皆さんは江戸中期の米沢藩の藩主、上杉鷹山をご存じでしょうか。財政赤字でボロボロだった米沢藩をさまざまな改革で立て直したリーダーです。その上杉鷹山が語ったフレーズ「なせば成る…」は、現在の私たちの資産形成にも有益な、示唆に富んだ言葉なのです。本記事では、一般社団法人日本つみたて投資協会代表理事の太田創氏が、資産形成のヒントを紹介します。

資産形成で重要なのは「純資産がプラス」であること

“なせば成る なさねば成らぬ 何事も 成らぬは人の なさぬなりけり”

 

この言葉を残したのは、江戸時代の米沢藩(現在の山形県)藩主・上杉鷹山(うえすぎ ようざん)です。鷹山が藩主に就いたとき、米沢藩の財政は借金だらけでボロボロでした。しかしその後、財政再建のため倹約に徹し、借金を完済したと伝えられています。

 

今回のタイトルにもある「なせば成る」は、いささか精神論的なフレーズですが、この表現は日常的によく使われます。そして「なせば成る」以降に続く「なさねば成らぬ 何事も 成らぬは人の なさぬなりけり」とは、「物事が成就しないのは当事者が何もしないから」という意味であり、つまりは「やる気になれば何でもできるのだ」と訴えているのです。

 

さて、資産形成において重要なことは「純資産がプラスである」ということです。

 

純資産は資産額から負債額を引いたもの。これがプラスなら資産超過、マイナスなら債務超過です。

 

もっとも、資産はすぐ現金化できる資産か否かでその質は変わってきます。将来的に現金化できるものであれば、固定資産が多くても問題ありません。個人の場合、自宅を保有していれば不動産の資産評価額が高いはずなので、現預金等の流動性資産が少なくても給与を含むキャッシュフローがプラスで確保されていれば、まずは健全な家計といえるでしょう。

 

再建成功の秘訣は「倹約」にあり。
米沢藩の財政を再建。

 

当たり前のことを指摘していますが、家計もちょっと油断すると債務超過になる可能性があるのです。それは、米沢藩も陥った「借り入れスパイラル」です。借り入れができるのは信用力があるからで、信用力の背景は有形無形の資産です。

 

有形資産は現金、動産・不動産といったところ。無形資産は売掛金、ブランド(のれん)、将来性といったところでしょうか。当初、米沢藩はこれらの資産が莫大であったため、借金を繰り返し、贅沢放蕩を尽くしあえなく債務超過に陥り、廃藩の危機に直面したのです。

 

もっとも、借金の場合は金利だけ複利で払っていくわけではなく、元本も返済していきますから、返済計画通り返済が進めば借金はゼロにはなります。しかし元本が残っている間は利息の支払い(資金流出)が続くので、計画的に返したほうがよいのは言うまでもありません。

黒字体質の維持を…無担保ローンやリボ払いは避けよう

これを一般家計に当てはめてみましょう。

 

健全に資産形成を図っていくためには、まず家計は黒字でないとなりません。つまり、キャッシュフローで考えれば、「入金-出金=プラス(黒字)」を維持するのです。これがマイナス(赤字)の場合は貯蓄を取り崩すか、借金をして赤字を埋めるかしかありません。貯蓄がない場合は借金でしか対応できないという厳しい状況になります。

 

加えて、米沢藩のように有形無形の信用力がある場合はまだいいですが、信用力が低い人も利用できる無担保個人ローンは基本的に高利です。いったん借りると借金スパイラルに陥るので、借金の前に家計のリストラが必要です。

 

加えて、過度な借金をしないのは当然として、日常生活においてもクレジットカードのリボルビング払いなどにはしないようにしてください。リボルビング払い金利は年利15%にもなりますから、文字通り借金が雪だるま式に増えていきます。

 

[図表]年利5%での複利運用と複利借り入れの差

 

つまり、個人が資産形成していくには“なせば成る”の精神で黒字体質を作ることが重要なのです。資産形成を考えている方が赤字体質であるはずはないですが、若い頃からコツコツと黒字を累積している家計ならば、 “老後資金2000万円“問題などありはしないのです。

 

 

太田創

一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事

 

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