部下の思考を変化させる「すごい上司」は、質問の仕方が違う

なかなか思い通りに動いてくれない、何度言っても理解してくれない、不満そうで動きが遅い…。パワハラ・アルハラをはじめ、社会的なモラルが日々変化していますが、「上司と部下」の関係は、いつの時代だってやっかいなもの。まずはケーススタディから、「最適な関係の築き方」を学んでいきましょう。元インテル株式会社(日本法人)執行役員・板越正彦氏の書籍『部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言』(かんき出版)より一部を抜粋して解説します。

「プライベート重視タイプ」の部下、田中君

【本記事のモデルケース】上司が手を焼く部下:田中君

入社3年目、20代後半の営業マン(法人営業)。仕事をキッチリこなし、上司の指示もきちんと聞く、どこの職場にもいるマジメなタイプ。ただ、与えられた以上の仕事を、自分で考えて行動することはない。社会貢献に熱心で、人とのつながりを大切にしており、学生時代との友達ともSNSなどを通じて交流を続けている。

能力が高いため、上司はより一層の成長を期待しているが、上司や先輩がちょっと厳しくしかるだけで、「そういうのは僕、苦手なんです」と全力で逃げてしまう。

 

◆部下の「ワクワクポイント」を探る

 

本記事では、部下がワクワクする原動力となることを、部下の口から引き出してみましょう。本人自身が、何がワクワクポイントなのか、自覚していない場合もあります。今、仕事に対してやる気がなくても、自分の将来に不安を感じていても、ワクワクエンジンは誰の中にも眠っています。そのエンジンのスイッチを入れるのです。

 

【シーン1】どんなことにワクワクするのかを探るためのひと言​「これまでで一番、一所懸命になったのはどんなこと?」

 

上司これまで一番、一所懸命になったのはどんなことかな?①

 

部下「高校のときの文化祭です」

 

上司「そうなんだ。具体的にどんなことを頑張ったの?②

 

部下「うちのクラスはたこ焼き屋をやることになったんです。そうしたら、隣のクラスもたこ焼き屋だと途中でわかって、『うちのクラスのたこ焼きをたくさん売るにはどうするか』って、みんなで連日話し合いました。それで、チーズとかキムチを入れようってことになって、作ってみたら、ホントにおいしくて。みんなで一所懸命『これ、絶対おいしいんで食べてみてください』って売り込んだら、その年で一番の売上を上げることができたんです」

 

上司「そうか、みんなで一緒に頑張ったんだね③

 

部下「ハイ、うちのクラスは仲がよかったですから」

 

伸び悩む部下、どう対応する?
伸び悩む部下、どう対応する?

仕事の問題点だけを話し合い、解決策を探るのはNG

① 本質的な質問をしてから現在の問題点について聞く

 

これは、私が部下や面談の相手のワクワクポイントを聞き出すときによく使った質問です。

 

面談でやりがちなのは、仕事での問題点だけを話し合い、解決策を探るという方法。これだと問題点にしかフォーカスしていないので部下の思考は狭くなりますし、心の琴線に触れないのでワクワク感も生まれません。

 

最初にこの質問のように本質的なこと(そもそもの動機)を聞いてから、個別の問題点について話し合うという順番にすると、部下のワクワク感を引き出せるので、思考が広がりやすくなります。質問の順番が大事なのだと覚えておいてください。

 

[図表]質問を深めていくプロセス
 

② 仕事の話ではなくても掘り下げる

 

いきなり本質的な質問から切り出すと部下は戸惑いますが、「中学に入るときの受験勉強ですかね」「学生のときにやっていた合唱です」と何かしら答えてくれるでしょう。この問いかけから返ってくるのは、仕事とはまったく関係のない回答が大半ですそれでも問題ありません。

 

その答えから、部下のワクワクポイントにつながるような話を導き出します。投げかける質問は難しく考えず、最初は5W1Hで投げかけるだけでも十分です。

 

「具体的に、どんなことで一所懸命になったの?」(5W1HのWHAT)

「今まででいつが一番楽しかった?」(5W1HのWHEN)

 

と、話を掘り下げる質問をどんどんぶつけてみてください。

 

③ 相手の話は前向きにリスニングする

 

要所要所で部下の話を受け止めるリスニングをします。ただ「そうなんだ」「そうか」と相槌を打つだけではなく、具体的なポイントを承認するようなひと言を加えられると理想的。より深く相手の話を受け止めている印象を与えられます。

 

この場合、「楽しそうだね」というひと言だと、感想を述べているだけになります。「みんなで一緒に頑張ったんだね」「連帯感が強かったんだね」といった、なぜそれに打ち込んだのかという具体的なポイントをすくいあげられると、会話がより弾みます。

 

◆質問&リスニングの効果

 

このやりとりから、田中君のワクワクポイントに関する情報をいろいろ拾えます。仲間と一緒に共同作業をすることに喜びを感じているのだとわかりますし、競い合うシチュエーションに燃えるタイプなのだともわかります。これらの情報を元に、田中君のワクワクポイントは「チームワーク」や「競争」だと推測できます。今後、チームでコンペに参加するような状況になったとき、田中君もそのメンバーに加えたらワクワクエンジンがかかるかもしれません。

 

また、このやりとりで引き出せるのは他愛のない話のように見えますが、非常に重要です。仕事以外の話をするようになって初めて、部下は心を開いてくれるからです。そうなると普段の会話も増え、信頼関係もグッと増します。

 

そのためには、まず自らをオープンに自己開示して、部下の関心、価値観、マイブームなどにも本気で関心を持たなければなりません。最近は、効率重視のシリコンバレーでさえも、月曜日の会議でリーダーがまずみんなに聞くのは、「週末何したの?」らしいですよ。

 

板越 正彦

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役

株式会社1on1エンゲージメント研究所 代表取締役


1960年生まれ。東京大学文学部心理学科卒業後、石油化学メーカーJSR、サンダーバード大学院MBA、国連UNESCO勤務を経て、94年よりインテルに21年間勤務。シリコンバレーでの勤務を含めて15以上の事業部を経験。インテル退職後、4年間で約6千人を対象にワークショップやマネジメントコーチングで成果を上げ、2019年に株式会社1o1エンゲージメント研究所を設立。現在は跡見学園女子大学・大学院、筑波大学大学院、東京医科歯科大学大学院などやベンチャー、企業、公共事業体向けに、自ら課題を発見し行動し続ける「自立型人材」の育成のための、研修やサービス(コミュニケーション・1on1・イノベーション・コーチングなど)を提供している。

著書に『上司のすごいひと言』(かんき出版)、『仕事が変わる「アゲる」質問』(きずな出版)、『相手との距離を縮めて、人を動かす「本音を引き出す聴き方・話し方』(KDP)、『ポータブル1on1ガイドブック』(KDP)がある。

著者紹介

連載元インテル執行役員が教える!部下が自分で考えて動き出す、「上司のすごいひと言」

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

部下が自分で考えて動き出す 上司のすごいひと言

板越 正彦

かんき出版

世界企業「インテル」で、クビ寸前から世界トップ0.5%に選抜された著者が、大逆転の原動力となった、部下を動かす『すごいひと言(キラーフレーズ)』を初公開!本書は『すごいひと言』を入り口に、上司が部下との「質問&ヒア…

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