人の能力・性格が如実に表れる「ライフログ」
テクノロジーの進歩で、私たちの生活はその気になればかなりの精度で記録できるようになりました。そして記録されたライフログを精査すれば、その人の性格を結構正確に判断することができます。膨大なライフログ(学習履歴)は、それこそ筆記試験や面接よりも、その人の能力を教えてくれるものになるでしょう。
例えば、私たちは相手がどのような性格であるかを、面接で聞くエピソードから判断しようとしますが、同じように「野球部で頑張って県大会で準優勝した」といっても、幼児のころから野球一筋に取り組んできて、家でも練習を欠かさなかったのにもかかわらず代打でしか出場できなかったのか、それとも高校から野球を始めて、あふれる才能と身体能力でレギュラーの座を奪ったのかで、受ける印象はまったく違います。
また、毎日1時間英語の勉強をしているという人がいても、早起きしてNHKのラジオ講座を毎日聴いているのか、それともずぼらで早起きはできないけれども通勤時間に英語のリスニングを欠かさず続けているのか、あるいは休日にまとめて勉強しているけれども平均して毎日1時間なのか、性格の違いが如実に表れます。
そもそもライフログで正確なデータが明らかになれば嘘はつけなくなりますし、面接において「アピールしたいところだけにフォーカスする」とか「都合の悪いことは聞かれなければ話さない」などのテクニックが使えなくなります。
いったん始めたら最後までやり抜く性格なのか、それとも能力は高いけれどもすぐに飽きてしまう性格なのか、本人の自己申告よりもライフログのほうが雄弁に語ってくれるでしょう。
規則正しい生活を送っているのか、運動を定期的にしているのか、趣味に没頭して睡眠時間を削ってしまうタイプか、お酒や煙草をたしなむのか、栄養をきちんと摂っているのか、本気でライフログを取り始めれば、いろいろなことが見えてきます。
生活習慣や健康状態は学力と相関関係がある
なぜそこまでのログ(記録)が必要かといえば、生活習慣や健康状態は学力と相関関係があるからです。また、意思の弱い人でも、記録が残るとなれば勉強する気になることがわかってきたからです。
スタディサプリの隆盛からもわかるように、人間を動かすのは主観的な思いよりも、客観的なデータです。
私たちは、主観的に判断すると「自分はなかなかイケている」と思ってしまいがちなナルシストですが、客観的に「きみは毎日決めた時刻よりも遅く起きている」、「今日は1ページも勉強していない」、「平均すると毎日アルコールをこれだけ摂取している」などと突き付けられると、冷静に反省できるだけのリアリストでもあるからです。
しかし、ライフログについては、いわゆる「個人情報」であるので、たとえ記録したとしても、本人が見られるようにするだけで、他人には公開すべきではないという意見もあります。
これについて私は、当面は、本人が公開したい情報だけを選択的に公開すれば良いと考えています。しかし、実際に運用を始めてみれば、徐々に多くの人が多くの情報を公開するようになるでしょう。なぜならば、現在のSNSの流行からもわかるように、情報は公開すればするほど、多くの人が集まってくるからです。
実際、ほとんどの情報を非公開にしている人と、多くの情報を公開している人とが求職に来たとして、面接での印象がほぼ同じだったとしたら、あなたはどちらを採用するでしょうか。
私はたいていの人は後者を選ぶと思います。なぜならば、実際にはどうだかわかりませんが、非公開にしている人には、人に知られたくない後ろめたい汚点があるのではないかと想像してしまうからです。