20代後半の会社員「仕事が楽しくない」…良い上司の返答は?

なかなか思い通りに動いてくれない、何度言っても理解してくれない、不満そうで動きが遅い…。パワハラ・アルハラをはじめ、社会的なモラルが日々変化していますが、「上司と部下」の関係は、いつの時代だってやっかいなもの。まずはケーススタディから、「最適な関係の築き方」を学んでいきましょう。元インテル株式会社(日本法人)執行役員・板越正彦氏の書籍『部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言』(かんき出版)より一部を抜粋して解説します。

「能力あるけどやる気はいまひとつ」の部下、田中君

【本記事のモデルケース】上司が手を焼く部下:田中君

入社3年目、20代後半の営業マン(法人営業)。仕事をキッチリこなし、上司の指示もきちんと聞く、どこの職場にもいるマジメなタイプ。ただ、与えられた以上の仕事を、自分で考えて行動することはない。プライベートを重視するタイプで、社会貢献に熱心。

能力が高いため、上司はより一層の成長を期待しているが、上司や先輩がちょっと厳しくしかるだけで、「そういうのは僕、苦手なんです」と全力で逃げてしまう。

 

◆まずは、部下との距離感を縮める

 

部下との信頼関係が築けていないうちに、「ワクワクポイント(部下がやる気になるポイント)はどこか?」などと真顔で聞いても、面談などで部下からはぼんやりとした答えしか返ってきません。

 

とくに自己肯定感の低い人は、大事にしていることも一所懸命になったこともなかなか思い浮かばない傾向があります。そういう場合はムリに追求せず、気楽に答えられるひと言で、まず部下との距離を縮めます。

まずは仕事と関係のない話題を振ってみよう

【シーン1】心を開いてリラックスさせるひと言「最近、一番楽しかったことは何?」

 

上司最近、一番楽しかったことは何かな?①

 

部下「最近ですか? 大学時代の友だちの結婚式の二次会で盛り上がったことかなあ」

 

上司「それはいいね。何が楽しかったの?」

 

部下「新郎と一緒に、ひそかに三代目 J Soul Brothersのダンスの練習をみんなでしていて、余興でやったんです。新郎はダンスが下手で、みんなと動きがずれていたから、会場は爆笑でしたね。新婦にもすごく喜ばれて、あんなに楽しかった二次会は初めてです」

 

上司それは盛り上がっただろうね。どれぐらい練習したの?②

 

部下「1か月前から、土日にみんなで集まって振りを覚えて、練習をしたんです。みんなダンスはしたことなかったから、覚えるまで大変でした」

 

上司「1か月も練習するなんてすごいね。いい仲間だね」

 

① 最近楽しかったことや嬉しかったことを聞く

 

喜怒哀楽につながる質問は相手も答えやすく、心を開きやすくなります。とくに、楽しかったことや嬉しかったことを具体的に思い出してもらうと、それだけで部下の中にワクワクする気持ちが蘇ってきます。

 

本当は、その楽しい気持ちを仕事で再現するにはどうすればいいのかというところに話を持っていくのが理想ですが、質問&リスニングに慣れないうちは、ムリやり仕事の話に結びつけていると思われてしまいます。そうなると部下はワクワクしないので、楽しい体験を思い出してもらうだけでも十分です。

 

なお、「最近、仕事で一番楽しかったことは?」と限定すると、「ありません」という答えで終わる可能性もあるので、注意してください。

 

② 自分が知らないことでも興味を持って聞く

 

部下が自分の知らないことを話題にしたり、自分の興味ない分野について話したとしても、「何それ?」のように無関心にならないこと。わからないことは「三代目 J Soul Brothersって、どんなダンスをしているの?」と聞いても構いません。相手の話に興味があると伝わると、より熱心に話してくれます。

 

◆質問&リスニングの効果

 

他愛ない会話から、田中君のワクワクポイントにつながる情報がかなり拾えます。「みんな」という言葉を繰り返していることから、人と協力して何かをするのが好きなのだろう、人に喜んでもらえるとやりがいを感じるのだろう、などと推測できます。田中君のような若い世代には、興味のあることに打ち込める集中力もあります。これらの情報は、仕事を任せるうえでも役に立つでしょう。

 

◆すべての答えを材料にできる

 

今の若い世代は自己肯定感が低い人が多いです。そういうタイプは感情がなかなかすぐに動かないので、一番楽しいことを聞いても、「うーん」と考え込んだりします。それでようやく出てきたのが、「去年、成田山に行ってウナギを食ったことですかね」という答えだったケースもあります。

 

私は、そういう答えでも、「また行きたいと思う?」「そのためにはどうしたらいいかな?」のように話をつなげていました。そうすると、相手も「仕事で成果を出して、ボーナスがアップすれば行けるかもしれない」のように何かしら行動につながることを考えるのです。

「みんな同じ思いをしてるんだから」はNGワード

【シーン2】価値観やポリシーを知るためのひと言 「やりたくないことは何だろう?」

 

上司「田中君は何のために仕事をするのかな」

 

部下「うーん、僕はプライベートを充実させるためにお金が必要だから働いている、という感じです」

 

上司「そうなんだ。仕事は仕事で割り切っているんだね」

 

