「立地」と「利回り」だけでは黒字経営は困難・・・
物件情報を得たくても、場所を絞り込んでいなければ得ようがありません。医師に限らず一般的に、はじめて収益物件を買おうとする人は、自宅周辺で探そうとします。土地勘があることや常に管理状態を確認したいからでしょう。その気持ちはよく分かります。
しかし、残念ながら理想的な条件が揃った物件はそこかしこにあるわけではありません。自身の土地勘があるようなエリアで物件を探すのはあまりにも範囲が狭すぎます。
収益物件を探すならその範囲は全国、または世界に目を向けるべきです。なぜなら土地選びでもっとも重要なことは、そこに住む人がたくさんいること。つまりたとえ空室になったとしても、すぐに次の入居者が見つかる可能性が高い人口密集地であることです。しかも収益物件の経営は、20年、30年と長期にわたるので、その時点でも人口を維持していることが必須条件になります。
ところが今後の日本は人口が減っていくことが予想されます。国立社会保障・人口問題研究所では、次のような推計を公表しています(2012年1月推計)。
2010年の人口1億2805万7000人を100とする。
2025年の人口は1億2065万9000人で94.2。
2040年の人口は1億727万6000人で83.8。
25年後の人口はおよそ2割減ってしまうのです。しかし、地域によっては減少率が低いところがあります。それは東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県です。
東京都は2025年まで現状維持で2040年でも93.5。
神奈川県は2025年まで99.6でほぼ現状維持、2040年でも92.2。
埼玉県は2025年で97.2、2040年でも87.6です。
千葉県は2025年で96.3、2040年でも86.2となっています。
(2010年を100としたときの指数。2013年3月推計。)
これらの都県は、全国平均よりも減少率が低く推計されています。地方で同じように2040年の減少率が低い県を挙げると、愛知県( 92.5)、福岡県( 86.3)などがあります。
このような数字から一都三県をはじめ大都市圏が、収益物件を経営する上で理想的な立地であるといえます。
とはいえ、これはあくまで一般論。確かに人口が多い場所の物件を買うことは確実な戦略です。収益物件を取り扱う不動産業者のほとんどは、この立地条件にプラスして利回りを売り文句に営業を展開しています。「こんなに交通の便がいいですよ。しかもこれだけ高い利回りがありますよ」。営業トークはこれだけです。
しかし、人口減に突入した昨今、この立地+利回りだけでは黒字経営を維持するのは困難です。この2つの条件にプラスして周辺のライバル物件に対して差別化できる何かが必要なのです。
人口密度と同じくらい「医師密度」が重要に
その何かとはどんなものか?
それは「周辺エリアの医師の数」、そして「コンセプト」です。医師が不動産運用をする際は、人口密度と同時に周辺の医師の数も視野に入れるべきです。
たとえば埼玉県の大宮駅周辺。大宮駅はJR 埼京線で新宿へわずか30分の好立地。JR東日本の2013年度乗降客ランキングでは新橋駅に次ぐ8位(1日平均24万5479人)の巨大なターミナルステーションです。ところが大宮駅がある埼玉県は、厚生労働省が発表している「人口10万人対医師数」ではワースト1位なのです。
すなわち日本でもっとも医師が不足している県であり、開業するにはお勧めのエリアといえます。
収益物件を探すというと、人口密度の高いエリアにばかり目が行きがちです。しかし人口が多いエリアほど物件価格も高い。ところが医師であれば、人口密度と同じくらいそのエリアの「医師密度」も重要です。この基準は一般的な不動産価値とは違うので、医師にとっては魅力的な物件を安く購入することも可能になるわけです。そして、将来その物件を医療関係施設として開業すれば、不動産の価値は大きく高まります。