「何から始めようか?」と部下に質問する上司が優秀であるワケ

行動と目標がなかなか結びつかない部下。自発的に行動してもらうために、上司がするべき質問とは、どのようなものなのでしょうか。今回は、元インテル株式会社(日本法人)執行役員・板越正彦氏の書籍『部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言』(かんき出版)より一部を抜粋し、「部下を自発的に行動させる質問」について解説します。

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なかなか自発的に行動に移せない部下、田中君

【本記事のモデルケース】上司が手を焼く部下:田中君

入社3年目、20代後半の営業マン(法人営業)。仕事をキッチリこなし、上司の指示もきちんと聞く、どこの職場にもいるマジメなタイプ。ただ、与えられた以上の仕事を、自分で考えて行動することはない。プライベートを重視するタイプで、社会貢献に熱心。

能力が高いため、上司はより一層の成長を期待しているが、上司や先輩がちょっと厳しくしかるだけで、「そういうのは僕、苦手なんです」と全力で逃げてしまう。

 

◆ワクワクエンジンを本格稼働させる

 

部下との信頼関係が築けてきたら、実際に行動に移してもらう入り口まで導きます。そこまでして初めて、部下は自分の力で走る準備が整うのです。

 

ただし、強引に行動に移すよう誘導しないこと。それをするとやらされ感が生まれるので、部下は自らのエンジンで走ろうとはしなくなります。部下が自らの意思でワクワクエンジンをかけるようにしてください。

「何から始めるか」確認し、具体的な行動に繋げさせる

【シーン11】具体的な行動につなげるひと言「何から始めようか」

 

上司「この前も話した通り、目標数値は100万円アップでいいかな?」

 

部下「ハイ、売上目標は100万円アップでやってみます」

 

上司ありがとう。それじゃあ、何から始めようか①

 

部下「ええと、そうですねえ……クライアントを増やすしかないって思うんですけれど」

 

上司それはいいね。具体的に、どうすればいいと思う?②

 

部下「取引先に聞いたんですけれど、商工会議所の受発注商談会に参加したら、新規顧客を5件獲得できたらしいんです。そういうところに参加するのもアリかなって思っています」

 

上司それは面白い情報だね。詳しく調べてもらえるかな③

 

部下「ハイ、調べてみます」

 

① どんな行動からスタートするのか決めてもらう

 

部下が「やってみます」「できます」「頑張ります」と、宣言したとします。ただ口先で言っているだけでは、その宣言には意味はありません。部下のワクワクエンジンはこの先もずっとかからないままでしょう。

 

形だけの返事なのかどうか、見極めるための問いかけが、「何から始めますか?」です。これを聞かれたら、誰でも行動に移すための方法を考えざるをえなくなります。そして、自分で考えた行動なら、ワクワク感も生まれやすくなるのです。

 

ここで、上司が「じゃあ、新規顧客の訪問件数を増やそう」と方法論を言ってしまったら、部下のワクワクエンジンはかからないので気をつけてください。

 

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② どんなアイデアでも受け止める

 

本人が考えたアイデアは、必ず受け止めて、実現不可能な荒唐無稽なアイデアであっても否定しないようにしてください。コストなどが関係する場合は、「それはちょっと厳しいかもしれないね」と上司が軌道修正する必要がありますが、予算の範囲内でできることを考えてもらえばいいでしょう。

 

たとえ、本人が実行するにはハードルが高いアイデアであっても、私だったら「それでやってみよう」と許可します。若い世代は柔軟な頭や感性を持っているので、それをつぶしたらせっかくの感性がさびついてしまうからです。そうなったら革新的なアイデ2アが生まれなくなります。

 

もし失敗したとしても、次にどうすればいいのかを考えればいいだけですが、アイデアをつぶしてしまうと次は二度と出なくなります。

 

③ 行動を促す投げかけで締めくくる

 

部下からアイデアが出たら、実際にそれを行動に移すようリスニングで導きます。このとき、微妙なニュアンスによって伝わり方は変わるので要注意。「詳しく調べておいて」だと命令形なので、ワクワクエンジンはかかりません。「~してもらえるかな」とお願いする伝え方だと、ワクワクエンジンをかけることができます。

 

 質問&リスニングの効果

 

