どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえるだろう。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 今回は取り上げるのは、中央線。20~30代会社員が住みやすい街は?

東京を横断する「中央線」各駅の平均家賃は?

東京都心をぐるりと1周する山手線。その中央を横断し、東京都八王子市の「高尾」まで行く中央線快速。その歴史は遡ること、1889年、甲武鉄道(のちに国有化)が「新宿」~「立川」間を開業させたことに始まる。1966年に「中野」~「荻窪」、1969年に「荻窪」~「三鷹」で複々線化され、現在の形になる。

 

都心を横断する利便性から、都心勤務の会社員であれば、居住地を探す際に候補路線になるだろう。そこで、中央快速線の各駅の平均家賃などから、沿線の住みやすさを考えていこう。

 

まず交通の利便性から各駅を見ていく。平日の通勤時間帯の上りは、快速のほか、停車駅の少ない通勤特快が運行されている(8時台には特急かいじ、あずさの運転もあるが、除いて考察する)。

 

「新宿」までの平均時間帯の所要時間を見てみると、10分圏内であれば「阿佐ヶ谷」まで、20分圏内であれば「武蔵境」まで、30分圏内であれば「西国分寺」までがボーダーとなる。

 

中央線の混雑率は184%(「中野」~「新宿」)。体当たりをしないと電車に乗れないほどの混雑だ。「三鷹」で中央・総武各駅停車、「吉祥寺」で京王井の頭線、「荻窪」で東京メトロ丸の内線に乗り換える人もいるが、混雑はそれほど変わらない。多くの乗客が「新宿」で降りるため、以降は押しつぶされるほどの混雑に出くわすことはほとんどないだろう。

 

各駅の平均家賃(駅から徒歩10分圏内/1K~1DK)を見ていこう(図表1)。7万円台が、「新宿」の隣駅となる「中野」と、住みたい街ランキング上位の常連である「吉祥寺」で、「三鷹」までは6万円台、以西は4~5万円代となる。終点「高尾」になると3.85万円となり、通勤時間より家賃の圧縮、と考えるのであれば、一考の価値はあるかもしれない。

 

出所:平均家賃:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(1月23日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする
[図表1]中央線各駅の「新宿」までの所要時間と、駅周辺の平均家賃 出所:平均家賃:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ(1月23日時点)、各駅より徒歩10分圏内の物件を対象とする

 

厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の男性会社員の平均給与/月は、20~24歳で23.01万円、25~29歳で26.01万円、30~34歳で29.34万円、35~39歳で32.22万円となっている。企業規模によって平均給与は異なるが、そこから住民税や所得税などを差し引いた手取り額は、20代であれば18~20万円、30代で22~24万円程度と考えられる。また、手取り月収の1/3以内を適正家賃と考えると、20代会社員の適正家賃は6万~6.7万円、30代会社員の適正家賃は7.4万~8.1万円となる。

 

これをもとに各駅の平均家賃を見ていくと、20代会社員であれば「吉祥寺」を除き、「西荻窪」以西が居住地選びのスタートとなり、30代会社員であればほとんどの駅が適正家賃内となる。あとは交通や生活の利便性など、個々の優先順位で居住地を探す駅(街)を決めていくことができる。

中央線カルチャーにどっぷりと浸る

「新宿」までの所要時間と各駅の平均家賃を見てきたが、実際の暮らしはどうなのだろうか。それぞれ見ていこう。

 

マニアックで、サブカルチャーなスポットが点在するといわれる中央線沿線だが、その中心的存在なのが、「中野」「高円寺」「阿佐ヶ谷」「荻窪」「西荻窪」だ。

 

中央線文化と一括りに語られることが多いが、「中野」であればポップカルチャー、「高円寺」であれば古着やロック、「阿佐ヶ谷」であればジャズなど、街ごとに異なる特徴を持っている。どの街も駅前には商店街が充実し、飲食店も多い。生活利便性に遜色はないだろう。

 

そのなかで、東京メトロ東西線の始発である「中野」、東京メトロ丸ノ内線の始発である「荻窪」は、交通利便性で一歩リードする。座って通勤したい、中央線に万が一のことがあった場合の代替路線があるといい、という希望があるなら、有力な候補となるだろう。

 

再開発が決まっている中野サンプラザ
再開発が決まっている中野サンプラザ

人気の街「吉祥寺」の住み心地は?

東京23区を抜けた最初の駅が「吉祥寺」。住みたい街ランキング・ベスト3常連の街である。「東急百貨店」「パルコ」「アトレ」などの大型商業施設が立地し、個性豊かな個店が点在する。一方で「ハモニカ横丁」のようなディープな路地もあり、南口を降りた先には緑豊かな井の頭公園が広がる。また京王井の頭線で「渋谷」へも1本という交通の利便性も兼ね備えており、人気があるのもうなずける。

 

しかし実際に住むとなるとどうだろうか。街中は四六時中にぎわっているうえ、家賃も高め。「適正家賃で」と考え物件を探すと、バス便利用であることが多く、なかなか駅チカでの居住がかなわないことも多い。

 

それであれば、隣駅の「三鷹」を選択するのもひとつの手だ。駅南口には南北1kmほどの商店街あり、日常品はひと通り揃えることができる。また中央線・総武線各駅停車の始発駅で、中央線快速を利用するより時間はかかるが、「新宿」まで座って通勤することもできる。平均家賃もグッと安くなり、総合的に「吉祥寺」よりも生活の質があがる可能性は高いといえるだろう。

三鷹駅南口
三鷹駅南口

高架化、再開発で新スポットが続々と誕生

「三鷹」~「立川」の高架化により、この区間の駅周辺では再開発が活発化している。それにより各駅周辺の生活利便性も向上している。そのなかでも「武蔵小金井」は大きく変わった駅のひとつ。大型スーパーを核店舗とする「アクウェルモール武蔵小金井」や「nonowa武蔵小金井」、さらに今年6月にはツインタワーを擁する「武蔵小金井シティクロス」がオープン予定で、駅周辺でワンランク上の日常品まで揃えることができるようになった。また平日8時台に始発電車があり、座っての通勤も実現する。

 

これより以西には「立川」や「八王子」といった、知名度のある街がある。「新宿」までの所要時間は40分~50分ほどとなるが、大型商業施設も集積し、最寄り品はもちろん買回り品も揃えることができる。通勤時間の長さがネックにならないのであれば、有力な選択肢になるだろう。

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