英語力は問われないが…米国「EB-5永住権」申請時のポイント

一定の条件を満たす外国人投資家が永住権を取得できる、アメリカ合衆国の「EB-5」プログラム。この申請において、最も重要なポイントとなるのが資金源の証明であるが、高度な専門知識が要求されるため、熟知した弁護士に依頼するのが一般的だ。その他の申請におけるポイントとともに、弁護士の上野潤氏が詳しく解説する。

 

助手「あの~、教授、EB-5永住権について、ちょっと聞きたいことがあるんですがぁ…」(関連記事『ママも学生ビザで一緒に⁉ 富裕層親子の「アメリカ留学」事情』参照)

 

教授「なんじゃ、急にあらたまって。いつものように単刀直入に聞いてくればいいじゃろにー」

 

助手「EB-5永住権を取得するためには、投資金額以外にも必要な条件ってあったりするんですね…」

 

教授「ふむ。それはそうじゃ。さすがに、お金さえあれば、どんな人でもウェルカム!というわけにはいかんからのう。重犯罪を犯してしまった人や、人に害を与える伝染性の病気にかかってしまっている人は、残念ながら、どんなにお金を投資しても永住権を取得することは無理じゃ」

 

助手「重犯罪! あぁー、やっぱり僕はもう、一生アメリカで永住権を取ることはできないんだー!(涙)」

 

教授「なんじゃ、お主。わしに内緒で、そんなやましい過去を持っとったのか?」

 

助手「ええ、実は…、友達から借りた革ジャンを返す前に洗濯しようと思って、昨夜、手洗いをしていたんですけど、洗面所にやたらといいニオイがする液体があったから、良かれと思ってたくさん入れてみたんですよ。そしたら、パリっとしててロックな感じで格好良かった革ジャンが、何だか柔らかくて肌触りのよいヒーリングミュージックみたいな革ジャンになったんです。いったい僕はどんな危険薬物を使ってしまったのか、これって重犯罪になりますよね?」

 

教授「はぁ(ため息)。安心せい。それは重犯罪(じゅうはんざい)ではなく、柔軟剤(じゅうなんざい)じゃー!」

EB-5永住権で最も重要なポイントは「資金源の証明」

EB-5永住権の申請に際して、最も重要なポイントとなるのが資金源の証明です。

 

アメリカ政府は、テロリストや犯罪組織といった脅威から国民を守らなければなりません。そのため、万が一にもテロリストの一味が、このEB-5プログラムの制度を利用して、アメリカの永住権を取得するようなことは起きてはならないのです。

 

EB-5永住権の申請者は、投資に使った資金が、合法的なプロセスで得たものであって、マネーロンダリングなどの犯罪にはまったく関わっていないということを証明しなければなりません。この合法的なプロセスというのは、たとえば勤務先から支払われた給与、個人事業主が事業で得たお金、親から相続した預貯金、相続した不動産を売却して得た代金ということになります。

 

EB-5永住権の申請時に最も重要なのは資金源の証明
EB-5永住権の申請時に最も重要なのは「資金源の証明」

 

それでは具体的に、どうやって証明するかといえば、不動産売却で得たお金であれば、不動産売買契約書や売買代金が入金された銀行の通帳が必要になり、相続で得たお金であれば、遺言書や遺産分割協議書といった法律文書が必要になってきます。

 

さらに、不動産の売却代金の場合、不動産購入時の代金支払いの元になった資金についても、証明ないし説明が必要になります。また、第三者からのローンの場合は、借入金額に相当する担保の存在が必要であり、その担保を取得した際の資金源の証明が必要になります。

 

このように、資金源の証明はEB-5永住権申請の肝ともいえる最も重要なポイントであり、高度な専門知識が要求される部分になります。そのため、EB-5永住権を申請するに当たっては、EB-5永住権申請に熟知した弁護士に依頼するのが一般的といえるでしょう。

 

