どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえるだろう。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 今回取り上げるのは、西武池袋線。

交通利便性の向上で人気が高まる「西武池袋線」

「池袋」駅と埼玉県飯能市の「吾野」駅を結ぶ西武池袋線。西武新宿線と並び、西武鉄道の主要幹線のひとつだが、昨今、注目度がぐんぐんと高まっている。その要因となっているのが、アクセスの向上だ。

 

 

西武有楽町線を介して、東京メトロ有楽町線と相互運転が始まったのは1998年。これで東京都心へダイレクトにアクセスできる路線となった。さらに2008年には西武有楽町線を介して、東京メトロ副都心線とも直通運転が始まった。それに伴い、池袋だけでなく、新宿や渋谷といった繁華街ともつながったのに加えて、東急電鉄東横線ともつながり、横浜方面ともつながった。2016年には日中の最速達列車「Fライナー」、2017年には着席保証列車「S-TRAIN」の運転も始まり、利便性が飛躍的に高まった。

 

注目が高まっているもう一つの要因が、「池袋」の人気の高まりだろう。先日発表された「借りて住みたい街ランキング」で、池袋が4年連続で第1位に選ばれた。池袋といえば、2014年に「消滅可能性都市」に指定された東京・豊島区の中心。しかし、行政としては驚くほどのスピードで対策・改革を行い、2017年には全国でもっとも「共働き子育てしやすい街」に選ばれるなど、老若男女から支持される街になった。

 

さらに池袋周辺では、「ハレザ池袋」や「ダイヤゲート池袋」など、新スポットが誕生したり、西口公園が改修されたりなど、魅力的な街へと変貌を遂げている。結果、「池袋」を起点にしている西武池袋線にも注目が集まったというわけだ。

 

そんな西武池袋線の住み心地は、どうなのだろうか。20~30代の会社員を想定し、沿線の街を見ていこう。

 

まず平日通勤時間帯の「池袋」までの所要時間を見てみると(図表1)、10分圏内であれば「桜台」まで、20分圏内であれば「大泉学園」まで、30分圏内であれば「東久留米」までがボーダーとなる。よく西武池袋線直通列車の目的地として見られる「小手指」は、西武新宿線とも接続する「所沢」2つ先の駅で、「池袋」までは平日の通勤時間帯で40分弱。池袋周辺に勤務するなら、十分、居住地候補になるだろうか。

 

出所:平均家賃、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(2月7日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする
[図表1]西武池袋線各駅の「池袋」までの所要時間と、駅周辺の平均家賃 出所:平均家賃、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(2月7日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする

 

西武池袋線の混雑率は158%(「椎名町」~「池袋」)。150%で新聞を広げて読める程度、180%で折りたためば新聞が読める程度と言われているが、他の私鉄路線と比べて、混雑率は低い。しかし、電車によって混雑率はまちまちで、数値以上に混みあっている列車も多い。

 

各駅の平均家賃(駅から徒歩10分圏内/1K~1DK)を見ていこう(図表1)。西武池袋線のターミナル駅である「池袋」で7.65万円。隣駅の「椎名町」「東長崎」は6万円台となるが、「江古田」~「練馬」は再び7万円台となる。さらに進むと5~6万円台となり、「東久留米」では4万円台、「西所沢」では「3万円台」となる。

 

厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の男性会社員の平均給与/月は、20~24歳で23.01万円、25~29歳で26.01万円、30~34歳で29.34万円、35~39歳で32.22万円となっている。企業規模によって平均給与は異なるが、そこから住民税や所得税などを差し引いた手取り額は、20代であれば18~20万円、30代で22~24万円程度と考えられる。また、手取り月収の1/3以内を適正家賃と考えると、20代会社員の適正家賃は6万~6.7万円、30代会社員の適正家賃は7.4万~8.1万円となる。

 

これをもとに各駅の平均家賃を見ていくと、20代会社員であれば「中村橋」以西が居住地選びの際メインとなるが、さらに「池袋」から10分圏内の「椎名町」「東長崎」も対象エリアとなる。また30代であればほぼすべての駅が対象となるといっていいだろう。「西武池袋線」は20代でもターミナル駅近くに住めるなど、実に選択肢の広い路線だといえるだろう。

沿線に「生活利便性の高い街」が点在

平日通勤時間帯の「高田馬場」までの所要時間と各駅の平均家賃を見てきたが、実際の暮らしはどうなのだろうか。それぞれ見ていこう。

 

■「池袋」~「桜台」

「池袋」駅東口
「池袋」駅東口

 

「池袋」まで10分圏内のエリアで、都心方面に向かうのであれば、「池袋」で乗り換えが必要になる。

 

「池袋」は全国的に知られた巨大ターミナルだが、駅から近くにも賃貸物件は多い。「椎名町」「東長崎」の周辺には商店街が充実し、生活利便性の高いエリアだ。武蔵野音楽大学や日本大学芸術学部の最寄り駅で、学生の街としても知られた「江古田」も商店街が充実し、学生向けの店も多く、物価は安め。さらに西武有楽町線「新桜台」駅まで6分強、東京メトロ有楽町線・副都心線、西武有楽町線 「小竹向原」駅 まで10分強、都営地下鉄大江戸線「新江古田」駅まで7分強と、沿線のなかでも交通利便性が非常に高いエリアである。

 

■「練馬」~「大泉学園」

「大泉学園」駅前
「大泉学園」駅前

 

「池袋」まで20分圏内のエリア。「練馬」は練馬区役所など行政機関が集積する、練馬区の中心。駅南口エリアには飲食店をはじめ多くの商店が集積し、最寄り品のすべてを揃えることができるだろう。また都営地下鉄大江戸線「練馬」駅にも接続し、「新宿」や「六本木」方面にもダイレクトにアクセスできる。

 

都内屈指の広さを誇る公園が街のシンボルの「石神井公園」は、2015年に駅を含めた再開発が完了し、利便性が大きく向上した。駅を中心に東西に伸びるプロナード「エミナード石神井公園」には多彩なショップが立地し、タワーマンション「石神井公園ピアレス・ザ・タワー」には、高級スーパーや書店などのテナントも入居する。

 

近年アニメの街としても知られえるようになった「大泉学園」。北口には再開発で誕生した商業施設「グランエミオ大泉学園」のほか、170ほどの店舗で構成される「大泉学園ゆめてーる商店街」、南口には商業施設「ゆめりあフェンテ」が立地するなど、生活利便性の高いエリアである。

 

■「保谷」~「東久留米」

「ひばりが丘」駅前
「ひばりが丘」駅前

 

「池袋」まで30分圏内のエリア。このエリアでは「ひばりが丘」の存在が光る。道路整備が進行中の駅北口は道が細く、少し雑然とした印象だが、再開発がされた南口には駅前ロータリーを囲むように、「西友ひばりが丘店」と「ひばりが丘PARCO」が建つ。周辺は閑静な住宅街を形成している。

 

交通利便性の向上で人気が高まる西武池袋線。豊島区、練馬区、西東京市、東久留米市……と、沿線自治体の中心となる街(駅)が多く、生活利便性の高いエリアが続く。他の私鉄沿線と比較しても、家賃もリーズナブルだ。池袋、新宿、渋谷方面はもちろん、都心方面に勤務する会社員も、居住地選びの際には有力な選択肢になる路線だろう。

 

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