部下「ぶっちゃけ、あんまり楽しくないですから」

 

「ぶっちゃけ、あんまり楽しくないですから」
「ぶっちゃけ、あんまり楽しくないですから」

 

上司今の仕事は楽しめないんだね。なかでも、やりたくないことは何だろう?①

 

部下「それはやっぱり、ノルマ達成です。ノルマに常に追われてる感があると、ストレスがハンパないっていうか。ノルマがあると、クライアントに強引に勧めないといけないから、相手に悪いなっていう気分になるんです」

 

上司それはもしかして、ノルマ自体がつらいというより、クライアントに不誠実なことをしなくてはならないことに対して、良心が痛んでいるのかな②

 

部下「そうなんです。それで契約が取れても、モヤモヤした気分になっちゃって」

 

上司良心が痛まないでノルマを達成する方法を考えられるといいね③

 

① やりたくないことの裏側のポリシーを探る

 

「何のために仕事をするの?」「一番やりたいことは?」などと聞いたとき、答えられない人も少なくありません。何の目的もなく働いて、つまらない毎日を送っている人が多いのも事実です。

 

「とくにない」という回答もあれば、田中君のような若い世代は、仕事よりもプライベートが大事だと考えている人もいます。そういう場合は、部下の嫌いなこと、苦手なことを聞き出すほうが有効です。

 

行動してもらうヒントを探すには、やりたくないことを掘り下げて聞きます。なぜ、それをやりたくないのか、やらなければどんな人生を送れるのか。そんな質問を投げかけていくと、やりたくないことの裏側に部下のポリシーや価値観が隠れています。それを知れば、ワクワクポイントがある程度推測できるのです。

 

私は「この会社で何があったら辞めたいと思う?」と部下がイヤなことを最初に聞き出すことをおすすめします。「俺はそれだけはしないように気をつけるよ。もししていたら、遠慮なく言ってくれ」と約束するのもすごく効果的です。それだけで部下は安心し、信頼感が増すでしょう。

 

② 説教は厳禁

 

多くの上司は、こういう状況で「ノルマが辛いのはわかるけどさ、みんな同じ思いをしながら頑張ってるんだよ」と自分の意見を言ってしまいがちです。とたんに部下は心を閉ざし、口も閉ざします。「この人には何を言ってもムダだ」と思ってしまいます。

 

部下が聞きたいのは説教ではありません。部下の気持ちを受け止めるだけでもいいので、最初は自分の意見を挟まないようにしまょう。

 

③ 同意のリスニングで関係を深める

 

ネガティブなことを聞き出すときは、ポジティブな話を聞き出すときより、慎重に進めてください。共感や承認を示すリスニングを合間に挟んで、「私はあなたの話を受け止めています」という姿勢を示すことがポイントです。

 

「それができるといいね」「そうなんだ」と共感しながら同意すると、「自分のことをわかってくれた」と心を開いてくれます。

 

◆質問&リスニングの効果

 

自分の弱いところを人に見せると、その人との距離は一気に縮まります。部下は苦手なこと、嫌いなことを吐き出せたら、上司に対して親近感を抱くでしょう。また、部下が苦手なことを克服できれば、いずれ仕事にもワクワクして自分で考えて動けるようになります。部下が苦手な仕事を克服できるようにサポートするためにも、まず苦手ポイントを聞き出してください。

 

◆当たり障りのない答えのときは

 

上司と部下との信頼関係ができてない段階でこの質問を投げかけても、「朝の清掃がキツいッす」といった当たり障りのない答えしか返ってこないかもしれません。

 

それでも、そこから「そうか。どうして朝の清掃がイヤなんだ?」と問いかけ続けると、実は時間外労働に不満を持っていることがわかります。どんな答えにも、隠れた理由があると思ってください。

 

 

板越 正彦

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役

 

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役


1960年生まれ。東京大学文学部心理学科卒業後、石油化学メーカーJSR、サンダーバード大学院MBA、国連UNESCO勤務を経て、94年よりインテルに21年間勤務。シリコンバレーでの勤務を含めて15以上の事業部を経験。インテル退職後、4年間で約6千人を対象にワークショップやマネジメントコーチングで成果を上げ、2019年に株式会社1o1エンゲージメント研究所を設立。現在は跡見学園女子大学・大学院、筑波大学大学院、東京医科歯科大学大学院などやベンチャー、企業、公共事業体向けに、自ら課題を発見し行動し続ける「自立型人材」の育成のための、研修やサービス(コミュニケーション・1on1・イノベーション・コーチングなど)を提供している。

著書に『上司のすごいひと言』(かんき出版)、『仕事が変わる「アゲる」質問』(きずな出版)、『相手との距離を縮めて、人を動かす「本音を引き出す聴き方・話し方』(KDP)、『ポータブル1on1ガイドブック』(KDP)がある。

著者紹介

連載元インテル執行役員が教える!部下が自分で考えて動き出す、「上司のすごいひと言」

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

板越 正彦

かんき出版

世界企業「インテル」で、クビ寸前から世界トップ0.5%に選抜された著者が、大逆転の原動力となった、部下を動かす『すごいひと言(キラーフレーズ)』を初公開!本書は『すごいひと言』を入り口に、上司が部下との「質問&ヒア…

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