「担当、変えて…」部下へのクレームを受けたときの対処法は?

仕事での失敗や、取引先からのクレームは、誰しも経験があることでしょう。そんなとき、部下を成長させられるかどうかは、上司の対応にかかっています。元インテル株式会社(日本法人)執行役員・板越正彦氏の書籍『部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言』(かんき出版)より一部を抜粋し、部下の失敗時に、上司がどう対応すべきか解説します。

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まだまだ失敗の多い部下、田中くん

【本記事のモデルケース】上司が手を焼く部下:田中君

入社3年目、20代後半の営業マン(法人営業)。仕事をキッチリこなし、上司の指示もきちんと聞く、どこの職場にもいるマジメなタイプ。ただ、与えられた以上の仕事を、自分で考えて行動することはない。プライベートを重視するタイプで、社会貢献に熱心。

能力が高いため、上司はより一層の成長を期待しているが、上司や先輩がちょっと厳しくしかるだけで、「そういうのは僕、苦手なんです」と全力で逃げてしまう。

 

◆大失敗した部下をサポートするとき

 

過去のリーダーの仕事は「命じること」だが、未来のリーダーの仕事は「聞くこと」が重要になる――これはピーター・ドラッカーの名言です。

 

トラブルやミスが起きたとき、部下は目の前のことで頭がいっぱいになり、心に余裕がなくなっています。そんな状況のときに上司がすべきなのは、解決策を命じることではなく、まず部下の話にじっくり耳を傾けること。問題を追及するより、早い段階で立ち直ってもらえると、またワクワクエンジンがかかるようになります。

クレームが入ったときは、部下に原因を考えさせる

【シーン1】トラブルの原因を自分で考えさせるためのひと言「自分で気づいたことはある?」

 

上司「田中君、A社からクレームが入ったんだけど、何か心当たりある?」

 

部下「えっ、どんなクレームですか?」

 

上司「田中君の売り込み方がちょっと強引じゃないかって話なんだけど、気づいたことがあれば、話してもらえるかな①

 

部下「ええと……担当者の方に新しい商品を勧めたんですけれど、今までの商品で満足しているって言われまして。前の商品だと不具合が起きて修理チームが何度も呼び出されているから、新しいヴァージョンのほうが安定していると勧めたら、『君のところは不完全な商品を売っているのか』って言われまして。そうじゃないって説明しても『ムリに売ろうとしているように感じる』とか言われまして」

 

上司「うん、担当者の方も電話で同じような話をしていたよ。担当者の様子を見て、自分で気づいたことはあるかな?②

 

部下「イライラしている感じはありました。この後、大事な会議があるって話していたので」

 

上司「それが原因かもしれないね。解決するにはどうしたらいいと思う?」

 

部下「そうですね……電話だけではよくわからないので、まずは先方と会って話を聞いてみるしかないんじゃないかと思います」

 

上司そうだね。僕も一緒に行ったほうがいいかな③

 

部下「ハイ、そうしてもらえると助かります」

 

① 自分の言葉で説明してもらう

 

取引先が感情的になり、「担当者を変えてほしい」とまで訴えられたら、上司としてはその勢いのまま、「A社からクレームが入ったぞ、どういうことだ!」と叱り飛ばしそうです。そこで深呼吸して落ち着いてから、部下に話を聞き出すのが第一歩です。こういう状況では、クレーム相手から聞いた詳細を伝える前に、部下自身に何か気づいたことを挙げてもらいます。

 

「担当者が難色を示しているのに、新商品のほうがいいとずっと売り込んだって言っているけど、どうなの?」と聞いたら、尋問されているように部下は感じます。したがって、時間がかかっても、本人の言葉で答えてもらったほうがいいのです。

 

② トラブルの原因を考えてもらう

 

「自分で気づいたことは何かな?」はとてもシンプルな質問ですが、コーチングではよく使う問いかけです。極論を言うと、この質問を常に投げかけているだけで、部下は自分の頭で考えて行動できるようになります。

 

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たとえば、会議の後で「今日の会議で何か気づいたことはある?」と問いかけると、部下は何かしら自分の言葉で答えようとします。最初は「とくにないです」と答えるかもしれませんが、毎回問いかけていたら、答えるために考えるようになるでしょう。

 

クレームがあったときも、その場にいたのが部下だけなら、何でもいいから気づいたことを挙げてもらいます。そうすると、自然と問題に向き合う意識になり、トラブルの原因を探るようになるのです。もちろん、上司が「伝え方に問題があったんじゃないの?」などと勝手に分析するのはNGです。