部下の行動と目標が結びつかないのは、目標を決めたところで話を終えてしまうから。具体的にすぐにできる行動を考えてもらえば、目標に向けて一歩を踏み出せます。

 

「具体的な行動」を考えて、実行するように
「具体的な、すぐできる行動」を考えてもらう

「やめられること」を質問して、視野を広げさせる

◆両極端の質問で行動の幅を広げる

 

「何から始めますか?」に対して、「やめられることはありますか?」のように、やめる行動についての問いかけもあります。一見、正反対の質問ですが、要は同じことです。

 

経営の神様ピーター・ドラッカーは、「私たちはリーダーに何をすべきかを教えるのに多大な時間を使うが、何をやめるべきかを教えるのには充分な時間をかけていない。私が今まで出会ったリーダーの半数は、何をすべきかを学ぶ必要はない。彼らが学ぶ必要のあるのは何をやめるべきかだ」と語ったと言います。

 

確かにその通りで、面談でも会議でも、何をすべきかが最重要課題になりますが、何をやめるべきかについてはあまり話題になりません。悪い習慣や悪い癖も直さないといい行動につながらないので、やめるのも大事な行動の一つなのです。

 

たとえば、遅刻が多い部下に対して、「今日からどんな行動を始める? そのためにどんな行動をやめる?」と問いかけると、「夜遅くまでゲームをするのをやめて、早く寝るようにします」と答えるかもしれません。「始める」と「やめる」を両方使うと、両極から行動を見つめ直せるので、より行動の幅が広がりやすくなるのです。

「いつまでにできる」か聞くと、行動に移しやすくなる

【シーン12】ワクワクする気持ちを持続させるためのひと言「いつまでにできる?」

 

上司「(前項の続き)その商工会議所の受発注商談会参加の件、面白い情報だね。詳しく調べてもらえるかな」

 

部下「ハイ、調べてみます」

 

上司いつまでにできる?①

 

部下「そうですね、一週間もあれば調べられると思います」

 

上司そうか、じゃあ楽しみにしてるよ②

 

① 締切を設けると行動に移しやすくなる

 

「いつまでにできますか?」という問いかけは、重要なひと言です。私も最後のしめくくりの言葉としてよく使っていました。コーチングは、部下のいいところを見つけて褒めればいいと考えている人も多いようですが、本来のコーチは指導・助言をするのが役割なので、本人に行動を起こさせないと意味はないのです。

 

人は本来怠け者なので、話し合いをしているそのときはワクワクしてやる気になっても、あっという間にその気持ちはしぼんでしまいます。そうならないようにするために、いつまでに行うのかという期限を設けるのです。

 

自分の性格を変えたいといった大きな目標であっても、最後に「いつまでに変えられると思いますか」のように投げかけると、「2~3年かかるかもしれません」と何かしら答えてくれます。あまりにも期限が長すぎる場合は、「性格を変えるのに3年かかるとして、何から始める?」とまず今できることを考えてもらえば行動に移せます。

 

② 上司は部下が決めたことを見守る

 

上司が「1週間でやってくれるかな」というのは簡単ですが、それだと、やはりやらされ感が生まれます。本人に決めて宣言させるのが肝です。

 

たとえば、部下が取引先との関係が悪化して悩んでいたとします。部下の気持ちを聞き出したうえで、部下が「先方と話し合いの機会をつくります」と解決策を考えたなら、「先方とはいつまでに連絡を取る?」と問いかけるのです。そうすれば、「明日、連絡してみます」という具合に、自分で期限を設けます。

 

◆ 質問&リスニングの効果

 

心理学の世界では、人は自分で発言したことや取った行動に対して、ある程度一貫性をもった行動を取ろうとする心理が働くといわれています。これは「一貫性の原理」と呼ばれています。

 

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いつまでにやると自分で決めることで、自ら行動しようという意思が生まれるのです。これも部下が自分で考えて動くようになるための大事なポイントになります。

部下との会話で、注意すべきポイントとは?

