前回に引き続き、土地の評価に大きく影響する行政法規について見ていきましょう。今回は、建築基準法の道路に該当しないケースを中心に紹介します。

現在も街に多く残る「欠陥敷地」

今回は、前回紹介した下記図表のB地について考えます。

 

[図表1]路地状敷地の分割

 

ここでの問題は、この私道が建築基準法上の道路に該当するかどうかです。私道の造成には、道路幅員を4m以上で公道接続部分は一定の「すみ切り」を設けるなどの要件が定められています。その上で役所にこれを届け出てその認可をもらいます。これを位置指定道路(下記図表2参照)と言います。

 

[図表2]位置指定道路

 

しかし昭和40年代頃までは、一部にずさんな私道が造られていたようです。下記図表2の私道は位置指定道路ではありません。つまり奥の2宅地は「欠陥敷地」です。こうした私道は街でよく見かけるはずです。

 

[図表3]位置指定を受けていない私道

 

建築基準法に該当しない道路は、こうした私道だけではありません。通り抜けが可能な公道のようなものであっても、(道路幅がやたら狭いものなど)基準法道路に該当していないものもあります。極めて稀ですが、「エッ、これがダメなの」といったものまであります。そうした道路だけに接面している土地は全滅ということになるわけです。

 

基準法上の道路かどうかは役所に行けばすぐに教えてもらえます。ただし現実に重要なのは、「これは怪しい」と認識することができるかどうかです(下記図表4参照)。

 

[図表4]

 

ちなみに、そうした感覚が身につけば、不動産の実力はかなりのレベルと言っていいでしょう。「見て判断」の実践です。そして、その疑いを感じたのであれば、役所に出向いてこれを確認すればいいのです。

「違反建築」に関する規制は少しずつ厳しくなっている

ところで、「欠陥敷地」だからといって、そこに絶対に家を建てることができないというわけではありません。昔の規制が甘かったのでしょう、事実それらの土地にはほとんど家が立っています。

 

つまり、これは「合法的に家が建てられない」ということであって、いわゆる「違反建築」を覚悟すれば、建築はできてしまいます。そして今日においてもこれがすり抜けるような形で行われています。ただしそうした規制は、極めてゆっくりながらも少しずつ厳しくなっているような気もします。

 

なお不動産業界では、こうした土地を俗に「再建築不可の土地」と呼んでいます。またこれが更地の場合には「建築不可の土地」と言います。余談ながら、これは不動産の広告用語の借用ですから、語呂がいまひとつさえません。

 

ここで皆さんにお聞きします。一般の土地を100とした場合、最も欠陥の程度の軽いと思われる図表1・A地の路地状敷地(間口1.8m)の土地に、いくらの値を付けますか(なお、ここには築後20年の建物が立っているものとします)。

 

むろん買主の立場でお考えいただきます。なお、欠陥の程度が軽いというのは、隣接地から間口20㎝部分を買い足すことができれば、「欠陥敷地」から脱却できるからです。

 

筆者はいろいろな場で多くの人の意見を聞いていますが、結論的にはほぼ30〜35が上限のようです。要するに半値を大きく下回るわけです。まあ当然ですよね。

 

ただし相続税評価におけるこの点の補正は、まったく実情を反映していません。ここではその結論だけ指摘しておきます。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『相続税を減らす不動産相続の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税を減らす不動産相続の極意

相続税を減らす不動産相続の極意

森田 義男

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策の成否は「土地の相続税評価をいかに行うか」にかかっています。 しかし、専門家であるはずの税理士や金融機関の担当者等が、まったくと言っていいほど不動産を知らない状況にあるとしたら…。 本書では二十数…

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