 

③ サポートすることを伝える

 

こういうデリケートな場面では、若手社員一人に対処を任せるのは酷です。上司が一緒に謝罪に行かないとしても、「クライアントから困ったことを言われたら、その場で連絡してくれて構わないから」のように、常にフォローしているという姿勢は見せたほうがいいでしょう。

 

 質問&リスニングの効果

 

納期に間に合わなかった、取引先との大事な会議に寝坊したなど、部下のミスやトラブルはどうしても起きます。そのときに叱って終わりではなく、「気づいたことはある?」と投げかけると、自分で気づく力を養えるのです。

 

部下がショックのあまり言葉が出ないのなら、「ショックなんだね。落ち着いたら話してくれるかな」と急かさないで待ってあげてください。私の場合、部下がまだ新人なら、「気にしなくていいよ、みんな最初はこれぐらいのクレームを乗り越えているんだから」といった、励ましの言葉を繰り返し伝えます。自分が新人のときの失敗談を話すのも、有効です。

 

誰よりも本人が失敗したことの重大さを痛感しているので、そこでさらに追い込む言葉を投げかけても、何のメリットにもならないからです。

 

失敗した部下を、厳しく叱責しても無意味
失敗した部下を、厳しく叱責しても無意味

厳しく指導する上司は、部下の成長を阻んでいる

部下を厳しく叱るのは非効率なだけ

 

うちの部下は自分の頭で考えて動いてくれない。指示した通りに仕事をしてくれない。 いつまで経っても仕事が遅い。

 

いつの時代も、上司の悩みのタネは一向につきないものです。厳しくしたほうが部下も仕事に真剣に向き合うだろうと、キツく叱ったとたん、部下が会社に来なくなったという経験をした方もいるのではないでしょうか。

 

私もインテル時代はガンガン部下を叱り飛ばしていました。当時のインテルの管理職は、部下の意見に対して、「I do not understand.(理解できない)」「I hear you, but I do not like your answer.(言いたいことはわかるけど、その答えは好きじゃない)」と大勢の前で非難するような人ばかりでした。

 

プレッシャーのあまり、大の大人が会議で泣き出した姿を何度も目撃したこともあります。ポジティブでプレッシャーに強いアメリカ人でさえ、耐えられなかったのです。

 

私もインテル流のやり方に疑問を感じることはなく、部下の企画書や提案書の意味がわからなかったら、目の前でビリッと破いて、「書き直し」と命じたこともあります。それで部下が成長したかというと、萎縮しただけ。私に叱られるのを恐れて、トラブルを報告しない部下もいました。辞めていく部下も大勢いましたが、「これぐらいのことに耐えられないなら、世界では通用しないよ!」と思っていたのです。

 

[図表]「叱責」と「対話」とで効果を比較すると

 

部下から上司として失格だと評価されてコーチングを受けてから、私は本記事で紹介している指導法に代えました。すると、部下から信頼されるようになり、部署の雰囲気もよくなって仕事がスムーズに進むようになったのです。

 

そこで初めて、今の時代では叱ったり強制的にやらせる指導方法のほうが成果を生み出さず、独りよがりで非効率なことに気づいたのです。

 

私ほどの鬼上司はもう今の時代は少ないかもしれませんが、「何度同じことを言わせるんだよ」「それぐらい、自分で考えてよ」と部下の心をえぐるような発言をしている人は多いでしょう。そのひと言が、部下の成長を阻んでいるのです。

成長させるためには、「できたこと」に目を向けさせる

 

【シーン2】失敗の中でも「できたこと」に目を向けさせるひと言「うまくいったことは何?」

 

上司「田中君、今朝の会議で使うはずだった資料が間に合わなかったよね。何かあった?」

 

部下「徹夜で作業していたんですけれど、間に合わなくて。すみません……」

 

上司寝ないで資料作りを頑張っていたんだ。間に合わなくて残念だったね①

 

部下「残念というか、チームのみんなに申し訳なくて……」

 

上司「みんなに迷惑をかけたと思っているんだね。でも、悪いことばかりじゃなかったんじゃないかな。今回、一番うまくいったことは何だろう?②

 

部下「うまくいったことですか? うーん、資料を読みやすく作れたってことですかね」

 

上司「資料を読みやすくするのは重要だね。それができて、どんな気持ちになった?②

 