この証明対象となる資金は、投資額にプロジェクトへの手数料を加えた金額ということ
になります。なお、弁護士に永住権申請を依頼した場合の弁護士費用などは、証明対象か
らは除外されています。

生活可能な資産を持つことや重犯罪歴がないことも条件

ここまで説明してきたように、資金源の証明がEB-5永住権申請における最も重要なポイントとなりますが、これ以外にも満たさなければならないポイントがいくつかあります。

 

①永住権取得後も生活が可能な十分な資産を持つ

 

投資をしたものの、生活できる資金がないと困ります。大使館での面接時に残余資産があることを示すよう求められることもありますので、十分な収入があるか、あるいは余剰の資産があることが望ましいです。なお、これは申請のための条件であるとともに、現実の生活を考えた場合には、当然必要な条件であるといえるでしょう。


②重犯罪歴がない

 

過去に、重犯罪歴がないことも条件の1つとなっています。はじめにお話ししましたように、アメリカ政府は、アメリカ国民の安全を守る義務があります。そのため、重犯罪を犯すような危険人物には永住権を与えない、というのがアメリカの考え方です。一定の重犯罪を行ったことにより、逮捕されたことがあるような場合、原則として、EB-5永住権を申請できる資格はありません(なお、犯行当時から15年以上が経過している場合、免責手続という特別な手続を経て、取得できる場合もあります)。

 

なお、ここでの重犯罪とは、比較的広い概念です。詐欺、強盗、殺人といった犯罪はもちろんのこと、窃盗や傷害なども含まれます。これに対し、器物損壊や盗品物保管、駐車違反やスピード違反などの交通違反は、重犯罪の定義から外れると考えられています。

 

③人に害を与える伝染性の病気を申請時に患っていない

 

EB-5永住権の申請時に、伝染病(コレラ、結核、黄熱病など)を患っていないことも条件となっています。これも、アメリカ国民の安全を守るという観点からは、当然の条件といえるかもしれません。

 

あくまでも、申請するときに患っていて、感染の恐れがあるかどうかという点が問題になるため、過去に伝染病を患った経歴があったとしても、すでに完治していて感染のおそれがないのであれば、この条件をクリアすることができますので、ご安心ください。

 

④それ以外の条件

 

ここまで挙げてきたようなことが、EB-5永住権申請に当たっての主な条件となります。逆にいえば、これ以外の条件、たとえば「学歴」、「職歴」、「英語力」、「年齢」といったものは、条件に含まれていません。最終学歴が中学校卒業でも、年齢がいくつであっても、EB-5永住権申請には特に影響がありません。

 

「アメリカ国民の安全を脅かすようなことは許しません。他方、害がないのであれば
できる限り多くの人にチャンスを!」という、なんともアメリカらしい条件設定といえ
るでしょう。

 

 

上野 潤

弁護士法人イデア・パートナーズ法律事務所 所長弁護士

 

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弁護士法人イデア・パートナーズ法律事務所 所長弁護士

東京弁護士会所属
北海道大学理学部物理学科卒業
東京大学大学院理学研究科修了
北海道大学法科大学院修了

【主な役職等】
・経営革新等支援機関(平成25年4月~現在)
・犯罪被害者支援委員会研修員(平成21年4月~平成22年4月)
・非弁護士取締委員会委員(平成25年4月~平成27年4月)
・住宅紛争審査会紛争処理委員(平成27年9月~現在)
・弁護士会の各法律相談等担当(知的財産権・ライセンス契約分野,遺言信託分野,住宅専門家相談,女性のための法律相談)
・中野商工会議所相談担当
・足立区法律相談担当

民間企業(富士通)でシステムエンジニアとして勤務した後、平成20年に弁護士登録。米国渡航、ビザ・永住権等の問題はもちろんのこと、日本の各法分野(相続、不動産、知的財産、交通事故等)についても明るい。

著者紹介

連載国際案件に精通した弁護士が徹底解説! アメリカ投資永住権「EB-5プログラム」の全貌

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

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