電力自由化への機運はしぼんでいくと思われたが・・・
わが国の電力自由化は、徐々に段階を踏んで進められてきました。しかし、結果として「自由化」によって電力ビジネスが活性化し、需要家にも恩恵がもたらされたかというと、残念ながら「No」といわざるを得ません。
2010年時点で、発電部門における独立系発電事業者(IPP)のシェアは8%弱、小売部門での特定規模電気事業者(PPS/新電力)のシェアは3%台半ばに過ぎず、日本卸電力取引所(JEPX)の取引量に至っては、市場全体の1%にも満たない水準から抜け出せないままでした。
この原因として、発電所建設の投資リスクや容易でないPPSの電源確保、電力会社の保守的な企業体質などさまざまなことが取り沙汰されたものの、明確な打開策は見いだされず、電力自由化の機運はしぼんでいくかのように思われました。
震災をきっかけに一気に進んだ電力自由化の議論
そこに起きたのが、2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故です。未曾有の大災害に電力供給は不安定になり、我々は計画停電や電力使用制限を経験し、社会生活に大きな混乱をきたしました。わが国の電気の周波数が東西で50Hz/60Hzと異なっていたことも災いしました。
世論は、現状の電力システムに不安と疑問を持つようになり、電力会社の発送電一貫体制や地域独占を見直すことが必要であるという意見が、一気に大勢を占めるようになっていきます。
[図表1]PPSのシェア
2011年11月、経済産業省内に「電力システム改革に関するタスクフォース」が設置され、電力自由化の議論は一気に進むこととなります。
そして、2012年2月に設置された「電力システム改革専門委員会」により、電力小売の全面自由化、市場機能の活用、送配電の広域化・中立化などがうたわれた報告書が2013年2月に取りまとめられました。
それを受けて3回に分けて電気事業法が改正され、わが国の電力自由化の道筋がつけられることになったのです。
[図表2]電力システム改革のスケジュール
次回は、電力自由化へ向けた電力システム改革のプロセスを、1段階ずつ見ていきましょう。