2019年12月分鉱工業生産指数・速報値について

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

12月分生産指数前月比+1.3%と3カ月ぶりプラス。経産省基調判断「弱含み」で据え置き

 

10~12月期前期比減少。1~3月期前期比は増加に転じそうだが、新型肺炎の影響は?

 

12月分景気動向指数・先行DI8カ月ぶりに50%超か。基調判断は「悪化」継続の見込み

 

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・12月分速報値・前月比は+1.3%と3カ月ぶりの増加になった。15年を100とした季節調整値の水準は98.9と、19年9月分(103.2)以来の指数水準になった。また、前年同月比は▲3.0%と3カ月連続の減少になった。

 

●12月分鉱工業生産指数では、生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業等6業種が前月比増加した。生産用機械工業は10月、11月と2か月連続で大きく減少したが、海外向けで増加した品目や、10月の台風の被災の影響を受けた品目の生産復旧もあり、12月は大幅な上昇となったということだ。自動車工業、輸送機械工業(除.自動車工業)、窯業・土石製品工業等の9業種が前月比減少となった。

 

●経済産業省は基調判断を8月分・9月分の「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」から、10月分で15年8月分以来の「総じてみれば、生産は弱含み」に下方修正したが、前回11月分・今回12月分でも判断を据え置いた。

 

●鉱工業生産指数の12月分製造工業予測指数・前月比は+2.5%の増加であった。また、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値である先行き試算値でみると、12月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.4%の増加にとどまる見込みであった。90%の確率に収まる範囲は▲0.6%~+1.4%になっていた。+1.3%という実績は上限に近い伸び率である。

 

●12月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比0.0%で横ばいとなった。前年同月比は▲3.7%で3カ月連続の減少となった。

 

●12月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+1.6%の増加になった。2カ月ぶりの増加である。前年同月比は+2.1%と14カ月連続の増加となった。

 

●12月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+17.3%で3カ月連続の前月比上昇となった。12月分の指数水準は136.0で2015年基準の最高水準である。非耐久消費財の在庫率指数は、前月比+99.4%で、指数水準は280.9になった。化粧品の積み増しなどの動きも見られたようだ。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、概ね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年4~6月期は出荷の前年同期比が▲2.7%、在庫が同+3.0%、19年7~9月期では出荷の前年同期比が▲0.1%、在庫が同+0.9%であった。19年10~12月期は出荷の前年同月比が▲6.2%、在庫が同+2.1%と、依然として45度線を上回っていて「在庫調整局面」の状態にある。

 

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると1月分は同+3.5%の増加、2月分は前月比+4.1%の増加の見込みである。鉱工業生産指数の前月比が10月~12月まで3カ月連続増加している電子部品・デバイス工業の製造工業予測指数をみると、1月分は同+5.7%の増加、2月分は前月比+13.2%で増加が続き見込みである。

 

●過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、1月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.5%の増加にとどまる見込みになる。90%の確率に収まる範囲は▲0.6%~+1.5%になっている。

 

●製造工業予測指数の調査時点は1月10日なので、新型コロナウイルスの影響は含まれていない。このため、経済産業省の基調判断は表面的な数字よりも慎重なものになっている感じがする。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、1月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.5%)、2月分を前月比(+4.1%:製造工業予測指数)、3月分の前月比を横ばいで延長すると、1~3月期の前期比は+3.8%の増加になる。

 

●また、1月分は製造工業予測指数前月比(+3.5%)、2月分を前月比(+4.1%:製造工業予測指数)、3月分の前月比を横ばいで延長すると、1~3月期の前期比は+6.9%の増加になる。両者の試算値から見て、新型コロナウイルスの影響次第ではあるものの、生産の持ち直し基調が年末頃から出ていて、1~3月期の前期比は増加に転じそうな局面と言えそうだ。

 

(12月分景気動向指数、一致CIによる基調判断は「悪化」継続)

 

●12月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+0.8程度の上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●12月分の一致CIは前月差+0.1程度とギリギリで3カ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な7系列では、生産指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差プラス寄与に、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の4系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分・10月分・11月分に続き、12月分も「悪化」継続になると予測する。

 

●12月分の先行DIは55.6%程度と8カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の5系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になると予測した。

 

●12月分の一致DIは7.1%程度と景気判断の分岐点の50%を3カ月連続で下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列がマイナス符号に、有効求人倍率1系列が保合いになると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年12月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

2020年1月31日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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