部下「それはやっぱり、嬉しいです。いつも『お前の資料はゴチャゴチャしていて読みづらい』って、みんなから言われてたんで」

 

上司「それは1つ前進できたね。みんなにもその資料を読んでもらいたかったねえ③

 

部下「そうなんです。だから、次は間に合わせます」

 

① 部下を責めない

 

このやりとりを読んで、生ぬるいんじゃないか、と思う方もいるかもしれません。しかし、会社は部下を意味なく鍛えたり、淘汰する場ではなく、成果を上げる場です。したがって、上司の指導も部下に謝らせるのが目的ではありません。

 

つい上司が、「なんでこんなことが起きたの?」「自分が新人のころは、こんな失敗をしたことはなかった」と責め立ててしまうと、ただでさえ落ち込んでいる部下はますます打ちのめされてしまうのです。そうなるとワクワクエンジンは当分、もしかすると二度とかからなくなります。

 

部下本人も、たいていは自分の失敗の重大さを自覚しています。したがって、「残念だったね」のように労ねぎらうリスニングをして、部下を立ち直らせる方向に導くのが、上司としてすべきことです。

 

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② うまくいったことを考えてもらう

 

こういう場合、できたことを聞き出して、「それができて、どんな気持ちになった?」と、ワクワクする気持ちを少しでも思い出してもらうように部下を導いていきます。

 

失敗したと思った仕事のなかにもうまくいったことがあるとわかれば、気持ちが前向きになります。そのうえで、欠点さえ直せばうまくいくと思ってもらえれば、やる気は自然と出るでしょう。

 

③ 解決策は部下に考えてもらう

 

上司はこういう場合の解決策をたいていわかっています。しかし、部下に気づきを与えるのが上司の役割です。「締切から逆算して予定を立てたほうがいい」などと答えを与えてしまったら、部下の成長の芽を摘んでしまいます。グッとこらえて、部下が答えを導けるような言葉を投げかけましょう。

 

◆ 質問&リスニングの効果

 

私は部下をガンガン叱り飛ばす上司でしたが、それは自分のストレスをかえって大きくすることにもなっていたのだと、この方法がうまくいってから気づきました。

 

ミスをしたときに叱ると、部下はさらに萎縮して期待外れのことばかりをする、というまさにマイナススパイラルにハマっていたのです。自分の怒りもさらに大きくなって、必要のない破壊的コメントを増やしてしまいます。ですから、私は始終イライラしていました。

 

でも、この質問&リスニングをするようになってから、部下はトラブルから自分の力で立ち直り、こちらの期待以上の成果を出してくれるようになりました。「叱らないとわからないかもしれない」との心配もまったくの杞憂でした。

 

トラブルやミスが起きたときほど、ワクワクする気持ちを思い出してもらうように導くことで、部下は勝手に立ち直っていくのです。そこから先は、上司が何もしなくても勝手に走り出します。

 

 

板越 正彦

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役


1960年生まれ。東京大学文学部心理学科卒業後、石油化学メーカーJSR、サンダーバード大学院MBA、国連UNESCO勤務を経て、94年よりインテルに21年間勤務。シリコンバレーでの勤務を含めて15以上の事業部を経験。インテル退職後、4年間で約6千人を対象にワークショップやマネジメントコーチングで成果を上げ、2019年に株式会社1o1エンゲージメント研究所を設立。現在は跡見学園女子大学・大学院、筑波大学大学院、東京医科歯科大学大学院などやベンチャー、企業、公共事業体向けに、自ら課題を発見し行動し続ける「自立型人材」の育成のための、研修やサービス(コミュニケーション・1on1・イノベーション・コーチングなど)を提供している。

著書に『上司のすごいひと言』(かんき出版)、『仕事が変わる「アゲる」質問』(きずな出版)、『相手との距離を縮めて、人を動かす「本音を引き出す聴き方・話し方』(KDP)、『ポータブル1on1ガイドブック』(KDP)がある。

著者紹介

連載元インテル執行役員が教える!部下が自分で考えて動き出す、「上司のすごいひと言」

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

板越 正彦

かんき出版

世界企業「インテル」で、クビ寸前から世界トップ0.5%に選抜された著者が、大逆転の原動力となった、部下を動かす『すごいひと言(キラーフレーズ)』を初公開!本書は『すごいひと言』を入り口に、上司が部下との「質問&ヒア…

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