりの上昇にとどかないと予測する。速報値からデータが利用可能な7系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業と生産・消費関連中心に5系列が前月差上昇寄与になるものの、投資財出荷指数と有効求人倍率の2系列が前月差下降寄与になると予測した。厚生労働省の求人票に対する対応により、有効求人倍率は前月差▲0.72程度と大幅に下降方向に寄与しそうだ。

 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分・10月分・11月分・12月分に続き、1月分も「悪化」継続になると予測する。

 

●1月分の先行DIは33.3%程度と景気判断の分岐点の50%を2ヵ月ぶりに下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の3系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になると予測した。

 

●1月分の一致DIは57.1%程度と景気判断の分岐点の50%を4ヵ月ぶりに上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の4系列がプラス符号に、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率の3系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年1月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

2020年2月28日

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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