質問&リスニングをするときの「5つのヒント」

 

質問&リスニングをするときの大前提は、部下により多く話をしてもらうということです。これをわかっているつもりでも、実際にはできていない上司は少なくありません。部下の話を聞いて、「その気持ち、わかるよ。俺も若いころにさあ」と自分語りを始めたり、「こうすればいいよ?」と答えを与えてしまうのはよくあるケースです。

 

質問&リスニングは、部下の自発性を引き出すのが目的なので、部下が考え、部下自身の言葉で答えてもらうのが基本です。そのために、次の5つを心がけてください。

 

ヒント① 話を途中でさえぎらない

ヒント② 誘導しない

ヒント③ 質問は短く

ヒント④ 答えを出すのを急がせない

ヒント⑤ うまくやろうとしない

 

ヒント① 話を途中でさえぎらない

 

部下がどんな話をしても、最後まで聞くというのが絶対条件です。部下が自分の考えとは違うことを話していると、つい「それは違うんじゃない」とさえぎって持論を語りたくなりますが、質問&リスニングしている間はガマンしましょう。部下との話は聞くのが8割、自分の話をするのは2割ぐらいが目安です。

 

ヒント② 誘導しない

 

従来のコーチングでありがちなのは、上司が求める答えに部下を導いてしまうこと。

 

「自分でもこの結果には納得してないんじゃないの?」「本当にそれでいいと思ってるの?」自分が求めている答えを引き出すような質問をすると、相手は強制されているように感じて、心を閉ざします。部下の話をそのまま受け止めるようにしてください。

 

ヒント③ 質問は短く

 

話が長い上司にありがちなのは、自分の想いから語り始めて、最後に「それで、君はどう思う?」と質問するというパターン。これでは、相手は上司の話のどの部分に対して答えればいいのかわかりません。

 

質問は二言三言ですむぐらい簡潔にすると、部下は答えやすくなります。また、質問は1回につき1つだけするように心がけてください。

 

ヒント④ 答えを出すのを急がせない

 

質問&リスニングで深い質問を投げかけると、部下はすぐに答えられず、しばらく考えこむ場合もあります。そういう場合は答えを急がせないで、部下が自分なりの考えをまとめられるまで、沈黙を恐れずにじっと待つこと。もちろん、上司が答えを先取りして、「こういうことじゃないかな」と言ってしまうのは論外です。

 

ヒント⑤ うまくやろうとしない

 

部下の話を聞きながら、いい質問をしようと考えていると、たいていリスニングがおろそかになります。とくに男性は興味のない話を聞くのが苦手で上の空になりやすいので、面談の間は集中するようにしてください。

 

とっさに質問を考えつかないなら、「今の話をもっと詳しく聞かせて」「ほかにアイデアはないかな」と、相手に考えてもらえばいいのです。

 

◆質問&リスニングのその他のヒント

 

・話す前に、自分の表情を和らげておく

・ゆっくり、声のトーンを落として話す

・アドバイスしていいかどうかを聞く

・腕や足を組むのはNG

・話すときはなるべく1対1で

・どんな話でも一方的に否定しない

 

 

板越 正彦

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役


1960年生まれ。東京大学文学部心理学科卒業後、石油化学メーカーJSR、サンダーバード大学院MBA、国連UNESCO勤務を経て、94年よりインテルに21年間勤務。シリコンバレーでの勤務を含めて15以上の事業部を経験。インテル退職後、4年間で約6千人を対象にワークショップやマネジメントコーチングで成果を上げ、2019年に株式会社1o1エンゲージメント研究所を設立。現在は跡見学園女子大学・大学院、筑波大学大学院、東京医科歯科大学大学院などやベンチャー、企業、公共事業体向けに、自ら課題を発見し行動し続ける「自立型人材」の育成のための、研修やサービス(コミュニケーション・1on1・イノベーション・コーチングなど)を提供している。

著書に『上司のすごいひと言』(かんき出版)、『仕事が変わる「アゲる」質問』(きずな出版)、『相手との距離を縮めて、人を動かす「本音を引き出す聴き方・話し方』(KDP)、『ポータブル1on1ガイドブック』(KDP)がある。

著者紹介

連載元インテル執行役員が教える!部下が自分で考えて動き出す、「上司のすごいひと言」

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

板越 正彦

かんき出版

世界企業「インテル」で、クビ寸前から世界トップ0.5%に選抜された著者が、大逆転の原動力となった、部下を動かす『すごいひと言(キラーフレーズ)』を初公開!本書は『すごいひと言』を入り口に、上司が部下との「質問&ヒア…

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