新卒学生の大手志向が進みつつ、中途採用も思うようにはできない時代。優秀な人材ほど条件面で折り合わない等の問題があり、人材獲得は困難を極めます。打開策として、インターンシップを始める中小企業も増えてきましたが、なかには学生を「利用」する会社も…。そこで本記事では、『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略 』(株式会社丸八テント商会・佐藤均氏)より、インターンシップの実情、そして相乗効果をもたらすための人材活用法を解説します。

優秀な学生が殺到する企業には共通点がある

企業は常に優秀な人材を求めています。一流大学で、留学経験があって語学堪能、勉強熱心で意欲的。さらには素直な性格でのみ込みが早い。そんな優秀な学生が集められる企業には、いくつかのポイントがあります。

 

そもそも学生たちがインターンシップに来る理由は、「任せてもらえる土壌があるから」です。向学心の高いスーパー大学生が求めているのは、お金でも評価でもありません。自分自身の成長です。

 

同じ時間をアルバイトとして過ごすよりも、プロジェクトを任せてもらえるという有意義な経験を欲しているのです。その目標が達成できるステージを、受け入れ側が用意できるかどうか。それが大切なのです。

 

「やりたい」と手を挙げれば、何でもやらせてもらえる。学生でありながら社会人と同じように、いや、それ以上の大きな仕事に挑戦できるチャンスをもらえるかどうかを見極めて、インターン先を決定します。

 

今、20歳前後の学生たちは大人たちから守られて育った「ゆとり世代」。おとなしく座って、いうことを聞いていれば「よい子」だと評価されてきました。反対に、周りの人と違うことをしたり、自分の意見を貫いたりすると、周りから白い目で見られて「変わったやつ」とレッテルを貼られてしまうのです。

 

しかし、心の底ではそんな環境に不満を感じていた。何かがおかしい、自分がしたいことはこれではない、と思いながらも周囲からいわれることを素直に受け入れてきた学生が、こうして〝ホンキ系〟インターンシップで自分の道を見出し、みるみる実力を発揮しています。教育によって刷り込まれた固定観念を取り払って、価値観をがらりと変えられるのが長期インターンシップでもあるのです。

 

「自分から手を挙げる」「自分から発信してチャンスを摑む」私は、学生たちに自分で考えて動くことを教えています。そうしなければ、やる気を持って入ってきた若者が、ゆくゆくは保守的な社員になりかねないのです。

 

「自己成長」を求める学生は刺激的な職場で、尊敬できるリーダーの下で学びたいと思っている。単純作業や誰でもできることなら、アルバイトで十分なのです。

 

では、どうすれば自己成長を促す土壌をつくり出せるのか。ひとつは、「任せること」です。決して学生扱いせずに、一人の社会人として接すること。私の会社では学生の名刺にも「インターン生」と表記することはなく、他の社員と変わらない名刺を渡しています。

 

責任を与え、自分で考えて行動させる。ある程度の権限を渡して好きにやらせてみる。そうすることで、彼らは予想もしない能力を発揮するのです。

 

だから私は、ほとんど学生に直接的な指示をしないのです。「指示を待つだけの植物人間にはなるな」「なんでもまずやってみよう」「失敗してもいい」「責任は社長が持つ」などの言葉を学生に浸透させたうえで業務にあたらせています。そうすることで学生たちは自分の頭で考え、行動するようになるのです。

 

私の会社では、人事、社会保険、税務、会計経理など、本来は専門の部署がある業務でも、学生に任せています。「そこまでやらせるの?」と懸念する声もありますが、見返りを求めずに信用して任せれば、学生たちも誠心誠意応えてくれます。

 

こういった会社の根幹に関わる業務をすることで、与えられた作業として進めるのではなく、経営者の目線で会社にとって最適な動きをしてくれています。ポイントは責任を与える範囲をしっかりと区切り、本人に任せること。たとえば「10万円分の権利を渡す」と明示するからうまくいくのです。

「何でもよいから斬新なアイデアをくれ」と頼む社長

学生にアイデアを求めてはいけませんが、自分で考えさせることと、何のプランもなく学生にアイデアを求めることは違います。

 

「何でもよいから斬新なアイデアをくれ」

 

これでは無責任です。そんな経営者は、いざ、学生のアイデアを採用して新しいプロジェクトをスタートさせたところで、うまくいかなかったら学生の能力不足のせいにします。会社として何を目指しているのか、コンセプトもないのに何か新しいものがないかと学生に求めている。そんな冗談のような話が実際にあるのです。それでは、どんなに優秀な学生を集めたところでうまくいくはずがありません。

 

「何でもよいから斬新なアイデアをくれ」
「何でもよいから斬新なアイデアをくれ」

 

失敗する企業は「こういうビジョンがありますが、皆さん一緒にやりませんか」ではなくて、「アイデアを求めています」という発信の仕方になっているのです。せっかくブレイクスルーのきっかけを起こせるのに、社長自らが努力をしないために、やる気にあふれた学生の足まで引っ張ってしまう。

 

企業にとっても、経営者にとっても研鑽は欠かせないのです。半年に一度、学生とのマッチングフェアがあり、20社のプレゼンを学生たちは聞くわけです。自社の強みを摑んでいない企業、ビジョンがない企業はすぐに気づかれます。経営者も〝ホンキ系〟かどうか、学生は見極めているのです。

 

私自身が実行しているのは、学生と一緒になってひたすら汗をかくこと。むしろ、学生の熱意に負けないくらいの努力をします。

 

例えば、ブログの更新も新しい企画も考える。学生から見れば私は56歳のおじさんですが、経営者というイスにふんぞり返っているわけにはいかないのです。プレゼンで話すときでも、「まず何から始めるか」というテーマで話をするときには「分からないことはググってみよう」と同じ視点に立つ。

 

「こんな中年のおじさんでも、みんなと同じように知らないことは一から調べる」といったスタンスを見せています。学生に本気であることを伝えるために、普通は隠すところもあえて見せます。社長が怒られているところも見せる。カッコ悪いところもすべて見せます。

 

今までは同世代の経営者の集まりで発言することはあっても、20代の学生から見られる立場でプレゼンをする機会はありませんでした。これが私にとっての転機です。経営者といえども、勉強して臨まないと話になりません。社長プレゼンがうまくいかなければ、自分のブースに来てもらえる学生の数がゼロになってしまう。

 

インターン生が集まる企業は、社長がとにかく元気です。利益のことばかり追求しているところには、学生は寄ってきません。

 

長期インターン生の受け入れの成功の秘訣は、経営者が学生に愛情を持つことです。プログラムを丸投げしたり、部下に任せきりにしたり、学生をほったらかしにしているところはだいたい失敗しています。

 

そんな様子は瞬く間に広がり、優秀なエリート学生は結果的に集まってきません。社長が直接、学生の面倒を見ること。それが成功のポイントです。

 

私の会社では、学生たちも私を慕ってくれます。時には父親みたいだといってくれることもあるのです。「今日は元気がないな」とか「何かあったのか」と声をかけるので、もしかすると口うるさいからそういわれてしまうのかもしれませんが……。

 

気をつけているのは業務に限らず、何でも話を聞くこと。たとえば両親が喧嘩しているというなら、「両親の結婚記念日にケーキを持っていったらどうだ」などとアドバイスしますが、学生が普段何を考えてどんなことをしているか、それを知りたいだけなのです。

 

そのことについて評価するとか、そういった視点でコミュニケーションを取っているわけではありません。彼らはそのままで十分に素晴らしいし、私が特別なアドバイスをしなくても魅力的な人間に育っていく。それを信じています。

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